農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
83 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 溝口 勝, 伊藤 哲
    2015 年 83 巻 2 号 p. 93-96,a1
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    フィールドモニタリングシステム(FMS:FieldMonitoring System)の概要とその活用例として土地改良区内の水田湛水深モニタリングの事例を紹介する。通信機能付き水位計を用いたモニタリング技術は広域の水田湛水深を一括管理することを可能とし,水田農業の担い手と土地改良区職員の水管理労力を軽減するのに役立つであろう。それはまた地域の水管理組織であった土地改良区のサービス形態を変え,これまでの農業・農村を劇的に変化させる可能性を持つ。その可能性を最大限に引き出すためにも農業農村工学分野が従来の農業水利や農地造成に加えて新たに農村情報のインフラ整備にも取り込んでいくことが必要である。

  • 久保田 富次郎, 田渕 尚一, 濵田 康治, 申 文浩
    2015 年 83 巻 2 号 p. 97-100,a1
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    近年のICT技術の発展とともに開発が進んだ低コストの遠隔観測技術は,農業農村工学分野でも,導入が加速的に進む可能性がある。筆者らは,これを利用して東日本大震災への対応や農業水利事業の実施地区での調査において,濁度や水位などの観測を実施してきた。本報では,まず,観測事例を踏まえて,遠隔監視と濁度を中心とする水質水文観測における問題点と課題の整理を行った。水管理の実務において利用を進めるためには,機器の高耐久化や維持管理の容易化,ソフトウェアの改良,機材費などの低減などが必要であることがわかった。次に,遠隔観測システムの活用方向の一つとして,循環灌漑整備地区への活用の可能性について例示した。

  • 坂西 研二, 芝山 道郎, 中村 乾, 綽 宏二郎, 板橋 直, 阿部 薫, 木村 昭彦
    2015 年 83 巻 2 号 p. 101-104,a1
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    近年の集中豪雨の頻発により,傾斜地の露地野菜畑などにおける土壌粒子・栄養塩などを含んだ表面流出の発生頻度とその強度が増大する傾向にある。表面流出は突発現象であり,現場で発生状況を直接観察できないことが多く,観測機器の保守やデータの精度に問題が生じやすい。そこで,表面流出や土壌侵食の発生状況を自動的にコマ撮り撮影する装置を開発し,屋外の人工傾斜枠圃場および群馬県北部の傾斜畑に設置した。複数作期にわたる観測実験の結果,表面流出発生の様子を,昼夜を問わず連続画像として撮影・記録することに成功した。画像の解析と,流出水量や懸濁物濃度などの水質分析との併用により,現象の把握と理解に寄与することが期待される。

  • 衛藤 彬史, 鬼塚 健一郎, 星野 敏, 橋本 禅
    2015 年 83 巻 2 号 p. 105-108,a1
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    本報では,農村地域においてインターネットやSNSを活用し,住民が主体となり情報の地域内共有や地域外への発信に取り組むことが地域社会の課題解決や集落コミュニティの活性化に寄与する可能性のある事例を紹介する。その上で,ICTを活用した取組みのうち,特に地域コミュニティの活性化に焦点を当て,そのような意図で進められてきた地域SNSの事例に注目し,推進上の課題について検討するともに,そうした課題への対応策を筆者らがこれまで行ってきたSNSを活用した地域課題の解決やコミュニティの活性化に関する研究,およびそれらを介入的に試みる実践活動の内容に言及しながら示す中で,取組みを集落主体で実施するための導入指針を提案する。

  • 鬼塚 健一郎, 衛藤 彬史, 星野 敏, 柳瀬 顕
    2015 年 83 巻 2 号 p. 109-112,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    本報は,筆者らが京都府京丹後市常吉集落にて実施したタブレットPCによる映像制作を取り入れたワークショップを事例として取り上げ,その概要と効果・課題について報告を行うものである。本ワークショップでは,iPadとiPad上で動作する無料アプリiMovie,マイクというシンプルな機材構成で現地取材から映像編集までを行い,未経験でも限られた時間内で映像作品を成果として完成させることができた。ワークショップの過程や成果を視覚的にわかりやすく整理・提示できる点で,映像制作の導入はワークショップの手法として効果的であると考えられる。研修者に実施したアンケート調査でも好意的な評価が得られた一方で,参加者の一部しか映像制作に参加していないなどの課題も確認された。

  • 友松 貴志, 庄 直樹, 重岡 徹, 山本 徳司
    2015 年 83 巻 2 号 p. 113-116,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    農研機構農村工学研究所と(株)イマジックデザインとの官民連携により開発したモバイルGISアプリ「iVIMS」は,ストック情報の更新作業を省力的に実施するためのオンサイト情報システムとして現場調査に機能を特化している。本報では,その特徴と機能を紹介するとともに,モバイルGISが,農業水利施設のストックマネジメントだけではなく,災害時における活用,経営規模の大規模化に伴う営農管理,農地・水・環境保全向上対策における活動や地域資源管理など幅広く展開することが可能となってきている現状と,運用・普及における課題と今後の方向性について報告する。

  • 泉 太郎, 松原 英治
    2015 年 83 巻 2 号 p. 117-120,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    国際農林水産業研究センターが,ベトナム国カントー市で実施中の農家用バイオガス発生装置の導入によるクリーン開発事業は,豚の排せつ物を原料としてバイオガスを発生させ,調理に使用する薪やLPガスを代替し,温室効果ガスの排出削減を図るものである。本事業で導入している装置は,1世帯内での使用を想定した小規模なものであることから,バイオガスの供給量と需要量の調整が難しく,豚の排せつ物が不足する際はガスの発生量も不足するが,逆に余剰ガスが発生することもある。本報では,この課題解決に向けた,①バイオガス原料としての未利用バイオマスの利用,および②共同利用や他用途利用を通じたバイオガスの有効活用の可能性,について報告する。

  • 菅原 喜久男, 林 貴峰, 原野 三男, 大内 孝喜, 大里 有巨
    2015 年 83 巻 2 号 p. 121-124,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    宮城県では,東日本大震災の津波によって,15市町,約327 km2が浸水し,23万棟の住宅が全半壊,約13,000 haの農地が甚大な被害を受けた。農村の復興に当たっては,単なる復旧にとどまらない創造的な復興を目指して約6,540 haで農地整備事業を導入し,「大規模かつ競争力のある経営体の育成」と被災市町の復興まちづくり計画に取り組んでいる。本報では,防災集団移転促進事業により買収された住宅等移転元地などを農地整備事業の一定の地域に含め,土地改良事業の換地制度を活用して集積・再配置を行い,防災公園,防潮林などの公共用地の創設や企業誘致などの復興まちづくり計画と農業振興を一挙に実現する「土地利用の整序化」の取組み状況と課題について報告する。

  • 長谷川 雄基, 齋 幸治, 佐藤 周之
    2015 年 83 巻 2 号 p. 125-128,a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    補修による開水路の平滑性の改善効果を定量的に示す指標として,Manningの平均流速公式中の粗度係数が用いられる場合が多い。このような場合,事前に水理模型実験により当該材料の粗度係数を推定しておくこととなる。有限長である実験水路において粗度係数の推定を行う際には,完全な等流状態を得ることが困難であるため,通水時の流速,水深,径深といった,水理条件の設定方法が重要となる。本報では,水理模型実験において開水路の粗度係数を推定した結果について,推定した粗度係数と水理条件とを関連付けて整理する。加えて,実験結果を踏まえ,本模型実験において,開水路の壁面粗さのみを反映した粗度係数を推定する方法について提案する。

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