針布の彈性を左右する諸因子の中主として基布のもたらす影響を種々なる角度から究明せんとして現在一般に使用されてゐる針布規格製品に就て實驗を行つた。
(1) 基布上のクラウンを有する針先がある力を受けた場合撓み許りで無く基布中の移動といふことが行はれ,然も針布の彈性の中相當大きな部分を占める。
(2) 綿紡用針布に於ては基布に依つて把持されてゐるが爲の影響を示すべき針布としての針先の撓みと曲針のみを固定したときの撓みの比即ち針布/曲針の値は針金徑の大なる程,荷重10~50grの範圍では荷重の小なる程著しい。31, 32番程度の徑のものが影響が少く表はれてをり1に近い。
(3) 紡毛用針布に於ても綜合的な影響は綿紡用針布と同じであるが,紡毛用の場合は曲針のみの時より基布に依つて把持されてゐる方が撓みは小であり,針布/曲針の値は1以下で綿紡の場合に比し著しく小さい。
(4) 紡毛用針布のフエルトの效果はその基布の布面のみの場合より撓みを1/5程度に減少させる。
(5) ゴム面に布面を貼布せる基布は布枚數が少いと把持が不完全のため撓みは著しく大きいが布枚數の増加と共に急激に針布/直針の値を減ずる。全體的の厚みよりみたる場合も同様である。
(6) 基布が針の撓みを増加させる影響と減少させる影響では前者が其割合著しく大きく,綜合的には基布の薄い時には2倍半厚くなると針のみを固定した時と大體等しい値を示すものである。
終りに臨み本研究の爲試料に關し特別の便宜を與へられたる日本針布株式會社當局,並に同社石川技師に深甚の謝意を表する次第である。
抄録全体を表示