近年染色分野では省エネルギー 省資源,節水,環境保全などのあらゆる角度から染色工程の合理化が強く要求されているため,むら染めを生じないきわどい条件で染色時間の短縮や浴比の低減などがはかられている。1971年以来,吸尽染色における水の大部分を空気に置き換えた気泡による染色が発表されているが,気泡浴の安定性の問題や湿潤性の変動など多くの問題をかかえている
そこで著者らは,染色工程における節水および省エネルギー化,染色廃液による環境汚染の軽減,繊維布の損傷劣化の防止,染色堅ろう性の向上などを目的として,泡沫を利用した機械作用の著しく小さい,超低浴比,分離型泡沫染色装置を試作し,本報では羊毛-酸性染料系で行った各染色条件と染色性の関係並びに総括的な泡沫物性の指標として泡倍率,バルク染液の起泡性,泡安定度,泡膜中の染料濃度を取り上げ実験を行うと共に液浸型の染色との比較検討も併せて行い,次の結果を得た.
1) 本抱沫染色装置では染色時の浴比を1:3まで低下させることができ,このとき高浴比に比し高い染着量が得られた。
2) 泡沫染色の起泡剤として用いる非イオン界面活性剤としては,アルキル鎖長が長くエチレンオキサイドの付加モル数の比較的小さいものすなわちHLBの小さいものが適するが,染色時の起泡性,泡沫安定性を考慮すると曇点が染色温度よりも高いものでなければならない。
3) 泡沫染色においては,泡膜中の染料濃度がバルク液中の染料濃度に比し小さくなる傾向にあるが,染料濃度の補正により液浸型の染色とほぼ同等の染色性を得ることが可能である。
4) 酸性染料による羊毛布の泡沫染色においては,泡膜中に染料を保持する泡沫でまず布を湿潤させ,繊維の内部表面までを含めた染液繊維界面において泡膜中の染料分子を吸着させ,最終的には適正条件すなわち空気流量3
l/min,酢酸助剤濃度2.0~2.5% o. w. f.,染色温度80°C,染色時間30分間で繊維表面に吸着させた染料分子を繊維基質の内部へ均一に拡散移動させることが可能であり,効率的なしかもむらのない染色が得られる。
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