醋酸纎維素を分別沈澱し重合度の異る6區分に就いて,延伸による機械的性質の變化及び複屈折度を測定して次の結果を得た。
(1) 無延伸物に就いては,重合度の増加と共に強度及び伸度は上昇する。尚重合度96なる低重合物でも皮膜作成が可能であり相當な機械的性質を示す。
(2) 此の程度の重合度範圍では高重合物程高延伸倍率のものが得られ,重合度96のものは1.2倍延伸も不可能である。
(3) 各區分に就いての延伸による機械的性質及び複屈折度の變化の傾向は大體未分別物の場合と同様であるが,分別する事により延伸効果は非常に大きくなる。
(4) 切斷強度に關しては,同一延伸倍率で見ても最高強度に於ても重合度の高いもの程高く,未分別物の最高強度の2倍以上である最高61.2kg/mm
2と云うものも容易に得られる。
(5) 伸度に關しては分別によつて伸度の極大が非常に顯著に現われる樣になる。同一延伸率では概して高重合度のもの程高い伸度を示すが重合度200以上に於ては殆んど其の差は認められない。
(6) ヤング率は同一延伸倍率で比較すれば低重合度のもの程大きいが,重合度の極度に低いものではヤング率も小さい。
(7) 複屈折度に關しては同一延伸倍率では概して高重合度のもの程大きい値を示すが,同一強度のものでは低重合度のもの程大きい。
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