臨床血液
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32 巻, 2 号
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第32回総会
総説講演I
  • 風間 睦美
    1991 年 32 巻 2 号 p. 103-107
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    培養ヒト臍帯静脈内皮細胞にモネンシン,トロンビン,線維芽細胞増殖因子,IL-1あるいはエンドトキシンを加えても,上清中にトロンボモジュリン(TM)の放出は認められなかったが,過酸化水素あるいはエンドトキシンで活性化した白血球を加えると,内皮細胞内のTMは減少し,上清中にTMおよび51Crが増加した。この増加はメシル酸ガベキセートあるいはSODによって抑制された。この成績からTMは内皮細胞の障害に際して遊離されると結論された。
    各種疾患での血中TMを測定すると,DICの極期には有意に増加し,改善例では低下することが認められ,またSLE, 川崎病,血管障害を伴う糖尿病でも有意の高値が認められて,これら疾患での血管障害が血中TMの増加に反映されると考えられた。一方腎不全でも血中TMの著増,尿中TMの排泄減少が認められ,循環血中よりのTMの除去に腎が関与することが想定された。
臨床研究
  • —適応病型と維持療法の検討—
    金森 平和, 丸田 壱郎, 府川 仁哉, 原野 浩, 児玉 文雄, 宮下 裕子, 松崎 道男, 野口 太平, 村田 興, 橋本 佳巳, 小川 ...
    1991 年 32 巻 2 号 p. 108-114
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    48例の急性非リンパ性白血病(ANLL)および骨髄異形成性症候群(MDS)にAra-C少量療法を行い治療効果を検討した。Ara-Cは10 mg/m2または10 mg/bodyを12時間ごとに皮下注射した。完全寛解は16例(33%), 部分寛解は6例(13%)に得られた。病型別では低形成性白血病において8例中7例に寛解が得られたが,MDSおよびそれより移行の白血病では有効でなかった。また,既治療ANLLでは20%の寛解率であった。寛解期間は3∼20カ月(中央値7カ月)で,特に自己注射にて維持療法を行った症例に寛解期間の延長がみられた。再発は13例にみられた。50%生存期間は初回治療例では有効例(CR+PR)で24.3カ月,無効例で3.3カ月,既治療例ではそれぞれ18.7カ月,5.3カ月であった。以上より高齢者ANLL特に低形成性白血病に対してAra-C少量療法は極めて有用と考えられた。また,自己注射による維持療法により寛解期間の延長が期待された。
  • —特にMRSA敗血症の増加について—
    伊藤 真美, 吉田 稔, 倉田 寛一, 今川 重彦, 星野 充明, 角田 純一, 依馬 秀夫, 角田 三郎, 鈴木 俊之, 小松 則夫, 室 ...
    1991 年 32 巻 2 号 p. 115-120
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    1978年1月より1990年8月までの間に自治医科大学における血液疾患患者に合併した黄色ブドウ球菌敗血症は31例であった。死亡率は全体で48.4% (15/31)であった。予後不良因子は高齢(p=0.015), 顆粒球数500/μl以上(p=0.015), DICの存在(p=0.011)および肺炎の合併(p=0.023)であった。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌敗血症はそのうち32.3% (10/31)を占め,1985年に第1例がみられた。統計的には有意ではないものの死亡率はメチシリン耐性群(70%)がメチシリン感受性群(38.1%)に比し高い傾向があった。メチシリン耐性黄色ブドウ球菌の薬剤感受性試験ではminocycline, chloramphenicolおよびvancomycinが良い感受性を示した。
  • 立野 佳子, 富樫 武弘, 立野 正敏, 吉木 敬
    1991 年 32 巻 2 号 p. 121-126
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    今回,われわれはHIV-1抗体陽性血友病患者16名および第8因子製剤家庭内輸注の際事故接触して感染した母親1名の17名において,HIV-1の分離を試み,分離しえたHIV-1の生物学的特性について検討した。分離方法については,症例より得た末梢血よりリンパ球を分離した後,CD8細胞をpanning法にて除去して培養に用いた。その結果HIV-1を17名中15名(87.5%)に分離しえた。分離しえなかった2名は,いずれも無症状の抗体陽性血友病患者であった。分離しえたHIV-1を用いて増殖速度,plaque形成能およびhost rangeの検討を行ったところ,AIDS症例より分離されたHIV-1は,ほかの症例に比して増殖速度は速かったが,plaque形成能はAIDS症例を含むすべての症例より分離されたHIV-1に認めなかった。host rangeについては,12例について検討し,AIDS症例および無症状の症例1例より分離されたHIV-12例がMT2 cellとprimary macrophageに感染性を示したものの,ほかの症例より分離されたHIV-1はprimary macrophageへの感染性のみで各種培養細胞株への感染性は認めなかった。また,primary macrophageへの感染性よりneurotropismの有無についても検討したが,glial cell lineへの感染性は認められなかった。以上,抗体陽性血友病患者より分離したHIV-1は,一般にcytopathic effectは低くhost rangeは狭い傾向を認め,全例にprimary macrophageへの感染性を認めた。
症例
  • 竹内 けい子, 西村 進, 古田 浩人, 里神 永一, 江川 公浩, 三家 登喜夫, 近藤 溪, 南條 輝志男, 宮村 敬, 森川 吉博, ...
    1991 年 32 巻 2 号 p. 127-131
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    65歳の男性が,発熱が続くため入院となった。赤沈は62 mm/hrと亢進し,CRPは5+と強陽性であった。LDHは1005IUと高値を示し,そのアイソザイムはII型とIII型が優位であった。腹部CTでは両側副腎の部位に大きな腫瘤を認め,骨髄穿刺検査で集落を形成する異常細胞が認められた。それらの所見より転移性の悪性腫瘍を疑ったが原発巣は明らかにできなかった。患者は経過中,一過性の意識消失発作を来たし消化管出血にて死亡した。
    解剖が行われ,顕微鏡的検索で腫瘍細胞の全身血管内の蓄積と,いくつかの臓器では腫瘍細胞の血管外増殖が認められた。パラフィン包埋固定組織の免疫組織学的検索では,腫瘍細胞はLCA, LN-1, LN-2とL26のモノクローナル抗体で陽性を示したが血管内皮細胞のマーカーであるFactor VIII抗原は陰性であった。これらの検索より腫瘍細胞は胚中心B細胞由来であることが示された。以上の結果から,本症例はAngiotrophic lymphomaの1例と考えられた。
  • 田村 周, 紺屋 浩之, 宮崎 栄二, 井上 信正, 岡本 隆弘, 武元 良整, 神前 昌敏, 金丸 昭久, 垣下 榮三, 永井 清保
    1991 年 32 巻 2 号 p. 132-136
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    症例は1985年8月に本院にてmyelodysplastic syndrome (MDS)と診断されていた29歳男性。1988年8月発熱と動悸のため本院に再入院した。著明な汎血球減少症を認めたが,いぜんMDS (refractory anemia)の状態であった。染色体で7 monosomyを認めた。尿中へモジデリン陽性,血清ハプトグロビン低値,赤血球抵抗正常,Ham test, sugar water testともに陰性,寒冷凝集素正常,Donath-Landsteiner抗体陰性,autohemolysis test陰性であることから,直接Coombs, 間接Coombsはともに陰性であるが自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の合併と診断した。プレドニゾロン50 mg/日の投与を開始後輸血回数も減少し,輸血赤血球寿命も10.4日から27日まで延長した。しかし入院13カ月後より急速にacute nonlymphocytic leukemiaへ移行し,消化管出血,脳出血をおこし死亡した。
    免疫異常を伴うMDS例は報告されているがCoombs陰性AIHAを合併している例はなく,若干の考察を加えて報告する。
  • 豊田 恭徳, 堀越 泰雄, 殿内 力, 三間屋 純一, 浜崎 豊, 谷口 清洲, 川井 進, 河 敬世, 勇村 啓子, 金子 安比古
    1991 年 32 巻 2 号 p. 137-141
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    症例は9歳男児,頚部リンパ節腫大を主訴に静岡県立こども病院に入院した。末梢血の赤血球数,血小板数は正常,白血球数は2,700/μlで芽球は認めなかった。骨髄細胞数は正常だが芽球を34%認めた。頚部リンパ節生検の結果non-Hodgkin's lymphoma (lymphoblastic type)と診断された。
    腫瘍細胞の表面マーカーはCD5, CD7, CD19, CD38, CD71, Ia抗原陽性,染色体分析では46, XY, t(7;14)(p15;q32)であった。腫瘍細胞の遺伝子解析の結果,免疫グロブリンH鎖,TcRβ, TcRγは胚芽型であったが,TcRδの再構成を認めた。
    CD7, CD19はlineageの特異性に問題があり,かつTcRδ遺伝子はリンパ球分化の極初期再構成を起こすことより,本腫瘍はリンパ球の幼弱な分化段階での腫瘍化した可能性が考えられた。
  • 岩橋 正人, 中原 勝志, 竹下 武承, 下高原 茂己, 魚住 公治, 花田 修一
    1991 年 32 巻 2 号 p. 142-146
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    1987年6月,51歳の女性がリンパ節腫脹を主訴として当科入院。リンパ節生検でmalignant lymphoma, diffuse, mixed cell type(LSG分類)。末梢血では白血球数12,400/μl異常リンパ球15%, 異常リンパ球DNA中にhuman T-cell lymphotropic virus type-I (HTLV-1) proviral DNAのmonoclonalなintegrationを認めた。これらの事よりadult T-cell leukemia (ATL)と診断した。末梢血異常リンパ球はCD4+ CD8-, 病変リンパ節細胞はCD4- CD8+の表面形質を呈した。30カ月後,末梢血異常リンパ球は増加し始め,白血球数も30,500/μlと著増した。末梢血異常リンパ球表面形質はCD3+ CD4+ CD8- OKla1+からCD3- CD4- CD8- OKla1-に変化した。本例はATL細胞表面形質の多様性を示すものと思われ報告した。
  • 友成 章, 平井 和代, 青木 秀俊, 美馬 伸章, 柏木 節子, 増田 和彦, 篠原 正幸, 小阪 昌明
    1991 年 32 巻 2 号 p. 147-151
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    50歳,女。入院5日前に発熱,食欲不振あり,肝2横指触知され,T. Bil 4.5mg/dl, GOT 2,734, GOT 3,490U/l, IgM-HA抗体陽性でA型肝炎と診断され入院。末梢血Hb 12.8g/dl, RBC 421万/μl, WBC 5,400/μl, PLT 8.7万/μl。22日後Hb 8.0g/dl, RBC 271万/μl, 網赤血球1‰に減少,WBC 4,600/μl, PLT 19.6万/μlは著変なく,クームス試験(-)。骨髄有核細胞数13.8万/μlでM/E比5.32と著明な赤芽球系低形成があり,前赤芽球7.6%, 好塩基性赤芽球5.0%と未熟な赤芽球は残存し,多染・正染性赤芽球は認めず,赤芽球系のmaturation arrestを示すPRCAと考えた。入院35日後,網赤血球と骨髄の成熟赤芽球の増加とともにHbの増加をみた。またPRCA診断時の血清はBFU-Eコロニー形成の抑制作用を示し,造血を抑制する何らかの液性因子の存在が考えられた。その後EDTA依存性偽性血小板減少症も発生。A型肝炎後にPRCAと偽性血小板減少症をきたした非常にまれな例である。
  • 藤山 文乃, 松崎 美和子, 嶋本 義範, 野口 輝夫, 倉田 好人, 黒田 康夫, 山口 雅也
    1991 年 32 巻 2 号 p. 152-155
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    Numb chin syndromeを初発としたBurkitt's type ALLの1例を報告する。57歳の男性が1989年11月14日に複視と眼瞼下垂を伴う下顎と下口唇のしびれ感のため当院に入院した。神経学的には右動眼神経麻痺および下顎,下口唇,口腔粘膜に感覚障害を認めた。血液検査所見上,白血球の上昇を認めた。骨髄は過形成で92.3%の白血病細胞で占められ,その細胞質内には空胞を認め,表面マーカーはIgM, κ型であった。染色体異常としては8; 14転座が認められた。患者は化学療法,放射線療法を施行された。患者の状態は一時的に改善したが,後日再発し,1990年3月6日死亡した。剖検にて三叉神経への白血病細胞の浸潤が認められた。
    ここにnumb chin syndromeを初発としたBurkitt's type ALLを報告し,リンパ系悪性腫瘍とその症候群について検討を加えた。
  • 時岡 剛, 嶋本 義範, 大窪 恭光, 福岡 麻美, 大串 和久, 南雲 文夫, 若山 一夫, 山口 雅也
    1991 年 32 巻 2 号 p. 156-161
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    単球系抗原およびSmIgM (κ)陽性のHCLを報告する。1987年より白血球増多を指摘されていた62歳の男性が1989年9月21日,精査目的で当科入院。肝脾触知せず。表在リンパ節を腋窩および鼠径部に触知。末梢血でWBC 12,600/μlと増加,大リンパ球様で細胞辺縁に蕾状の突起が見られ位相差顕微鏡で細胞質周辺より多数の毛髪状突起を出している大リンパ球様細胞を73%認めた。骨髄では有核細胞数13.7×104lで,末梢血同様の大リンパ球様細胞71.2%に認めた。表面形質の検索でCD11b+, CD21+, HLA-DR+, Tac-および表面IgM (κ)陽性。組織化学上,酒石酸抵抗性酸フォスファターゼ(TRAP)陰性でJapanese type HCLと診断した。
    ここに単球系抗原およびSmIgM (κ)陽性でリンパ節腫脹をきたしたHCLの1症例を報告し,若干の考察を加えた。
  • 塚田 哲也, 大野 敏之, 森田 孝一, 尾辻 啓, 関根 隆夫, 西川 政勝, 小林 透, 北 堅吉, 白川 茂, 難波 紘二
    1991 年 32 巻 2 号 p. 162-166
    発行日: 1991年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル 認証あり
    症例は20歳の男性。39°Cの発熱,全身のリンパ節腫脹と肝脾腫にて発症。リンパ節生検似因ってHE染色上T細胞性リンパ腫様の所見を呈した。VDSとPSLが投与されたが効果がなく,末梢血液中に異常なLarge granular lymphocyteの著増と著しい全身のリンパ節腫脹を来して死亡した。異常LGLは大型の細胞で比較的広い塩基性の細胞質に多くのアズール顆粒をもち,比較的大きな1ないし2個の核正小体を保有していた。膜表現型はFcγR+, CD2+, CD5-, CD7-, CD3-, CD4-, CD1-, CD8-, slg-, CD20-, CD11-, CD13-, OKIa+, CD25-, CD16+, Leu7-, Natural Killer (NK)活性+, ADCC-, TeR遺伝子の再構成が認められず,真のNK細胞由来のものと考えられた。
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