農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
90 巻, 4 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 服部 俊宏, 上野 裕士, 中村 百花
    2022 年 90 巻 4 号 p. 239-242,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    パンデミック下における農村の優位性を確認するとともに,農村はパンデミックにどのように適応すべきなのかを検討した。陽性者は高人口密度地域で多く発生していることが確認された。テレワークは経営改善の手段として定着しつつあり,その利用率は30%程度が期待される。受入れ側の農村住民は,外部との交流についてパンデミック中は歓迎できないとする意見が中心であるが,収束すればこれまで同様の評価が考えられている。農村への関心は多様であり,関わりの程度に対応した参加のデザインと基盤整備が必要であり,都市から農村への人の移動を受けとめられるような持続的低密度社会に対応した土地利用計画手法も確立されなければならない。

  • 木下 幸雄
    2022 年 90 巻 4 号 p. 243-246,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    持続的企業体としての農業経営が担い手の中心となる農業構造への転換が必要であり,その農業構造を前提とした基幹的農業水利施設の更新事業を効果的に進められる政策・制度を再構築しなければならない。成長産業化が進む農業構造においては,スマート農業技術の進歩とともに,農業経営のビジネスモデルや農業経営者の役割・働き方も大きく変わっていくことを念頭に,スマート農業経営やバリューチェーン農業全体のマネジメントを支える基盤整備が潜在的な事業ニーズになりうる。また,更新事業の制度的懸念に対しては,事業コスト負担のあり方と実施主体の組織単位の広域化という観点から,時代にあった見直しに向けての政策議論が求められる。

  • 遠藤 和子
    2022 年 90 巻 4 号 p. 247-250,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    本報では,「持続的低密度社会を実現するための新しい農村政策」を現実の農村社会に落とし込むために,直接支払いの観点から農村政策の整理を行った。EU共通農業政策では,欧州グリーンディールを契機に政策のグリーン化を強めており,日本もその影響を受けている。持続的低密度社会においては,生態系サービスの中の調整サービス促進に該当する水路延長支払いや里山支払いのような支援が必要であり,直接支払いを拡充する方法が現実の農村社会への適用を促しやすいことを提起した。また,農村は,気候変動や生物多様性保全など,地球規模での課題を意識しつつ,より主体的に地域発展のための計画策定を進める必要があることに言及した。

  • 坂田 寧代
    2022 年 90 巻 4 号 p. 251-254,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    筆者は新潟大学の研修制度に応募して2021年4月から1年間の予定で長岡市山古志地区(旧 山古志村)に移住し,コロナ禍のもと田園回帰や二地域居住などの農村地域へ向かう人の流れの中の一人となった。本報では,コロナ禍という特殊な状況下での都市農村交流を農村生活者の視点から観察した内容を,①大学生と地域との交流,②農村伝承文化における対応,③地域交流拠点における社会関係の3点から整理し,農業農村整備について考察する。農村地域に居ながらにしてオンライン授業を行えるようになったアフター・コロナに大学が農村地域に果たす役割は大きくなっているだろうし,農業農村整備が担えるフィールドも膨らんでいるにちがいない。

  • 岩﨑 史
    2022 年 90 巻 4 号 p. 255-258,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    人口減と里山の荒廃化が課題となる山間農業地域で,環境保全と農林業技術の習得を目指す高校生が,遊休農地で3種の農地活用を試行した。対象地では,地形や立地の制約で小規模な農地が数多く点在し,次代継承に向けた課題も多い。一方で,地域環境と小規模農地の特性を活かした土地利用は,環境負荷が少なく持続的で多様な可能性を持つことが明らかになった。今後は,次代を育む長期的な視点を持ち,農家と新しい担い手をつなぐ支援体制や農地継承に向けた環境を整備し,多様な担い手が活躍できる地域資源を活かした就業の場を地域に創出をすることが,持続的社会の形成につながり,これからの農業農村整備に求められる。

  • 石神 暁郎, 西田 真弓, 浅野 勇, 川邉 翔平, 川上 昭彦, 森 充広
    2022 年 90 巻 4 号 p. 261-264,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    積雪寒冷地において凍害を受けたコンクリート開水路では,側壁においてひび割れやスケーリングなどの変状を生じるが,底版においては摩耗と凍害が併発して断面欠損にまで至る場合も多い。また,無機系表面被覆材などの無機系材料においても,摩耗が促進される事例が確認されている。本報では,配合の異なるモルタル材および種別の異なる無機系表面被覆材に凍結融解を作用させ,その後に促進摩耗試験を行った結果を示し,凍結融解の作用が無機系材料の耐摩耗性に影響を与えるメカニズムについて考察した。その結果,凍結融解の作用は,スケーリングを生じさせ,またひび割れを蓄積させることにより,耐摩耗性の低下を促すことが確認された。

  • 松田 展也, 森 丈久
    2022 年 90 巻 4 号 p. 265-268,a2
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    石礫の衝突や転がりにより摩耗が発生した落差工では,水路用のモルタル系補修材で補修が行われている。しかし,落差工では通常の水路では想定していない石礫により摩耗が発生するため,水路用のモルタル系補修材を落差工に適用した場合の耐摩耗性を確認する必要がある。そこで,5種類のモルタル系補修材を対象に,石礫を模擬した摩耗材による転がり摩耗試験を行った。その結果,最も圧縮強度の高い補修材が,耐摩耗性が最も高いことが分かった。一方,補修材の中には,圧縮強度が大きくても耐摩耗性が劣るものがあることから,落差工底版部に適用する補修材については,圧縮強度だけでなく,転がり摩耗試験による耐摩耗性の評価が必要である。

  • 青木 大, 細田 洋志, 上野 絢, 浪平 篤
    2022 年 90 巻 4 号 p. 269-273,a2
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    安濃ダムでは計画堆砂量を超えて堆砂が進行し,ダム堤体低位部に設置された洪水放流管の下端から約1.7m下方まで土砂が堆積しており,放流機能の損失が懸念される。そこで,洪水放流管から放流すると湖底に掃流力が働き,堆積している細粒土粒子が排出されるとの仮説を立て,掃流可能な粒径をダム湖内の三次元流れの数値解析から推定し,洪水放流管の掃流による排砂能力を検証した。その結果,湖底面ではシルトが掃流され,39.90m3/s放流時には最大2.9mmの礫の掃流が可能と考えられた。堆砂が進行して湖底面が上昇すると,より大きな粒径の土粒子も洪水放流管に向かって掃流され,洪水放流管の排砂能力は向上すると考えられる。

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