泡沫の染色系への応用は省エネルギー,節水などに直接的な効果が期待出来るとして注目されている。
本報では,染色工程における節水および省エネルギー化,染色廃液による環境汚染の軽減,繊維布の損傷劣化の防止,染色堅ろう性の向上などを目的として現状の液浸型の染色とは全く異なる泡沫(blow ratio 200~300)を利用した機械作用の著しく小さい超低浴比,加温型の泡沫染色装置を試作し,巻層法を用いた酸性染料のナイロン6フィルムへの拡散についてその吸着機構からイオン吸着(非Fick型拡散)と非イオン吸着(Fick型拡散)との寄与を分割して検討を行ない次の結果を得た。
1) 疎水性の大きい酸性染料のナイロン6フィルムへの拡散は,イオン吸着においては泡沫染色と液浸型のものとにほとんど差はみられないが,非イオン吸着にっいては泡沫染色のほうがその寄与が小さくなる。しかしながら,疎水性の小さい酸性染料の場合には染色方法による差が認められない。
2) 泡膜中に存在する染料-界面活性剤間の相互作用は,液浸型で用いるバルク液中のものと同様であり,非イオン吸着に関与する染料会合体の濃度を低下させる界面活性剤濃度の増加や染料濃度の減少にともない非イオン吸着の寄与は小さくなる。
3) 1), 2)の結果より,泡沫染色においては泡沫の有する極めて大きな気/液界面への染料分子の吸着あるいは泡沫形成時,泡沫上昇時に起こる排液現象などにともなう泡膜中の染料濃度の低下が予想される。またこの染料濃度の低下についても当然染料-界面活性剤間の相互作用が関与しており,相互作用の小さい疎水性の小さい酸性染料では泡沫染色においても液浸型と同様の染色挙動を示す。
4) なお,ナイロン6フィルムに非イオン吸着した酸性染料は,蒸留水中に容易に脱着することが実験により確かめられた。
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