自然に投影された人間活動の姿を,地理学的地形学と景観変遷史的立場の両方法を使って解明していった.
とりあげられた盆地は丹波山地に囲まれた福知山・綾部盆地,柏原盆地,篠山盆地と,奥越地方の大野盆地,勝山盆地である.
盆地内の地形は洪積丘陵,扇状地,緩扇状地性低地,河岸段丘 (I, II, III), 支流谷底平野,堆積地形間谷底平野,段丘間の氾濫原,うずめ残しの氾濫原,自然堤防などの地形によって構成されている.しかしながら盆地の地形を詳しくみると,そこには堆積相が主体となっている盆地と,堆積相をカットして流れる河川によって侵食相が形成されている二つのタイプがある.
盆地における地形の相違は,古代の生産基盤である条里型土地割の分布形態に多様性を与えている.非侵食相である氾濫原に条里の分布する柏原盆地.堆積相の発達が著しい大野盆地ではうずめ残しの氾濫原に条里地割がみられる.篠山盆地では河岸段丘に広汎に残る.勝山盆地の条里もこの上にある.福知山盆地の条里型土地割は,自然堤防に保護されたうずめ残しの地形にみられた.また小さな谷底平野では条里地割は河川の流れに従っている.
この地形と条里の研究は,条里開発に続く荘園開発を考えた場合の手がかりとなる.たとえば,篠山盆地の場合は条里の施行されなかった大山川流域の樹枝状谷に東寺領丹波国大山荘が位置する.
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