I渥美半島には, 1965年現在, 67haの温室があり,電照菊を主体とする花卉・蔬菜温室園芸地域を形成している.この大規模な温室園芸地域は,温室利用において地域分化をしながら発展してきた.本稿は,その地域形成と地域分化の実態を明らかにし,地域分化の要因を考察することを目的とした.
II温室は年3作を主体としていて,代表作物は電照菊(抑制栽培)・夏菊(促成栽培)・トマト・メロンの作物である.この組み合せ方(輪作)で温室利用形態を異にし,地域的特色を示している.高松型・赤羽根型・大山山麓型・伊良湖型の4地域型があり, 7地域に分化している.
IIIこの地域型を規定するのは電照菊の出荷期であって,年末出荷・1~2月出荷・3月出荷を地域別に分担してきたからである.電照菊の出荷期の地域分担は,自然的基盤に支えられて歴史的に形成されたが,その中間項として,温室園芸を複合経営として受けとめた従来の農業経営や電照菊導入以前の温室の輪作体系の差異が,これを助長した.
(1)最も冬季が温暖な大山山麓型地域が,既存のメロン温室団地から転換して,高値で安定していた3月出荷地域をまず形成したが,露地花栽培との複合経営で年2作温室型となった.
(2)次いで伊良湖型地域が形成されたが,砂質土壌に立地する促成夏菊栽培の有利性を生かして,夏菊と電照菊との組み合せから,不安定といわれる年末出荷地域を形成した.
(3)広い疏菜作畑を基盤とする赤羽根型地域は最も地域形成が遅れたが,電照菊栽培をしていた豊橋市北島地域にとってかわることによって,従来の秋メロン・抑制キウリを電照菊にかえて電照菊とメロン2作の利用型として,1~2月出荷地域を形成した.
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