地理学評論
Online ISSN : 2185-1719
Print ISSN : 0016-7444
ISSN-L : 0016-7444
36 巻, 8 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
  • 稲永 幸男
    1963 年36 巻8 号 p. 451-463
    発行日: 1963/08/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    従来,電話の対地別通話交流は,電報・郵便と共に,ある特定の都市における商圏や都市勢力圏決定の1指標として,少数の人々によつて研究されてきたにすぎなかつた.それも都市の行政区域と異なる電話交換局の加入区域を調査単位として行なわれたものであるから,厳密なる意味での都市の商圏や都市勢力圏を表現するものではなかつた.
    本論文は,これを行政区域単位に統計資料を組み替え整理をなして,通信を1指標として取扱うのでなく,通信それ自体を主体として,通信がいかなる地域に,どのような形態で発生しながら,いずれの各地域と交流して通信圏を形成しているか,そしてさらに,その通信圏形成の諸要因は何かといつた新しい理念のもとに未開拓の分野である通信地理学の立場から研究した.すなわち,電話が形成する通話圏がどのような地域構造を有しているかを,北海道に限定して,市町村ごとの各通話圏を類型化し,その各類型別の通話圏の分布とその通話圏の特徴を論じ,さらに全道における通話圏の階層配置がどのような構造になつているかを明らかにした.そして最後に,これらの通話圏の成立条件について論述したものである.
  • 千葉 徳爾
    1963 年36 巻8 号 p. 464-480
    発行日: 1963/08/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    1) 野生大形哺乳類の生態系は,人類の生態系と複合しているので,その変動を検討することによつて,人類のOekumeneの構造をとらえる手がかりとすることができると予想される.
    2) 資料として岡山藩の記録類を用いた.この藩では固定した猟区における長期の捕獲頭数記録があり,その環境となる山林の状況も比較的によく資料が整理されている.今回はそのうち猪と鹿との消長をとりあげた.
    3) 固定猟区の植生・岩石・地表状態・山地面積などを検討し,それらと猪および鹿の生態を関係づけ,その結果を基準として,岡山藩内各地の資料を時期別に検討した.
    4) 近世前期には藩が特定猟区を独占することがなく,各所で随時に狩をおこなつたが,はじめは鹿が多く猪は少なかつた.藩の森林保護政策の成果があがると共に,猪の棲息量がまして,鹿は相対的に減じた.ことに農外収益のました地域では,農業経営形態の変化が従来草地だつた手飼場の林地化傾向を進め,そこに茂みを好む猪がすみついたとみられる。
    5) 前期の終りころから,藩が特定の山林を猟区として住民の使用を禁ずるようになり,ここに猪や鹿がすみついて作物を荒すため,附近農村ではその駆除がのぞまれるようになる.これは人口の増加と耕地の拡大によつて山林が浅くなつたために,狩を行事としてつずけるためには特定猟区を限定維持する必要がおこつた結果であろう.地域全般の野獣棲息密度は低下したようである.
    6) 近世後期には,藩の狩は特定猟区にのみ限定され,その中では鹿が増加してくる.捕獲頭教の記録は精密になるが,地域全般の野獣棲息状態をうかがう資料としては,甚だ不充分なものとなつた。
  • 川崎 敏
    1963 年36 巻8 号 p. 481-498
    発行日: 1963/08/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
    1) 三大労働市場における労働力の吸引はそれぞれ個性をもつて形成されている.東京市場は関東から東北日本,大阪市場は近畿から西南目本に有力な供給圏をもち,愛知市揚は近接県と西南日本と東北日本に分散的に吸引圏を形成している.しかし,需給のアンバランスと種々な条件がからみ合つて全国的な流動を促し,複雑化した地域分割・競合地域を生じている.
    2) 原則的には距離的・交通的・歴史的・経済的関係が流動の方向を決定している.しかし,原則を破るものとして需給間の遠隔性や社会的・心理的なものや労務者の種別・性別による労働の市揚選択性などがある.
    3) 日本中央部は三大労働市場の競合地域で複雑した地域分割を行つている.東京市場と愛知市場の接触点は新潟・長野・静岡を結ぶ線であり,大阪市場と愛知市場の接触点は福井・滋賀・三重を結ぶ線で鋭く摩擦している.北陸地方は三大市場が接触し石川・福井においては大阪が優勢,新潟・富山においては東京が優勢である.この地域区分を決定したものは原則的に距離と交通関係が根本的であり,これが歴史的伝統をつくつて需給問に縁故関係を生じ,社会的心理的なものと需要地における吸引内容が流動方向を決定している.最近この地域に工業化の顕著な県ができ,三大労働市場に影響を与えつつある.特に愛知市場の打撃が最大である.
    4) 流出の高低は第一次産業人口の多少とほぼ一致するが,その地域の第一次産業構造の差異によつて更に軽重を呈する.地域の賃金格差はその地域の所得格差とほぼ一致するもので,不可測であるがその地域の貧困性が流動のメカニズムを形成し,低きか高きに流れるという流動形態をとつている.
    5) 本文はこれ等の流動現象を地域的に調べてみた.
  • 1963 年36 巻8 号 p. 499-518_1
    発行日: 1963/08/01
    公開日: 2008/12/24
    ジャーナル フリー
feedback
Top