脳卒中
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38 巻, 4 号
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原著
  • 高橋 若生, 祢津 静花, 湯谷 佐知子, 水間 敦士, 植杉 剛, 大貫 陽一, 瀧澤 俊也
    2016 年 38 巻 4 号 p. 219-225
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    [早期公開] 公開日: 2015/12/04
    ジャーナル フリー
    【目的】感染性心内膜炎infective endocarditis (IE)に伴う脳卒中の特徴を明らかにする目的で,IE の発症から治癒するまでの間に合併した脳卒中について検討した.【方法】IE の入院患者90 例(平均63.8±17.4 歳)を対象とし,各種臨床因子について後方視的に検討した.【結果】25 例(28%)に脳卒中(脳梗塞18 例,脳内出血5 例,くも膜下出血2 例)が認められた.脳卒中群は非脳卒中群に比し退院時modified Rankin Scale 3 以上の例が有意に多かった(52% vs 28%,P=0.046).脳梗塞は多発性の大脳皮質枝領域梗塞が多く,脳内出血は全例が多発性であった.脳梗塞はIE の病初期に発症した例が多かったが,脳出血およびくも膜下出血は多くが入院後に発症していた.【結論】IE は脳卒中の合併がまれでなく,特に脳梗塞はIE の病初期に発症する場合が多いことが明らかになった.
  • 田中 弘二, 上原 敏志, 小林 潤平, 尾原 知行, 長束 一行, 峰松 一夫, 豊田 一則
    2016 年 38 巻 4 号 p. 226-232
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    [早期公開] 公開日: 2015/12/04
    ジャーナル フリー
    一過性脳虚血発作(transient ischemic attack; TIA)で入院中に発症した虚血性脳卒中に対しrt-PA 静注療法を施行した,既報の1 例を除く4 例を分析した.男性2 例,年齢74 から89 歳,先行したTIA のABCD2 スコアは4 から6,1 例に入院時拡散強調画像で左視床内側に高信号病変を認めた.4 例中3 例が心房細動を有し,入院時ないし発症時に主幹動脈閉塞所見がみられた.TIA から虚血性脳卒中発症までの時間は2 時間から3 日で,発症時のNIH Stroke Scale スコアは7 から30,発症からrt-PA 静注療法開始までの時間はそれぞれ33,33,160,170 分であった.90 日後のmodified Rankin Scale は0 が2 例,5 が1 例,不明1 例であった.TIA は入院後早期に虚血性脳卒中を発症する危険がありrt-PA 静注療法を含む超急性期治療の適応を念頭におく必要がある.
  • 澤村 正典, 大川 剛史, 大石 渉, 丸浜 伸一朗, 中西 悦郎, 金 剛, 原田 清
    2016 年 38 巻 4 号 p. 233-238
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    [早期公開] 公開日: 2015/12/03
    ジャーナル フリー
    【目的】急性期脳梗塞の検出率の改善を目的にthin section 拡散強調画像(DWI)の有用性を評価する.【方法】急性期脳梗塞を疑った258 人に従来法(conventional DWI)に加えて,thin section DWIを撮像し比較検討する.【結果】①最終診断が急性期脳梗塞は124 例,②うちconventional DWI 陽性は112 例(90.3%),③ thin section DWI 陽性は120 例(96.7%)であり,thin section DWI の脳梗塞検出率が有意に高かった(p=0.0078).④病型分類ではthin section DWI のみ陽性群では非ラクナ梗塞と比較してラクナ梗塞が有意に多かった(p=0.0067).⑤部位別や時間別の比較では有意な差は認めなかった.【結論】thin section DWI は急性期脳梗塞の検出率に優れている.
  • 藤本 康倫, 梶川 隆一郎, 井筒 伸之, 平山 龍一, 永島 宗紀, 芳村 憲泰, 中村 洋平, 久村 英嗣, 若山 暁, 吉峰 俊樹
    2016 年 38 巻 4 号 p. 239-244
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    [早期公開] 公開日: 2015/12/03
    ジャーナル フリー
    【目的】心原性脳塞栓症における経口抗凝固薬(OAC)の選択行動について検討した.【方法】2012 年6 月から2015 年2 月までの197 名を,さらにその期間内でNOAC 3 種(ダビガトラン,リバーロキサバン[R],アピキサバン[A])から選択が可能であった2014 年3 月からの80 名を対象とした.【結果】前者対象においてワルファリン(W)群は35.0%,NOAC 群は50.8%であり,NOAC はWに比べ統計学的有意に低い重症度,腎機能良好,予後良好な患者に選択されていた.経過中9%においてNOAC からWへ切り替えられており,転院先の包括医療制度と薬価が背景にあると考えられた.後者対象においてNOAC 3 種間の比較ではR 群のNIHSS スコアはA 群と比較して統計学的有意に高値であり,R はA より重症例に選択されていた.【結論】NOAC 選択は患者の医学的背景のみならず社会経済的因子の影響も受けていた.
症例報告
  • 殿村 修一, 斎藤 こずえ, 田中 智貴, 西村 拓哉, 木下 直人, 東田 京子, 福間 一樹, 奥野 善教, 杉浦 由理, 高杉 純司, ...
    2016 年 38 巻 4 号 p. 245-250
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    [早期公開] 公開日: 2015/12/04
    ジャーナル フリー
    スタンフォードB 型大動脈解離慢性期に左椎骨動脈領域に脳梗塞を繰り返した1 例を報告する.67 歳男性,60 歳でB 型大動脈解離を発症し保存的加療中,66 歳時に左後下小脳動脈領域の脳梗塞の既往あり.突然の右上下肢麻痺を主訴に受診,神経学的に左方視時の注視方向性眼振,右顔面麻痺,構音障害,舌左偏倚,右優位の四肢麻痺,右半身の温痛覚,振動覚,位置覚の低下を認めた.頭部MRI で左小脳後下小脳動脈領域,頸髄MRI で前脊髄動脈領域の延髄左内側・上位頸髄左側に梗塞を認め,MRA で左後下小脳動脈閉塞を認めた.胸部造影CT では,左椎骨動脈は左鎖骨下動脈近位より分岐し,経食道心エコーで下行大動脈の解離腔内に高度のもやもやエコー,左鎖骨下動脈直下の解離腔入口部から左椎骨動脈方向へ流入する血流を認めた.左椎骨動脈領域のみに脳梗塞を繰り返すことから解離腔内で形成された血栓が左椎骨動脈に流入し塞栓症を起こす機序と考えた.
  • 嶋田 裕史, 久枝 恵美子, 福田 健治, 東 登志夫, 緒方 利安, 川島 博信, 松永 彰, 井上 亨
    2016 年 38 巻 4 号 p. 251-255
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    [早期公開] 公開日: 2015/12/03
    ジャーナル フリー
    症例は心房細動,高血圧症および2 型糖尿病を有する73 歳の男性.脳梗塞を発症し,左内頸動脈狭窄症の治療のために当院に転院された.頸動脈超音波検査では潰瘍を伴う低輝度病変,MRI T1 強調画像ではプラークは高信号を呈しで不安定プラークが考えられた.脳血管造影検査でNASCET 76.8%であったため,頸動脈ステント留置術(CAS)を行った.その際,ステント留置直後にin-stent plaque protrusion(ISPP)を認め,ISPP の経過観察のために複数回超音波検査を行った.造影剤を使用しない頸動脈超音波検査ではISPP の観察は困難であったが,頸部血管造影超音波検査ではISPP の部位を境界明瞭に描出し得た.CT アンギオグラフィーで同定したISPP の形態は,造影エコーのそれと類似しており,頸部血管造影超音波検査は,CAS 後のISPP の観察に有用であった.
  • 温井 孝昌, 星野 晴彦, 深谷 純子, 荒川 千晶, 足立 智英, 高木 誠, 田中 耕太郎
    2015 年 38 巻 4 号 p. 256-261
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/07/25
    [早期公開] 公開日: 2016/01/08
    ジャーナル フリー
    症例は61 歳女性.高血圧,胆石症で加療中.某年某日入浴後に構音障害,左片麻痺が出現.頭部MRI 拡散強調画像で右放線冠に高信号あり.症状は2 時間で消失し病変も消失した.脳塞栓症と考えワルファリンを開始.初回発作から30 日後,38 日後にも同様の一過性脳虚血発作(TIA)を発症しシロスタゾールを追加.その後も同様の発作が4 回ありクロピドグレル,アスピリンなどの多剤併用療法に抵抗性だったが,初回発作から3 カ月後以降,発作は消失した.最終的に軽度の左上肢麻痺が残存し,右被殻から放線冠に脳梗塞を認めた.脱髄,炎症性疾患,悪性腫瘍は否定的であり右レンズ核線条体動脈領域のbranch atheromatous disease と最終的に診断した.3 カ月にわたる長期間に,拡散強調像で可逆性の病変を伴うTIA を繰り返した特異な経過をたどった.
  • 宮原 牧子, 井上 雅人, 玉井 雄大, 大野 博康, 岡本 幸一郎, 原 徹男
    2016 年 38 巻 4 号 p. 262-266
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    [早期公開] 公開日: 2015/12/03
    ジャーナル フリー
    症例は33 歳女性,妊娠9 週3 日で突然の頭痛にてくも膜下出血を発症した.妊娠中ではあるが,産婦人科医師と連携し,遅滞なく通常通りCT,CTA,血管撮影を行った.急性水頭症を認め当初Grade5(H&K,WFNS)であったが,脳室ドレナージ施行後から意識レベルの改善を認めたため責任病変である左内頸動脈眼動脈分岐部の破裂脳動脈瘤に対し血管内治療を行った.術後経過良好で,妊娠も安定していたため中絶は行わず,第24 病日にリハビリテーションのため転院後,妊娠38週5 日で帝王切開術にて正常児を出産した.現在まで母児ともに経過は良好である.妊娠極初期の血管内治療については過去報告がなく,今回一連の治療後,良好な転帰を得たため報告する.
  • 前田 善久, 田中 俊也, 井戸 啓介, 宮園 正之, 今本 尚之, 名取 良弘, 庄野 禎久
    2016 年 38 巻 4 号 p. 267-271
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    [早期公開] 公開日: 2015/12/03
    ジャーナル フリー
    脳動静脈奇形(arteriovenous malformation; AVM)周囲の脳浮腫が,出血と時期をずらして悪化し,その後自然軽快した症例を経験した.症例は62 歳の男性で半年前に脳出血を発症し,他院で保存的加療を受けた.左下肢の麻痺・しびれを生じて当院を受診し,頭部CT では右頭頂葉の出血痕周囲に低吸収域を認めた.入院後,症状と画像所見がともに増悪した.脳血管撮影では右前大脳動脈の分枝からfeeding される1 cm 大のナイダスと,上矢状洞へ流入するdrainer を有するAVM を認めた.1 カ月後の外科治療前には自然経過で症状と画像所見がともに改善していた.さらに症状経過に一致してMRI で,AVM のdrainer が流入する皮質静脈の遠位側の描出の変化を認めた.AVM の静脈灌流のうっ滞によりAVM 周囲の浮腫が出現し,その後静脈灌流が改善し浮腫も改善したと推察した.
短報
  • 橋口 俊太, 川本 裕子, 城村 裕司, 岡田 雅仁, 田中 章景
    2016 年 38 巻 4 号 p. 272-275
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    [早期公開] 公開日: 2015/12/03
    ジャーナル フリー
    症例は41 歳男性.亜急性に進行した頭痛と行動異常が認められ緊急入院となった.入院時は,意識清明だが高揚感があり,軽度認知機能障害と項部硬直を認めた.脳MRI で硬膜が肥厚しており,上矢状静脈洞にdelta sign も認めていたため,MRV を追加したところ上矢状静脈洞と右横静脈洞が描出不良であった.肥厚性硬膜炎に脳静脈洞血栓症を合併した病態と考え,ヘパリンを併用しながら大量ステロイド療法を施行した.臨床症状が改善したため,ステロイド剤と抗凝固薬の内服に切り替え,自宅退院となった.肥厚性硬膜炎の原因として明らかなものは認められず,特発性と診断した.脳静脈洞血栓症については,凝固亢進状態を来しうる先天性もしくは後天性の素因も認めず,硬膜肥厚により二次的な静脈洞の閉塞と還流障害が生じたものと考えた.両者の合併は稀であるが,脳静脈洞血栓症の原因として肥厚性硬膜炎も鑑別に挙げておく必要がある.
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