前報
1)において,絹フィプロインを1, 2, 3, 4, 5%硫酸で各4hr宛90°で順次加水分解し,之等分解液に含まれるアミノ酸を分配クロマトグラフで定性した場合,その3%のフラクションは他と著しく異なり,チロジン及びアラニンを缺き,且つプタノール醋酸を展開劑としたときの
Rfがグリシンとアラニンとの中間にある顯著な班點を認めたので,絹フィブロインの稀酸による崩壊状態と對照して,この點が結晶領域と非結晶領域との境界を特長づけるものではないかと考えた。前報ではこのグリシン,アラニン間のアミノ酸は主としてグルタミン酸であろうと想像し確實な同定を保留したのであるが,その後の實驗により之がスレオニン及びグルタミン酸であることを確認した。次いで稀硫酸分解における特異現象を稀鹽酸で再現しようとしたが,稀鹽酸分解は稀硫酸の場合と可成り異なる現象を示すことを知つた。又從來フィブロインのアミノ酸組成として餘り重視されなかつたスレオニンが非結晶領域の特定のフラクションに明瞭に現れた。之等の點について報告する。
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