農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
90 巻, 9 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 石川 健司, 佐藤 寿樹, 柴田 桂子, 藤原 昇
    2022 年 90 巻 9 号 p. 673-676,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    本報は,北海道幕別町の農業生産法人北王農林が自社農場をフィールドとして実践している,みどりの食料システム戦略に関連する2事例の取組みを紹介する。1つは農業残さ燃焼用バーナーの熱を利用したホワイトアスパラの栽培と販売,もう1つは下水道由来肥料を活用したジャガイモの栽培と新たなプロジェクトであり,みどりの食料システム戦略で目指す持続可能な資材・エネルギー調達,地域未利用資源の活用,資源のリユース・リサイクルに関する取組み事例である。また社会実装に向けて,研究で得られた知見や技術を実態経営に展開することを目指し,販売方式の検討,産学官の連携プロジェクト設立などを実践している。

  • 中島 亨, 日下部 貴大, 中塚 博子, 大島 宏行
    2022 年 90 巻 9 号 p. 677-680,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    「みどりの食料システム戦略」では農林水産業由来の温室効果ガスの排出削減,農地での化学農薬・化学肥料の低減と,その代替として有機農業の面積拡大が重点的な取組みとして掲げられている。そこでバイオ炭と堆肥を併用施用することで,それぞれ単体で施用する方法と比較し,より効果的に温室効果ガス排出の削減と炭素貯留が促進される可能性があると考えられるが,それに関する知見は少ない。本報では,堆肥(牛ふん堆肥)とバイオ炭(もみ殻くん炭)を併用施用することにより,温室効果ガスの排出抑制と炭素貯留の可能性について検討した。その結果,併用することで効率的に温室効果ガスを削減することができる可能性が示唆された。

  • 中村 真人, 折立 文子, 柴田 浩彦, 蒲地 紀幸, 日高 平, 柚山 義人, 北川 巌
    2022 年 90 巻 9 号 p. 681-685,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    メタン発酵は,得られるガスを発電機やボイラーの燃料に利用することにより,温室効果ガス(GHG)の排出抑制に寄与する。また,太陽光発電等,他の再生可能エネルギー生産技術にはない特徴として,ガスとしてエネルギーを一時貯留することによりエネルギー需給の調整力を有すること,発酵残渣である消化液(液肥として用いる場合は「バイオ液肥」)を化学肥料の代わりに利用できることがある。メタン発酵は,上記の特徴を活かすことにより,みどりの食料システム戦略の実現に貢献できる。本報では,同戦略に記載されたメタン発酵関連事項に対する,筆者らのこれまでの取組みと今後の展望について述べる。

  • 蒲地 紀幸, 中村 真人, 折立 文子, 大土井 克明, 柴田 浩彦, 是川 和宏, 大塚 直輝
    2022 年 90 巻 9 号 p. 687-690,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    農業集落排水施設に小規模メタン発酵施設を併設し,消化液をバイオ液肥として農業利用する,小規模メタン発酵システムの実証試験を実施した。本実証では,集排汚泥に生ごみを混合したメタン発酵,バイオ液肥を利用したポット栽培試験や圃場栽培試験,経済性や地球温暖化防止効果の評価を実施した。本実証で得られた知見は,「集排汚泥とバイオ液肥の利活用を伴う小規模メタン発酵システム導入の手引き(案)」としてまとめており,農業集落排水施設に小規模メタン発酵施設を併設し,集排汚泥およびバイオ液肥を利活用するに当たり幅広く参考となる体系的技術書であるため紹介する。

  • 三木 昂史, 岩田 幸良, 北川 巌, 後藤 眞宏, 福田 浩二, 石井 雅久
    2022 年 90 巻 9 号 p. 691-694,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    カーボンニュートラル社会の実現に向けて,農業でもCO2等の温室効果ガス削減が求められており,農林水産省は2030年までに124万tのCO2排出削減を目標に掲げている。農研機構農村工学研究部門はNEDO先導研究プログラムにおいて,温室のエネルギー消費量を実質ゼロにすることを最終目的としたフィジビリティスタディーに取り組んでいる。この研究プロジェクトの中で農業基盤に関連した未利用熱に着目し,農地における地中熱の施工方法や農業用水を対象にした流水熱の採熱ポテンシャルの評価を実施している。本報では,ここで実施されている研究について,その技術的背景とともに紹介する。

  • 加藤 亮, 國井 大輔, 橋本 禅, 吉川 夏樹, 東樹 宏和, 大澤 剛士, 杉原 創, 神井 弘之
    2022 年 90 巻 9 号 p. 695-700,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    みどりの食料システム戦略は,イノベーションを通じた食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立を目的としている。本報では,持続性の観点から生態系サービス評価に向けた環境データの集積とその統合化について,事例を通じた評価手法の開発を目標とする研究のフレームワークを紹介する。福井県池田町の足羽川上流域を対象とした水環境の調査結果では,降雪時の水質の悪化(電気伝導度の上昇)といった自然サイクルを明らかにすると同時に,水田農業や集落からの排水の影響は限定的であることを示した。また,筆ポリゴンを活用し,有機農業と土壌調査の結果が連結できることを示し,今後の生態系サービスの可視化に向けた手法を示した。

  • 北田 裕道, 泉 太郎
    2022 年 90 巻 9 号 p. 701-704,a2
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    「みどりの食料システム戦略」は,国内での取組みとともに,海外,特にわが国と共通する高温多湿の気候条件や,水田農業が主体で中小規模農家が多いという生産構造を有するアジアモンスーン地域への展開,さらには,これらの取組みをアジアモンスーン地域のモデルとして世界に発信し,国際ルールメーキングに参画していくことまでを含めた戦略となっている。この達成に向け,これまで海外農業農村開発協力を通じて蓄積してきた知見・経験・技術および構築してきたネットワークの活用が望まれる。本報では,これまでの実績を踏まえ,「みどりの食料システム戦略」の海外展開に係る農業農村工学分野の貢献と取組みの方向性について考察する。

  • 岡 直子, 安西 俊彦, 竹中 浩一, 岡本 健, 寺島 義文, 奥津 智之, 菊地 哲郎
    2022 年 90 巻 9 号 p. 705-708,a2
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    「みどりの食料システム戦略」には,「アジアモンスーン地域の新しい持続的な食料システムの取組モデルとする」,「国際社会に提唱し,国際ルールメーキングに参画する」といった項目がある。国際農林水産業研究センターでは,沖縄県・石垣島とフィリピン・ネグロス島の2つの熱帯島嶼を主な対象とする「熱帯島嶼環境保全プロジェクト」を実施しており,劣化山地における山地生業システムの開発,地下灌漑による施肥量削減技術の開発,サトウキビ株出し栽培による環境負荷低減,水圏生物を利用した水質・生態系保全技術の開発,技術導入による負荷軽減効果の検証,開発した技術を国際ルールメーキングにつなげる取組みを行っており,これらについて紹介する。

  • 渡辺 守, 松本 成夫, 泉 太郎
    2022 年 90 巻 9 号 p. 709-712,a2
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    農業分野の気候変動緩和策として,農地土壌炭素貯留が注目されている。国際農林水産業研究センター(以下,「国際農研」という)は,これまでタイにおいて長年にわたりタイ農業局と農地への土壌炭素貯留量の長期連用試験を継続してきた。農地への炭素の長期・大量貯留は「みどりの食料システム戦略」にも掲げられている取組みの一つである。本報では,国際農研とタイ農業局が共同で解析した成果から得た課題,およびそれを踏まえたタイの関係部局に行っている政策提言の概要,さらには「みどりの食料システム戦略」との関連も踏まえ,農地土壌炭素貯留についてアジアモンスーン地域での展開方向を考察する。

  • 髙野 直人, 林田 洋一, 中村 信一, 渡部 大輔
    2022 年 90 巻 9 号 p. 715-719,a2
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    近年,大規模な災害が頻発し,特に東日本大震災や熊本地震といった地震災害の発生は,地震大国であるわが国において身近かつ喫緊の脅威として社会的関心が高く,その備えはダムの所有者,管理者にとって重要な課題となっている。農林水産省では国土強靱化施策の一環として,「国営造成農業用ダム安全性評価」に取り組む方針を打ち出し,国営造成農業用ダム189基すべてを対象とした安全性評価を実施し,地震災害対応の検討を進めている。本報では,これまでに実施された各ダムの安全性評価のうち耐震性能照査に着目し,その実施状況および課題と対応方針について報告する。

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