段丘崖の斜面発達について, Hiranoのモデル(1975)のうち次の式(2)を基礎方程式として採用し,その正当性を実測値から検証した.
従順化係数
aの計算・算出法は平野(1969など)によって原理が述べられているが,ここでは次のような簡便法・迅速法によった.(イ)解析解による方法では,式 (2) の解である式 (5) の値を正規分布表から求め,実測値との残差平方和が最小となるような(最小自乗法)
aを求めた.なお経過時間
tは崖下の段丘面の時代から与えられる(野上, 1977).
(ロ)正規確率紙による方法では実測断面形をプロットし,標準偏差σを読みとると式(7)から
aの値が求められる.
a=σ
2/2t (7)
この方法は原点x=0における勾配のみを用いる方法よりは迅速性に欠けるが,実用上十分な精度が得られる.
解析解による方法で求めた十勝平野の扇状地礫層の従順化係数aは崖高13.4~50.7mの範囲の16サンプルで,平均5.9×10
-3(m
2/yr),標準偏差1.5×10
-3(m
2/yr)であった.これらのサンプル断面形については理論断面形への適合性がきわめて良好であり,式 (2) によって表わされるモデルが妥当であることを示している.なお適合性が悪くなる原因について若干の考察を行なった.すなわち,モデルで想定しているものと異なるタイプのプロセスである滑落がみられる場合には,確実に適合性が悪化する.時間の経過と共に適合性が次第に悪化するのは凹斜面部の占める割合が増加することと対応している.また従順化係数
aの値が初期条件としての崖高
u0に依存するという傾向がみられる.これらの事実は,式 (2) によって表わされる斜面発達モデルの有効性を検討する際に重要な意味を持つが,その解決は将来の問題として残された.
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