本報に於ては各層セリゾルに就き流動異方性の研究を行ひ,前報の結果と比較檢討し,且つセリシンゾルの老化の機構を究明して,次の如き結果を得た。
(1)消光角に關しては,各層セリシンには著しい差異なく,從つてI層セリシンに於ても流れの場に於て-II及びIII層セリシンと同様に-充分配向性を示し得る程度の粒子形態を有するものであると推定した。
(2)複屈折に於ては
G/Δ
nと
Gは(
Gは速度勾配, Δ
nは複屈折)直線的關係を示したが,濃度
cと複屈折の間には硝酸纎維素溶液等に於て認められた
G/Δ
n=
k2+
k1c2G/
c3の如き關係(
k1,
k2は恒數)は之を認めなかつた。
(3)内挿法により同一濃度のゾルの複屈折を比較するに,複屈折の價はII, III及びI層セリシンの順序になり,前報の結果より豫想せらるゝ結果と一致した。
(4)未老化及び老化ゾルに就き,消光角及び複屈折と速度勾配の關係を比較して,ゾルの老化はゾル粒子の凝集によるものであり,且つこの凝集粒子は流れの場に於て崩壊するものなることを知つた。
抄録全体を表示