農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
88 巻, 10 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 岩田 幸良, 菖蒲 淳, 相田 信幸, 中川 文男, 亀山 幸司
    2020 年 88 巻 10 号 p. 797-800,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    新潟県佐渡市羽茂地区のカキ圃場において,1日当たり3mmのドリップ灌漑を実施したところ,灌漑による果実の大玉化と品質の向上が確認された。一方,灌漑の実施により,灌漑しない場合に比べて果実の成熟が若干遅くなることで,試験研究で一般的に実施されているすべての試験区を同一日に収穫する方法では,灌漑による品質(等級割合)の向上効果を過小評価する可能性が考えられた。そこで,着色指数を用いて各試験区の果実の成熟程度を揃えたところ,着色指数を考慮しない場合よりもより大きな灌漑効果が期待できるという結果になった。羽茂地区の各等級の出荷額を参考に,試験結果による各試験区の出荷額の試算では,対照区に比べ灌水区の方が2.8~7.9%出荷額が多かった。

  • 塚本 康貴, 北川 巌, 大橋 優二
    2020 年 88 巻 10 号 p. 801-804,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    本報では,北海道の水田転換畑における灌漑排水技術として,ハイブリッド水路を用いた灌漑排水技術,ならびに暗渠管を清掃するための施設である集中管理孔を利用した,高収益作物への地下灌漑技術について紹介する。さらに,土壌物理性の不良な圃場が多い転換畑に対して灌漑排水技術を効果的に発揮するために,農家が実施できる新たな排水改良機であるカット・シリーズを用いた土壌物理性の改良事例について述べる。これらの技術は,地下水位制御施設の有無や土壌物理性の状態など,圃場条件に応じた灌漑排水技術のラインアップとして整理でき,本技術を用いて農家が自ら作物の収量や品質の向上を目指した取組みを実践することができる。

  • 光安 麻里恵, 西田 和弘, 二宮 悠樹, 野村 幹雄, 吉田 修一郎
    2020 年 88 巻 10 号 p. 805-808,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    水管理法の違いが水田の熱環境に与える影響を定量的に明らかにすることを目的として,試験水田を用いた4種類の水管理試験を実施した。これにより,低温の灌漑水の流入と水深制御による水田熱環境(水温・地温)への影響の比較,水深差と地温差の定量的関係の取得を行った。その結果,①日平均水温・地温は,低温の灌漑水の流入があれば低下するが,水深を制御する水管理ではほとんど変化しないこと,②無湛水期間を設ける水管理は,地温の日較差を増加させることを示した。また,③平均水深差と平均日最高・日最低地温・日較差の差の関係を算出し,平均水深を単位量変化させた際の地温変化を概算可能とした。

  • 西田 和弘, 岩崎 里子, 塚口 直史, 吉田 修一郎
    2020 年 88 巻 10 号 p. 809-812,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    低温・低窒素濃度の灌漑水を用いた掛流し灌漑試験を実施し,掛流し灌漑が水田の窒素環境(田面水の窒素濃度,土壌中の窒素量)に与える影響を調べた。その結果,①灌漑水の流入・田面水の流出は,正味の窒素の持ち出しではなく窒素の供給であること,②地温低下に伴う窒素無機化量の減少が,玄米タンパク質濃度を減少させる要因の一つであることが明らかになった。一方で,これらの影響は,灌漑水の水質(温度・窒素濃度)によって異なることが考えられた。今後,掛流し灌漑による水田の窒素環境への影響を明らかにするためには,灌漑水の流入・田面水の流出に伴う正味の窒素供給,地温や土壌水分状態の変化に伴う土壌の窒素収支への影響について研究を行う必要がある。

  • 坂田 賢, 関 正裕
    2020 年 88 巻 10 号 p. 813-816,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    通信可能な圃場給水機(以下,「ICT型給水機」という)は省力化の手段として導入され,社会実装の段階を迎えている。一方,気候変動の観点からイネの気象災害回避の適応策としてこまめな水管理の実施が推奨されている。ICT型給水機が気候変動適応策として有用であることの知見として,本報では大規模農家が管理する稲作圃場を対象として全面的にICT型給水機を導入し,高温登熟障害回避のために実施した水管理の事例を示す。事例では,出穂期前後に干天かつ高温状態が連続し,深夜に給水の開始と停止を繰り返すことで品質低下の抑制を試みた。ICT型給水機の導入により,省力化と夜間の高温回避を両立する水管理が可能となった。

  • 鈴木 翔, 丸山 篤志, 若杉 晃介
    2020 年 88 巻 10 号 p. 817-820,a1
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    水稲の高温障害や低温障害における対策の1つとして飽水管理や深水管理といった水管理が挙げられる。通常の水管理に比べてこまめな水管理と労力が必要となるため,水管理の精緻化や省力化を図る技術開発は現場での普及に対して重要である。そこで,水管理を遠隔・自動化する圃場水管理システムと品種などに適した水管理スケジュールを作成・調整するスマート水管理ソフトを連携させることで,飽水管理や深水管理の自動化を図り,その実用性や効果を現地圃場で検証した。その結果,各水管理は自動制御でも大きな問題はなく,その際の気温と水温の比較から高温または低温対策として期待できる温度変化を示した。収量は同じ作付体系の他圃場と同等以上の値を示した。

  • 井上 恵美, 青羽 遼, 吉田 智一, 長利 洋
    2020 年 88 巻 10 号 p. 821-824,a2
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    秋田県では圃場の集積とともに,圃場数が多く分散している経営体の一部では,きめ細やかな水管理が困難になり,圃場での雑草の繁茂や米の収量・品質の低下が問題になっている。そこで,水田センサと自動給水栓から構成される水管理省力化システムを用いて,秋田県内の大規模稲作経営体の圃場において,秋田県農業試験場が開発した「分げつ発生抑制による高品質・良食味米の安定生産技術」を実証した。その結果,慣行水管理に比べて高品質・良食味米の安定生産を実証したので報告する。また,水管理省力化システムを活用した営農活動が,大規模稲作経営体にもたらす経営効果や課題についても併せて報告する。

  • 北村 浩二, 大和田 辰明
    2020 年 88 巻 10 号 p. 827-830,a2
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    ICTを活用した圃場における自動給水栓が開発され,各地で試行的に実証試験が行われている。福島県南相馬市において試験的に導入し,水管理に要する作業時間の変化について検証した。それをもとにある一定の条件を設定した際の,ICT自動給水栓導入に関する費用便益分析を行うとともに,社会的割引率などを変化させた場合の感度分析を行った。

  • 齋藤 晴美, 花田 潤也
    2020 年 88 巻 10 号 p. 831-836,a2
    発行日: 2020年
    公開日: 2023/03/17
    ジャーナル フリー

    農村の労働力不足が課題である東南アジア諸国では,日本の農業の構造改革に大きく寄与した圃場整備事業が注目されている。本報は,東南アジアにおける民間資本の圃場整備の事例として,ミャンマーのコメ専業会社が農家との契約栽培と合わせた圃場整備を実施している事例と,カンボジアの不動産会社がコンセッションにより大規模な国有地を開発して農業経営している事例について分析・報告する。また,わが国が圃場整備事業を発展させてきた過程を振り返り,東南アジア地域の民間資本による圃場整備の将来展望を考察する。

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