農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
84 巻, 8 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
  • 田村 孝浩, 内川 義行, 松井 正実, 守山 拓弥
    2016 年 84 巻 8 号 p. 669-672,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    わが国では農作業事故により毎年350名を超える人命が失われている。他産業では労働衛生環境の改善が図られ,その死亡者数を大幅に減じてきたが,農作業事故死はこの40年間,高位安定のまま推移してきた。事故防止には「人」と「機械」への対策のみならず,「作業環境」に対する視点と対策が不可欠となる。そこで本報では実際の事故事例を「基盤構造」の観点からひも解き,事故原因と改善方策を考察した。その結果,縦支線農道を乗用型機械で移動中に発生した事故は,走行路面の縦横断勾配に問題があったことを指摘した。こうした環境的要因に属するリスクは,農業土木の知見に基づいた小規模かつ部分的な整備によって,相当程度減じることが可能であることを指摘した。

  • 積 栄, 岡田 俊輔, 志藤 博克
    2016 年 84 巻 8 号 p. 673-676,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    農作業死亡事故は農業就業人口比で見ると増加傾向にあり,他産業と比べても著しく多く,大きな問題となっている。近年の詳細な事故調査・分析の取組みにより,事故の要因は農業機械やヒューマンエラーによるものだけではなく,基盤構造を含む環境面が影響している事例も多いことがわかってきた。本報では,まず基盤構造が影響した農業機械事故として,農道における2件の転落死亡事故の要因を考察する。次に,基盤構造が機械作業安全に与える影響について,稲収穫にかかる各種作業を題材に,その可能性を論じ,今後の農作業事故対策における,農業機械分野と農業土木分野の連携の重要性を示す。

  • 北川 巌, 村上 則幸, 塚本 康貴
    2016 年 84 巻 8 号 p. 677-680,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    農家数の減少による規模拡大に対しては,大型機械による省力的水稲作,投下労働時間の少ない子実トウモロコシを加えた新たな田畑輪換,さらには収益性の改善に向け露地野菜を導入するための水田インフラ整備の必要性について指摘した。また,安全な農作業を支えるには,①大型コンバインや収穫物を運送業者がトラック・トレーラにより安全に運搬できる幅広い作業道,②トラクタの転落・落下事故を防止する排水路の管路化,③漏水や草刈り面積を抑制して圃場管理を容易にする農区・圃区外周の畦畔への作業道の配置,④これら作業道の圃場側への農道ターン設置が必要と指摘した。

  • 長坂 善禎, 玉城 勝彦, 齋藤 正博
    2016 年 84 巻 8 号 p. 681-684,a1
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    担い手への農地の集積による農業経営の大規模化が進展しつつあり,これまでより効率的な圃場作業が求められている。一方,熟練オペレータは減少しており,非熟練オペレータであっても,熟練オペレータ並みの作業を実施できるようにすることが求められている。本報では,筆者らが研究している,衛星測位システムによって得られる高精度な位置情報を利用した耕うん,移植,収穫の自動作業の概要について紹介する。また,作業中の農業機械の操舵を自動化する製品も市販化されており,その作業精度や能率の改善効果を農家圃場で検証しているところであり,それらについても併せて紹介する。さらに,今後の基盤整備への期待について述べる。

  • 佐藤 太郎, 吉川 夏樹, 坂田 寧代
    2016 年 84 巻 8 号 p. 685-688,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    傾斜地において,平坦地と同様に長方形区画による圃場整備を実施した地域では,農道や進入路の急勾配化や区画間法面の長大化などにより,整備後の営農および維持管理の作業に大きな支障が生じている。本報では,新潟県内で災害復旧の一環として実施された農地整備を事例として,省力的で安全な農作業の確保という視点から整備計画の概要について報告する。区画形状は作業機械の大型化を考慮し,区画の曲折部は隅切りや円弧状畦畔とし,農業機械の走行を円滑にすることが重要であることを指摘した。また,区画への乗入れ環境の改善など,等高線区画の導入効果を紹介するとともに,中山間地域の農地整備について,今後の方向性と課題について論じた。

  • 三谷 誠次郎, 上田 純一
    2016 年 84 巻 8 号 p. 689-692,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    中山間地域の畦畔法面の雑草管理は,清涼な環境での作物生産および水田の多面的機能の発揮のために欠かせない。しかし,肩掛式刈払機を用いた草刈り作業は体力的,精神的に負担の大きな作業であり,担い手の経営や規模拡大の妨げとなっている。また,刈払機による負傷事故も依然として多く発生している。本報では,法面管理の軽労,安全化を図るため,狭幅作業道造成機を用いた法面作業道の造成方法とその効果について述べる。法面作業道の設置は最も効果的な対策の一つであり,本方法により簡易に造成することができる。現場でぜひ活用していただきたい。

  • 早瀬 吉雄
    2016 年 84 巻 8 号 p. 693-696,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    積雪温暖地に位置する手取川流域を対象に,窒素循環の視点から流域の水循環の健全性について検討した。手取川流域は,白山麓の山岳域を源流に,多積雪・多雨の水文循環,緑豊かな森林生態の好条件下にあるため,扇状地の灌漑用水は,元入れで窒素濃度0.3 mg/ℓと低く,良食味米の生産に最適であり,扇状地地下水は,NO3-Nが1.5 mg/ℓ以下の軟水で,上水や工業用水として利用され,湧水域にはトミヨの生息域がある。森林流域の窒素吸収量が3.5~5.1 kg/(ha・year)で,森林は窒素制限にある。

  • 山下 正, 川合 規史, 徳若 正純, 中田 摂子
    2016 年 84 巻 8 号 p. 697-700,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    わが国の総人口は2010年から2030年の間に8.9%減少すると見込まれているが,平地農業地域では17.3%,中間農業地域では25.3%,山間農業地域では37.5%減少すると推計されている。他方,農村の活性化には,産業の育成や雇用の確保,所得の増大などが必要であり,地域活性化による定住促進などの事例研究がさまざまな機関によって行われている。しかしながら,農業農村振興施策が人口変動に与える影響の分析は十分に行われていない。本報では,農村地域に位置する市町村の統計データを用い,農業生産力,6次産業化およびこれらを支える農業生産基盤整備が農村地域における人口変動に与える影響について検証を行った結果について報告する。

  • 森 淳, 栗原 貴史, 渡部 恵司
    2016 年 84 巻 8 号 p. 701-704,a2
    発行日: 2016年
    公開日: 2021/01/14
    ジャーナル フリー

    水田魚道は圃場整備により分断された水域ネットワークを修復する手法として普及しているが,定量的な評価は十分ではなかった。隣り合い,営農が共通する2枚の水田のうち1枚に水田魚道を設置し(魚道区),設置しない水田(対照区)との間で中干し前の落水時に降下する魚類の調査を行った。その結果,面積比を考慮すると魚道区から降下した魚類の個体数は対照区の約13倍となった。魚道区では排水開始直後は体長の大きなドジョウが降下し,次第に小さな個体が降下するようになった。炭素安定同位体比分析の結果,これら水田の排水路には水田で生育したと考えられる炭素安定同位体比を持つドジョウが生息していることが明らかになった。

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