農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
90 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 松井 俊英
    2022 年 90 巻 2 号 p. 77-80,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    過疎地域・振興山村でありながら,人口の転入が増えている,あるいは転出が少ない市町村が存在する。このため,過疎地域・振興山村の市町村に対するアンケート調査結果をもとに多変量解析を行い,これら市町村は,定住人口の増加,流出の抑制など持続的な農山漁村を形成するため,どのような分野に重点を置いた地域振興策を講じているのか考察したので報告する。

  • 進藤 惣治, 田尻 淳, 金森 秀行, 郷古 雅春, 橋口 幸正, 松原 英治
    2022 年 90 巻 2 号 p. 81-84,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    わが国の農業農村開発協力は,約60年の歴史を有し,開発途上国の発展に貢献してきた。この間,JICAの技術協力専門家をはじめさまざまな立場で,農業農村工学技術者が政府開発援助に携わり,経験を蓄積してきた。本報は,これまで実施してきた農業農村開発協力の特徴を経験者のそれぞれの立場から紹介するとともに,蓄積した経験やノウハウを次世代に継承するための提案を行う。なお本報は,2020年度農業農村工学会大会講演会における企画セッション「農業農村開発協力の経験を次世代へ継承するために」の内容をとりまとめ,編集したものである。

  • 田野井 雅彦
    2022 年 90 巻 2 号 p. 85-90,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    2019年8月のTICAD7横浜開催や農林水産省のグローバル・フードバリューチェーン戦略を背景に,(一財)日本水土総合研究所では,タンザニアの小規模灌漑事業実施地区におけるコメについて,総合的な農業農村開発計画を策定した。灌漑施設の整備を活かしたコメのバリューチェーン構築には地区農家の能力開発が不可欠と考え,その妥当性を検討するため,現地調査において地区農家代表を対象としたワークショップ等の能力開発プログラムを実施した。本報では,同プログラム実施前後の2回にわたる農家へのインタビュー調査結果を報告するとともに,灌漑施設整備と同プログラムが地区農家の営農および意識に与えた影響と評価について考察した。

  • 團 晴行, 南雲 不二男, ダビンガ ジョナス, バロ アルベール
    2022 年 90 巻 2 号 p. 91-96,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    ブルキナファソ国の中央台地は起伏の緩やかな地形であるにもかかわらず,高強度の降雨や脆弱な土壌特性が原因となって激しい水食が生じている。当国における水食防止対策は長年にわたり実施されたが,その効果は一部にとどまり,期待された効果は十分に発揮されていない。加えて,一般的に貧困な小農ほど経済的な理由や労働力,時間の制約から水土保全施設の設置が困難な状況にある。農家の技術的かつ経済的な受容性に考慮した,より効果的な研究開発が求められている。本報では,土木的な水食防止対策である石積み工と営農的な水食防止対策である列状植栽工を対象に,長短所を補完し得るように組み合わせた複合技術の主要な利点などを紹介する。

  • 佐藤 勝正, 山内 洋一, 佐田 俊彦, アンソニー ニャルバンバ, アミー ムチェレ, ロナルド コマンガ, アナ カプヒ
    2022 年 90 巻 2 号 p. 97-100,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    タンザニア国において,灌漑地区を運営管理する灌漑組合の全国規模での競技会はこれまで開催されたことがなかった。2015年8月から開始した技術協力プロジェクト「県農業開発計画灌漑事業推進のための能力強化計画フェーズ2」では,競技会を通した農民間普及の効果と順位付けによる維持管理に対する農民のモチベーションに期待して,プロジェクトが支援した36地区のうち,最終選考に選ばれた8灌漑地区による灌漑地区運営管理を競う全国大会を開催した。その結果,灌漑地区の運営管理方法の改善策などが参加した関係者の間で共有された。財政的な難しさはあるが,本競技会を継続することで,将来的には灌漑組合のネットワーク構築が期待される。

  • 宮崎 憲二, 佐藤 俊典, 持田 賢治, 大林 市幸, 宮﨑 一道
    2022 年 90 巻 2 号 p. 101-104,a1
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    取水井戸施設では,取水ポンプのような施設機械だけでなく,取水井戸本体も経年劣化が考えられるが,管理の現場では井戸の状況や劣化程度を把握することは難しく,揚水時に井戸内水位がポンプ停止水位まで低下して,初めて異常に気づく場合が多い。そこで,日常管理データを活用して井戸の集水能力の状態監視ができれば,劣化要因の究明や井戸洗浄などの機能回復効果を評価することが可能となり,効率的・計画的な井戸管理のあり方が見えてくる。本報では,日常管理データを用いて,井戸内水位と揚水量および比湧出量の時系列図を作成することにより,状態監視の可能性を示すとともに,今後の井戸管理の取組みについて提案する。

  • 安西 俊彦, 大西 純也, 岡本 健, 大森 圭祐, 渡辺 武
    2022 年 90 巻 2 号 p. 105-109,a2
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    インドにおける農地塩害の現状と,インド塩類土壌研究所(CSSRI)および国際農林水産業研究センター(以下,「国際農研」という)が取り組んでいる塩害対策としての排水改良技術を報告する。CSSRIは圃場の地下水位上昇の抑制を主目的とした暗渠排水技術を開発し,その施工により地下水位と土壌塩分濃度が低下し作物収量は増加したが,高い施工コストが課題である。国際農研は有材補助暗渠機カットソイラーをインドに導入し,作土層の除塩・排水効果についてCSSRIと共同研究を行っている。カットソイラーは収穫残渣を疎水材とし作業機の牽引力のみで浅層に暗渠が施工できる。低コストかつ農家自身で施工可能で持続的な塩類化対策に貢献できると考えられる。

  • 三春 浩一, 北澤 哲, 羽藤 創
    2022 年 90 巻 2 号 p. 111-116,a2
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    今後のスマート農業に向けた水管理システムについて,開水路は水位主体の管理から水位と流量併用管理へ,管水路は圧力主体の管理から圧力と流量併用管理への移行が必要である。また,5Gによる通信,IoT,農業DX等による統合管理が求められている。これに伴い水管理の基本的計測である水位計測は高精度化と安定性, 流量計測は計測容易性とともに統合管理との親和性が求められている。本報では,上記目的のために考えられた,水理学および流体力学理論,最近の情報処理技術を用いた水位計測方式,開水路流量および管水路流量計測方式の原理,特徴,応用, 課題について述べた。

  • 大森 圭祐, 森下 賢己
    2022 年 90 巻 2 号 p. 117-120,a2
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    研究機関や大学では,研究成果を社会・国民に発信する手段として,イベントに出展して成果物の展示やポスター発表を行う機会が多い。ただし,イベント出展料を公的資金で支弁している研究機関にとって,交流型の広報活動に出展する場合には,十分なPR効果を得られることが前提になる。本報では,イベント出展の効果を客観的に評価する手法を開発するため,出展料が大きく異なる2つの展示会を対象に,ROI(投資利益率)を用いて,イベント出展後の費用対効果の数値化を試みた。これまで公的研究機関では算定されていなかったイベント出展の効果を,ROIを用いて比較できることや年度推移を把握することができたので,その結果を報告する。

  • 早瀬 吉雄
    2022 年 90 巻 2 号 p. 121-125,a2
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    荒川上流域の3ダムの洪水流量資料をもとに,降雨規模による洪水流量のマクロ的評価と50mごとの数値標高に山腹斜面の3層を組み合わせた流出解析モデルで,3層の雨水貯留変化を追跡した。雨水は,森林斜面の有機質土のA層,多孔質化した粘土のB層を飽和させ,ロームと礫の混じった砂層状のC層に貯留して緩やかに流出する。豪雨時にはC層も飽和して,ピーク流出係数が1.0に近づく。これより,「緑のダム」である洪水防止機能は期待できないといえる。

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