9000m/minの特定の紡速で紡出されたPETフィラメントからの小角中性子散乱を,乾燥,重水および軽水の飽和収着(30°C)の3つの相違する条件下に観測した。結果として,液相水より若干強く相互作用を受け,クラスターを形成した状態で,試料の特定部位に収着されている水(凝結水)の存在が示唆された。このクラスターの繊維軸方向の平均慣性半径は, 150~160Åであり,繊維軸に垂直方向の平均慣性半径は用いた散乱計の分解能を越え,更に大きいと予測される。一連の高速紡糸試料の水分収着実験より,収着水の一部がHenry則に従う溶解水として存在し,その収着量が試料の非晶度によく比例するという事実から,非晶領域に液相水より弱い相互作用を受け,均一に収着されている溶解水の存在を否定するものではないが,そのような均一溶解相からの中性子散乱はコントラストにおいて微弱であり,検出しがたい。この特定試料への水分収着は次のように描かれる。すなわち,蒸気圧の上昇にともない,水分は先ず非結晶にある程度まで均一に溶解され,ついで試料の特定の部位にクラスターを形成して凝結される。
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