那珂川は茨城県那珂湊市付近で太平洋にそそいでいる.この河川の流域とその周辺には洪積台地の発達がよい.筆者は,とくにこれらの台地をおおつている関東ローム層の層序に注目し,那珂川流域の洪積世:地形面の対比を行ない,地形発達史を明らかにしようと試みて,次のような結果を得た.
(1) 那珂川流域の地形面は古V・ものより丘陵 (DlII), 上位段丘 (DuIA), の,中位段丘 (DuIb), 下位段丘 (DuII), 後ローム段丘および現河床氾濫原(有)に分けられる.
(2) 丘陵は,鬼怒川地溝内に発達する喜連川丘陵と,茨城県側,鷲子・鶏足山地周縁に発達する友部・所貫丘稜に分けられ,それぞれの丘陵を構成する堆積物は,その堆積環境・堆積区を異にする.
(3) 那珂川の流路が,鷲子・鶏足山地間に発達する第三系山地を切つて,東へ流れるようになつた時期は,丘陵形成後,上位段丘形成前である.
(4) 那須野が原扇状地を構成する地形面は, 3群に分けられ,それぞれ,上位段丘,中位段丘,下位農丘に対比される.これらの3群の地形面は,扇頂部では,新しい面がより古い面をおおつて発達する関係にあり,扇端部では,反対に,新しい面はより古い面を切つて発達している.
(5) 水戸付近においては,上位段丘は,那珂・東茨城台地(海岸平野)に相当し,中・下位段丘は,上市段丘と御前山段丘に相当する.上位段丘形成時め旧汀線の高度は約55mである.東茨城台地においては,局部的ではあるが,台:地面は海抜45m付近で2分されている.中位段丘は,水戸付近では,上位段丘を切つて発達している.一方,下位段丘は,現河口上流約20km付近で,沖積面下に没してしまう.
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