農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
87 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 佐藤 勝正, 上野 真吾, アンソニー ニャルバンバ, アミー ムチェレ
    2019 年 87 巻 2 号 p. 87-90,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    タンザニア国の灌漑地区において,農民が実施可能な簡易な灌漑施設の補修は持続的な灌漑地区運営のために重要である。しかしながら実際の現場では,破損などが生じても補修されないまま放置された多くの灌漑施設が散見され,適正な水管理に支障をきたしている。2015年8月から開始した技術協力プロジェクト「県農業開発計画灌漑事業推進のための能力強化計画フェーズ2」では,フェーズ1で作成された農民参加型補修工事マニュアルを使いながら当該技術の普及に努めており,研修を通してその成果が出始めている。本報では,当マニュアルに掲載されている工事ステップに基づく実際の補修工事実習研修および補修工事と水配分の相乗効果の事例を報告する。

  • 亀蔦 正樹, 今井 康寛, 利根川 陽一
    2019 年 87 巻 2 号 p. 91-94,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    国営土地改良事業で昭和37年に造成された「付知川用水5号トンネル」を対象に,ストックマネジメント技術高度化事業により,対策工法の現地適用性の評価を目的に,平成20年度より7工法のトンネル補強工法の試験施工を実施した。試験施工では,①安全性能(発生応力に対する構造耐力),②使用性能(現地適合性,耐久性)に着目し,継続してモニタリング調査を実施しており,本報では補強工法の選定,モニタリング調査結果および対策工法の評価を報告する。

  • 金森 秀行
    2019 年 87 巻 2 号 p. 95-100,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    開発途上国の技術移転では,人々に広く受け入れられる技術を選択することが国際協力の重要な課題の一つである。マラウイ国への協力では,「簡単・早い・安い,そして安全」の標語で選択した技術を普及した結果,7年間に2,535カ所の小規模灌漑地区が農民によって開発された。本報では,同協力の技術の選択が広く活用されることを目的として,技術の選択基準と選択方法および選択した技術を解説したうえで,693カ所をサンプルとして報告された内容を写真で精査する方法で技術の普及実態を事例研究した。その結果,簡単な技術は学習効果を高め,早い便益は農民参加を動機づけ,安い費用は制約を少なくすることで普及を促進することを検証した。

  • 山崎 由理, 宗岡 寿美, 東 信行, 中西 厚, 木村 賢人, 辻 修
    2019 年 87 巻 2 号 p. 101-104,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    河川水中の窒素起源の推定を目的に,北海道東部の森林流域(2地点),畑作流域(1地点),畑・酪混合流域(2地点)および酪農流域(3地点)において,河川水中のイオン組成および付着藻類の窒素安定同位体比(δ15N)を比較検証した。調査期間は2015年7月および9月であり,10項目の溶存イオンおよび付着藻類のδ15Nを分析した。トリリニアダイアグラムにおいて,畑作流域はNO3-およびSO42-が優勢なイオン組成に変化しており,人為的影響が強いことが示唆された。このとき,畑作流域および畑・酪混合流域のδ15Nは2.1~5.4‰で化学肥料由来の窒素成分が河川に流出していた。一方,酪農流域のδ15Nは9.6‰と他流域と比較して高く,家畜排せつ物由来の窒素成分であると推定された。

  • 早瀬 吉雄
    2019 年 87 巻 2 号 p. 105-110,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    世界で酸性雨データベースが公開されている。ユーラシア大陸における気候システムの知見および流跡線解析法を用いて,日本および東南アジアにおける降水窒素濃度の変動を検討した。冬季は,偏西風によって米国,欧州大陸から運ばれた大気汚染物質が,シベリアからの北西季節風に乗って日本に届く。また中国,韓国からも飛来することが流跡線解析法によって確認できた。夏季は,ヒマラヤ大山塊が育成するインド洋からの南西季節風および北太平洋高気圧による南東季節風が日本や東南アジアに吹く。インド洋・太平洋上には,汚染物質の発生源はないので,夏季の降水窒素濃度は,冬季よりも低い。小笠原やヤンゴン,熱帯雨林気候の島クチンは特に低い。

  • 千原 英司, 西山 竜朗, 堀畑 正純, 千家 正照
    2019 年 87 巻 2 号 p. 111-116,a1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    ロックフィルダムでは風化軟岩の特性を活かし遮水材からロック材まで現位置で採取される材料を分類利用する。ここでは,中・古生代の美濃帯に属する砂岩・粘板岩およびチャートを基盤とする地域に建設された大型ロックフィルダムにおいて,砂岩と粘板岩を母材とする遮水材料で風化程度が透水性に与える影響を明らかにした。また,ロック材について,礫の新鮮度を,礫比重と吸水率をパラメータに材料のせん断強度との関係から明らかにし,風化の程度がせん断強度に与える影響を明らかにした。後者は今後の長期的なダム管理において,風化度合いを礫比重と吸水率という簡易な計測により得られるデータを用いた安全性評価に役立つものと考えている。

  • 山口 康晴
    2019 年 87 巻 2 号 p. 117-120,a2
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    農業用の排水機場は,適正な管理を通じて,低平地の農地のみならず周辺の施設や住宅地の排水を一体的に行い,湛水被害を防止する公益的機能を発揮している。このような機能は,農村地域の混住化の進展や集中豪雨の増加などに伴い一層重要性を増すものの,管理の主体を担う土地改良区は,集中豪雨の増加などに伴う管理負担の増加,農地転用に伴う賦課金の減少,農業の担い手の減少などに苦慮しており,施設の適正な管理や公益性の発揮に支障を来すことが懸念される。本報では,国営造成排水機場の維持管理を取り巻く情勢や維持管理費の現状などについて整理し,維持管理活動の公益性を踏まえた市町村等協議の有効性などについて考察した。

  • 原科 幸爾, 山本 清仁, 牧 雅康, 武藤 由子, 倉島 栄一
    2019 年 87 巻 2 号 p. 121-126,a2
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    陸前高田市小友地区の被災水田では,盛土による水田再生の後,2014年から作付けを再開したが,翌年には収量が低下した。同じ水田区画内でも土壌の物理性・化学性が不均一だとイネの生育に差が生じるため,生育状況のモニタリングは,土壌環境に問題がある箇所の特定につながる可能性がある。本報では,本地区の被災水田のうち直播栽培が行われている箇所を対象として,ドローン搭載のマルチスペクトルセンサによるイネの生育モニタリングを行い,幼穂形成期から穂ばらみ期にかけての植生指数(NDVI,NDRE)と収量に強い相関があることを示した。またこれを用いて収量推定マップを作成し,収量の空間的なばらつきを明らかにするとともに,生育不良箇所を特定した。

  • 森 洋, 朝倉 紀樹
    2019 年 87 巻 2 号 p. 127-130,a2
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    青森県北西地域のため池堤体は江戸時代以前に,県上北・三八地域のため池堤体は明治以降に築造されたものが多く,県内における新田開発の推移がうかがえる。堤体材料と基礎地盤材料とも砂質土であると予測されるため池は,津軽平野の岩木川を挟んだ西側の砂丘地周辺に広く分布しており,基礎地盤材料が砂質土であっても,明治以降に比べて江戸時代以前に築造されたため池の堤体材料に粘性土が用いられている割合が高く,たとえば,漏水などによるため池堤体に対する安定性の認識が思った以上に高かったと推測される。ただし,ため池を取り巻く地質条件などを勘案すると,堤体材料が粘性土であっても,砂質土成分が比較的多く混ざっている可能性があると考えられる。

  • 小泉 和広, 永野 賢司
    2019 年 87 巻 2 号 p. 131-134,a2
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/06/20
    ジャーナル フリー

    プレストレストコンクリート管(PC管)の農業用幹線水路における継手部の曲げ角度について,デジタル水準器を用いた新たな調査手法について報告する。調査は,管体の不等沈下に起因した継手部からの漏水が顕在化している約230 m区間で,縦断測量による手法と継手間隔と段差およびうけ口・さし口の内径から算出する従来の手法に加えて,新たに考案したデジタル水準器による手法から求められる継手部曲げ角度の比較・検討を行った。本報では,継手部曲げ角度の比較・検討結果と継手部の漏水を予防・保全するための機能低下を調査する手法として,新たに考案したデジタル水準器による継手部曲げ角度の調査方法の有効性・適用性が確認されたことについて報告する。

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