ポリマー基質内に存在する孔内での拡散物質の立体障害を考慮に入れて導いた拡散の修正pore modelを(-SO
3-, -COO
-又は-OH基を有する)簡単な小分子物質が水膨潤したセロファンを通る拡散に対して応用した。セロファン内の水で満たされた孔内での各化合物の拡散係数
D'
p (0)を定常状態透過のデーターから,修正pore modelに基づいて求めた。この
D'
p (0)をキャピラリー法で得られたバルク水中での拡散係数
Dbと比較することにより,次のような興味ある清報が得られた。
1) HCl, KClのような小さい無機化合物の孔内での拡散はその化合物のイオン雰囲気の最大長さに関係するが,一方,比較的長い他の有機化合物の場合は染料の拡散の場合と同様に拡散分子の横断面の半径よりわずか大きい半径に関係する。
2) -COO
-を含む化合物の場合,
D'
p (0)は
Dbより一般に小さく, -SO
3-を含む化合物では
D'
p (0)は
Dbよりかなり大きくなった。この結果はカルボキシル基とスルホン酸基の水構造に対する効果の差;すなわち,前者が構造形成子であり,後者が破壊子として作用することで主に説明できる。
3) アルキルスルホン酸の場合,弱く吸着したかなりの量の拡散物質によるfluxが加わる。
4) アルコールおよびフェノール類は水中で2~3分子が会合した形で挙動するため,孔内での拡散はこのような会合体の半径に依存するようである。
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