丹波高地東部の由良川中流域に生じた廃村3例をとりあげ,それらの比較研究によって,廃村化の過程と機構を解明しようと試みた.
ここは,太平洋・日本海両斜面を流れる諸河川の源流域とは対照的に,近距離指向離村の性格が著しく,集団離村もその一環として実現したものと考えられる. 3廃村についてみれば,それらの立地環境,とくに隔絶性の強弱が廃村化に重要な影響を及ぼしたことが判明した.すなわち隔絶性が強ければ,生活利便指向性の上層先行型近距離離村が生じ,耕地保留離村が多いために耕地が荒廃しやすく,それによって廃村化が促進される.これに対し,隔絶性が弱ければ,経済指向性の下層先行型遠距離離村が生じ,集落はさほど動揺しないけれども,他面では村外者の耕地所有率が高くなりがちである.このような傾向が強まった場合は,経済変動による一斉的な耕地放棄が生じて,廃村化を促す.そしてこれらの荒廃過程は,集落形態や所有耕地の分布形態と密接に関わりあっており,また,各村落のコミュニティ形態との間にも強い関連性が認められる.
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