農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
84 巻, 9 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 丹羽 勝久, 横堀 潤, 米山 晶, 品川 浩一
    2016 年 84 巻 9 号 p. 749-752,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    UAVなどの低層リモートセンシングは撮影に雲量の影響を受けず,圃場単位などの狭域の画像撮影に有効である。その実利用例として,空撮用無人ヘリコプタに搭載した光学センサを利用した可変施肥システムが挙げられる。具体的には光学センサ画像で圃場の窒素肥沃度をモニタリングし,その結果に基づいて可変施肥計画を立案する。本システムに対応する施肥機を利用し,テンサイに対する可変施肥試験を3圃場で行った結果,農家慣行区に比べ,可変施肥区で窒素施肥量の平均25%の減肥と糖量の平均9%増収を達成した。そのほか,低層リモートセンシングは降雨直後や降雨2日目などの限られた条件の画像取得が可能であり,それらの画像から,それぞれ浅礫区域や圃場排水の不均一性を把握することが可能であった。

  • 栗田 英治, 福本 昌人
    2016 年 84 巻 9 号 p. 753-756,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    農地と農地を取り巻く環境を精緻に把握していく上で,近年,さまざまな分野で活用が進んでいる小型UAVによる空撮技術,写真からの三次元形状復元技術の適用の可能性を展望した。具体的には,小型UAV空撮と空撮により得られた写真画像を用いた三次元形状復元技術により,傾斜地農地の法面の条件(勾配・凹凸など)を把握する手法について検討した。結果,高解像度のオルソモザイク画像,DSM(数値表面モデル)を取得することができ,農地一筆ごとの法面の勾配を精緻に把握することができた。加えて,法面内に存在する石積みや岩石などの残存に起因した,局所的な急勾配部分や凹凸などについても把握が可能であることが分かった。

  • 牧 雅康, 本間 香貴, 沖 一雄
    2016 年 84 巻 9 号 p. 757-760,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    近年,生産者の高齢化や後継者不足を背景に,効率的な農地管理のための農事組合法人化やそれに伴う農地の大規模化が進んでいる。大規模農地における作物の生育状態の空間分布を把握するため,リモートセンシング技術の利用が期待されている。このような状況の中,無人飛行機(Unmanned AerialVehicle:UAV)およびUAVに搭載可能な植物の生育監視に適した近赤外カメラが登場し,リモートセンシングの中でもUAVを利用した生育管理に注目が集まっている。本報では,UAV画像の高度な利用方法として,作物モデルとの結合による水稲の生育状態の動的な推定,さらに,衛星画像との併用による広域展開の可能性について紹介する。

  • 鎌形 哲稔, 前田 佳子, 福島 あゆみ, 小川 健太
    2016 年 84 巻 9 号 p. 761-764,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    農業生産の省力化・効率化のために,衛星リモートセンシングの活用が検討されているものの,欲しいタイミングでデータが取得できない,データ購入費が高いなどの理由により,利活用が進んでいない。このような状況の中,本報では小型・超小型衛星による営農支援の可能性およびUAVの利用可能性について,生産者やJAの生の声を聞きながら,有識者の助言を受けて検討を行った。その結果,UAVについては,UAV公共測量マニュアルや地図情報レベル250で求められる精度を満たす測量が可能であることが示された。小型・超小型衛星による営農支援についても,生産者の認識と合致した作物の生育状況や穂水分率を,網羅的に把握できたことから,生産者からは積極的に活用したいという評価が得られた。

  • 福本 昌人
    2016 年 84 巻 9 号 p. 765-768,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    茨城県は全国一のレンコンの産地で,霞ヶ浦周辺を中心にハス田が広く分布している。その分布情報は,霞ヶ浦の水質改善などの面で重要である。そこで,リモートセンシングにより茨城県内のほとんどすべてのハス田を抽出し,分布マップを作成した。ハス田の抽出は,衛星画像解析と航空写真判読を組み合わせて行った。まず2014年8月2日のRapidEye衛星データと圃場区画GISデータを用いて画像分類などによりハス田である可能性のある圃場を抽出し,次に2014年3月22日のGoogle Earthの航空写真画像を用いて同圃場と同圃場周辺の圃場を目視判読してハス田を抽出した。ハス田の立地状況を分析したところ,ハス田の44%は標高1m未満の土地に位置していた。

  • 石田 圭佑, 桑田 賢太郎, 玉井 修二
    2016 年 84 巻 9 号 p. 769-772,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    昨今,UAVの普及が進み,農地管理への利用が期待されている。しかし,農地観測に用いられるマルチスペクトルセンサーはいまだに高価である。そこで,近赤外代替レンズとデジタルカメラを用いた,青バンドによるblue-NDVIの観測手法に着目した。水稲圃場を田植え後から刈取りまで定期的に空撮した。さらに,空撮した画像データを解析することで,UAVによる低コストでの農地観測手法の開発を試みた。結果,blue-NDVIによる植生区分の可能性および生育に対し妥当と思われる数値推移を確認した。また,圃場内の生育の遅れがNDVI値に影響する傾向も確認でき,UAVによる新しい農業モニタリング手法が期待できる。しかし,水面への映込みや影によるノイズなどの課題も確認されたため,今後の取組みによる改善が必要となる。

  • 吉村 暢彦, 古川 フラビオ, 渡辺 悠, 宋 粮, 大原 譽丈, 小川 健太, 義平 大樹
    2016 年 84 巻 9 号 p. 773-776,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    農業従事者の減少やTPP環太平洋パートナーシップ協定の大筋合意などをうけ,高付加価値化や大規模化などが進み,農業,農村を取り巻く環境は変化している。そのような中で,さまざまなセンサーによる生育情報の活用や,ロボットの活用など,スマート農業への流れは加速している。本研究では,圃場観測におけるドローンの活用を検討するために,圃場の高頻度モニタリングを試行した。結果,成長初期の作物の週ごとの生育を,緑被率で数%程度の増加として把握できること,植栽方法の違いによる生育の差異が把握できることがわかった。ドローンの性能が劇的に向上する中,農業者自身による観測も十分に可能であるが,撮影の事後処理の簡便化が課題と考えられた。

  • 竹内 渉
    2016 年 84 巻 9 号 p. 777-780,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    マレーシアは,インドネシアに次ぐ世界第2位のパームオイル生産国であり1960年代以降国策としてアブラヤシの植林が行われてきたが,国全体のアブラヤシが再植林の時期を迎えており,GISを利用した効率的な管理運営に大きな期待が集まっている。国有地のアブラヤシは,マレーシア連邦土地開発公社(FELDA)によって管理されているが,現場のテラス作成では精密な測量ではなく,現場作業員の勘と経験に頼った施工と植林が行われているのが現状である。そこで,衛星測位技術GNSSを用いて測量を行い,リモートセンシングやUAVから作成された地形情報を3次元GIS上に表現し,テラス施工と植林を効率的に管理する方法を開発することとなった。また,ALOS2 PALSAR2データを用いたアブラヤシのバイオマスと収量の計測,ガノデルマに感染したアブラヤシの検知,フィールドサーバと衛星データから得られる農業気象情報の推定についても検討した。

  • 田中丸 治哉, カリド アリ エルタイブ エラミン, 多田 明夫, 鳥井 清司, バシール モハメド アハメド アダム, アラヤ ゼライ ゲ ...
    2016 年 84 巻 9 号 p. 781-784,a3
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    洪水灌漑(spate irrigation)は,季節河川における雨季の洪水を水路によって圃場に導水する灌漑方法であり,中東やアフリカなどの乾燥・半乾燥地域で古くから利用されてきた。本報では,大規模な洪水灌漑プロジェクトが実施されているスーダン東部のガッシュデルタを対象として,衛星リモートセンシングに基づくエネルギー収支法(SEBAL)を適用し,洪水灌漑圃場(耕作ミスガ)における蒸発散量の空間分布を推定した。さらに,その結果に基づいて,同じ耕作ミスガ内でも場所によって水供給量が異なり,蒸発散量がかなり変動すること,地表面の凹凸が激しい耕作ミスガほど,水供給の不均一が生じやすいことを示した。

  • 森 淳, 渡部 恵司, 小出水 規行, 竹村 武士
    2016 年 84 巻 9 号 p. 787-790,a3
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    粗石付き斜路型魚道は,安価で工事も容易であり,多面的機能支払交付金などを活用して農業水路の落差工を解消する有力な工法である。栃木県内に造成された粗石付き斜路型魚道で遡上調査を行ったところ,魚道内は階段状の水面形を呈し,流速が低減されて魚の遡上に適した水理条件となっていた。延べ16日間の調査期間中445尾が遡上し,93%がドジョウ,タモロコおよびオイカワだった。遡上個体数と基準水位は有意な正の相関がみられた。魚道の横断方向につけられた傾斜によって左岸側では水深が深くなったが,小流量時には右岸より遡上個体数が少なくなった。これはクレストとの段差の影響と考えられた。水面がスムーズに流れるようにスロープを付けてこの段差を解消すれば,より多くの魚が遡上できると考えられる。

  • 鈴木 哲也, 稲葉 一成, 峰村 雅臣, 傳法谷 英彰
    2016 年 84 巻 9 号 p. 791-794,a3
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    地すべりに代表される突発的地盤災害では,面的かつ線的に広大な範囲にシステムを構築している農業水利施設が多大な影響を受ける。新潟県では,1949年から2012年までの64年間で約5,700件もの地すべりが発生しており,このうち融雪や豪雨による地下水位の上昇を誘因として発生するものは全体の約9割を占めている。本報では,2012年3月7日の融雪期に新潟県上越市板倉区国川で発生した国川地すべりを事例に,農業水利施設の被災と復旧対策に関する特徴を抽出し,地すべり地帯における農業水利施設の被災特性と再構築に関する技術的課題を考察する。

feedback
Top