水に溶解したモデルアゾ分散染料(Dye1)とβ-ナフタレンスルフォン酸ホルマりン縮合物ナトリウム塩(βNSF)との相互作用を高分子電解質に対する色素の結合平衡として取り扱い,結合平衡に対する, βNSFの縮合度(
N)の影響を結合平衡の熱力学関数値から検討した。結合定数(
K)は15-40°Cで分光法で測定した。βNSFは合成品から
N=2, 3, 4, 5, 7.2, 12 (
N>9), 40(
N>9)の成分を分離して用いた。
Kの値は
N≈10迄は
Nの増加と共に急激に増加し,その後次第に頭打ちとなった。これは
ΔS°の寄与による。
ΔS°の値は
Nと共に増加し,
N=2, 3, 4では負であるが,
N=12, 40では正となった。
ΔH°は
N=2-40まですべて負であったがその絶対値は
Nと共に減少した。これより,結合反応に対するDye1とβNSFの疎水部分との間の根互作用の寄与が
Nの増加と共に増加して
ΔS°が増加すると推論された。
N=3, 12, 40の成分に対して結合反応に対する電解質添加の影響を調べた。
N=3の成分では添加電解質濃度が増加しても結合反応の熱力学関数値は殆ど変化しないが
N=12, 40では,電解質濃度が増加すると
ΔH°,
ΔS°共に減少する。特に
ΔS°は正から負に変化する。これは
N=12, 40の成分が水中で高分子電解質として挙動する特性から説明された。
電解質濃度の低いところではβNSF(
N=12, 40)の分子鎖は伸長したコンホメーションをとり, βNSFのナフタレン核はなるべく直線状に並ぼうとするので編長い形をしたDye 1と, βNSFとの間の疎水結合の形成には好都合となる。添加塩の濃度が高まると分子鎖はコンパクトなコンホメーションとなり,疎水結合の形成には不利となるので
ΔS°は減少する。
Nの大きな, βNSFではナフタレン核がなるべく直線状に並ぶコンホーメイションをとるとき結合反応に対する疎水結合の寄与が大きいと推論された
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