日本における自動車工業は,生産量も大きく,形成も古く,製品構成も多岐にわたる京浜と中京の2大産地が地域的生産体系の中核をなし,小産地に対し,高い機能上の地位を有している.とくに京浜は城南を集中地区とするわが国最大の生産地域である.近年,大規模化した完成品,または部品工場が周辺部へ分散し,城南地区の主導的地位を弱めているが,集中地区の技術集積は,完成車メーカーを頂点とし,下請関係で結ぼれた生産体系のCommon Rootsをなし,それが果たす役割は重大である.中京は豊田,名古屋の2集中地区から成るが,まず,前者は巨大完成車メーカーを中心とする単一工業都市であり,主導力は大きいがCommon Rootsに欠け,後者のそれも京浜にくらべるとはるかに小さく,これが中京の全国的体系の核としての地位を低いものにしている.この技術集積をもつ集中地区をベースとする地域的生産体系の存在は自動車のみならず,機械工業の基本的性格と考えられる.
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