(1) 絨の耐久性を向上せんがため,媒染染色の分離作業に依る纎維強力並びに可紡性の低下を防止する一考案として低温連續媒染法に關する研究結果に就き報告せり。
(2) 低温連續媒染を施行せんとせば洗毛機と同様なる構造の染色機を使用し,羊毛纎維を移動せしめつゝ化炭後中和工程以下の諸工程を省略し化炭羊毛上に存在する硫酸を有效に利用しつゝ連續的に低温媒染浴中に送入し還元,蒸熱等の工程を施行すれば可なり。斯くして諸工程の反復に依る纎維の品質的低下を防止し得ると共に酸化傷害作用の發生,可紡性の低下等を囘避し,作業能率を著しく高め得る點を示せり。
(3) 低温連續媒染に關し種々なる實驗を施行せる結果,何れの方法を以て行ふも些細なる技術的改良に依りて一般媒染法の結果と殆んど同様なる效果を附與し得べく,殊に還元後處理を施行し均一なる蒸熱效果を附與せるものは色相均齊鮮明にして結果最も良好なるべき點を確めたり。
(4) 低温連續媒染法に依る時は高温の場合に比し媒染浴の變化は根本的に僅少にして浴の連續使用に依る媒染作用の低下著しく少なく浴の補正容易にして作業上利便大なる點を認めたり。從て標準作様に依りて一度補正量を決定する時な媒染效果を常に均齊ならしめ得る點を明かにせり。
(5) 低温連續媒染法施行の結果を綜合考察するに本加工法の工業的應用は大なる支障なく施行し得らるべく使用藥品,熱等の節減を行ひ得ると共に作業能率を著しく向上し利益多大なるものと認め得べし。
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