農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
90 巻, 7 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 瀨戸 太郎, 網本 恵介, 酒井 博之, 宮澤 光佑
    2022 年 90 巻 7 号 p. 475-478,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    建設当時東洋一の規模を誇った新川河口排水機場をはじめとする新川流域の基幹的排水施設群は,戦後まもなく着工し,数次の前歴事業により整備・再編されてきた。海抜ゼロメートル以下のエリアを約2割抱える広大な地域の農業を支えてきたが,老朽化や地盤沈下による機能低下のため,再び国営事業で老朽化および耐震化対策を実施している。気候変動や都市化,人口減少により地域をとりまく環境は竣工当時から大きく変化しているため,事業の推進に当たってはその効果をより効率的に発現できるよう地域との連携活動に重点を置いている。本報では,防災・減災の効果を高め,また,地域農業の将来の担い手を確保するための地域との連携活動を紹介する。

  • 能登 史和, 高橋 威光
    2022 年 90 巻 7 号 p. 479-482,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    石川県加賀地方に広がる手取川扇状地の手取川右岸側に隅々にまで張り巡らされている七ヶ用水は,明治,昭和の時代に食糧増産等に応じた大改修がなされてきた。平成の時代に入り,都市化の進展に伴う排水量の増大,水路の老朽化等の課題に対応するため再整備に取り組んでいる。本報では,平成の大改修で取り組んだ4つの事例を報告する。①ブロック積み水路における機能保全コストを低減させるストックマネジメントの導入,②特に市街化が著しく水路断面の拡幅が困難な箇所における,道路下を流下させるバイパス水路の設置,③溢水を防ぐための複雑かつ緻密な水管理システムの整備,④土地改良区の維持管理費を低減させるための小水力発電の設置と運用である。

  • 石川 晶康, 山本 朋代, 山本 浩平
    2022 年 90 巻 7 号 p. 483-486,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    福井県あわら市に位置する細呂木地区では,施設の老朽化に伴う用水不足,地形的な条件による慢性的な排水不良に悩まされていた。このため平成24年から基盤整備事業に着手し圃場の大区画化,用水路の改修,農地の排水不良対策に取り組むこととした。事業により最大2haの圃場,用水路のパイプライン化,水田の汎用化等,生産基盤を整えることで,営農の省力化が図られ,地域の中心的な担い手への農地集積が進んだ。また,新たに園芸作物の生産に取り組むことで収益性の高い営農を実現することが可能となった。本報では基盤整備事業を契機とし,新たな農業が展開されることとなった経緯について報告する。

  • 平木 叙光, 宮田 義人, 桶谷 祐二
    2022 年 90 巻 7 号 p. 487-490,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    富山県内では農業用水路での転落死亡事故が,平成23年度から令和2年度末までに197件発生し,なかでも65歳以上の高齢者が約9割を占めている。これを踏まえ,県では令和元年12月に「富山県農業用水路安全対策ガイドライン」をとりまとめ,行政,関係団体や地域組織等が連携し,地域の実情に応じた効果的な事故防止対策を推進している。ガイドラインに基づく取組みとして,安全対策ワークショップを実施してきており,地域住民や関係組織が参画して,地域内の危険箇所の点検,情報共有,効果的な安全対策の検討を行っている。安全対策ワークショップにより転落事故を検証し,事故防止意識の定着を図ることで,農業用水路における安全対策の推進を図る。

  • 藤牧 洋介, 髙浪 裕三
    2022 年 90 巻 7 号 p. 491-494,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    新潟県は豊かな水と肥沃な大地に恵まれた農業県であるが,稲作が主体である本県の農業産出額は減少傾向にあり,長期的な米価の低迷も相まって県内農家の経営は厳しい局面を迎えている。行政として,園芸導入推進により農家経営の多角化を目指す必要があるが,県内に広く分布する重粘土圃場での排水不良が障壁となっている。そこで園芸導入に資することを目的に,圃場整備における排水対策工法や地下灌漑の効果的な利用方法について実証試験を行い,得られた知見をマニュアルとして策定した。本報では,排水不良対策について2カ所(阿賀野市,上越市),地下灌漑について1カ所(新潟市)で実施した実証試験の結果について紹介する。

  • 山下 良平, 金平 健世
    2022 年 90 巻 7 号 p. 495-498,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    本報では,農地集積に対する担い手の多様な認識を聞取り調査によって探索することで,集積率のみが評価として公表されがちな現状に対して,客観的な現状認識を得ることを目的とした。石川県8事例,富山県1事例の計9つの大規模経営体を対象に,規模拡大のボトルネック,経営内外の条件不利地への対応,借地に関する地権者との関係について情報収集した。調査結果に基づく分析から,特に中山間地域では,地域からの信託によりいや応なく規模拡大させてきた担い手が,借地の将来展望について深刻な悩みを抱えている現状が浮き彫りとなった。これらは各地域での個別的な対処が要請される問題であり,今後も担い手への細かな対策が重要であろう。

  • 泉 明良, 堀 俊和, 森岡 涼子
    2022 年 90 巻 7 号 p. 499-502,a2
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    地震・豪雨発生時にため池の危険度を予測し,現地の被害情報をリアルタイムで共有する「ため池防災支援システム」では,地震発生時にため池の沈下量を計算し許容沈下量と比較することで危険度を予測している。しかし,実際のため池の被災程度と地震解析で計算された沈下量を比較すると,計算された沈下量が過大な傾向がある。これは地震解析のアルゴリズムが設計で用いる計算手法に基づいており,安全設計の考え方から沈下量が大きく算定される傾向にあるためである。本報では,予測精度の向上を目的に,過去に発生した地震被災事例をもとに機械学習の一種であるSVMを用いて地震解析で計算された沈下量を補正する手法ならびに精度検証の結果について述べる。

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