本研究は,工業の地域的作用について,主として雇用関係の面から,四日市市を事例として考察したものである.
第2次世界大戦後,外来の大工場とりわけ石油化学コンビナートによって労働市場を圧迫された地元の中小工場は,労働力確保のため,郊外の農家労働と雇用関係を結ぶようになり,工業地域の拡大が行なわれた.しかし,農家の完全な脱農化は進まなかった.工業と農家との間の雇用関係をみると,経営耕地面積の比較的大きい農家では大工場へ勤めるものもみられるが,小さい農家ではほとんどが中小工場へ勤めるのみで,夫婦共かせぎ世帯も多い.
一方,賃労働者は,まず,地元出身者と他からの転入者とに区別される.一般的に,地元出身者は中小工場へ,転入者は大工場へ勤める傾向を示している.そして,親が中小工場へ勤める世帯の子供は,親と同様に中小工場へ勤めることが多く,親が大工場へ勤める世帯の子供は,大工場や市外の工場へ勤めることが多い.
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