本研究は,従来研究の遅れていた西南日本内帯における第四紀後期に発達した段丘面の区分と対比について検討するため,播磨灘北東岸をサンプルフィールドとしてとりあげ,そこに発達する海成および河成段丘について論じたものである.
本研究で得られた知見は,以下のようにまとめられる. (1) 本地域には,上位より明美I面,山手台面,金ヶ崎面,魚住面,西八木面,および舞子面の6面の海成面,明美H面,伊川谷面の2面の河成面が分布する(第6図).そのうち,舞子面を除く各海成面はそれぞれ10m程度の堆積物をもち,異なる海水準で発達したことを示す.このため,各海成面は第四紀後期の各高海水準期に発達したと判断できる. (2) 明美I面は,段丘構成層中に挾在する火山灰層の年代より,約17万年前頃の亜間氷期的高海水準期に発達した(第14図).山手台面,金ヶ崎面,魚住面,西八木面は,段丘構成層の性格・層相,本地域における地形発達の順序から,上位より約12万年前頃の最終間氷期,およびそれに続く後期更新世の亜間氷期的高海水準期に発達したと判断できる.舞子面は,その発達形態および分布高度から,完新世の海成面と予想できる. (3) 明美II面は,その扇状地的形態,および17万年前頃以降, 12万年前頃以前には発達していたことから, Riss氷期の低海水準期に向かう海退期に発達したと判断できる(第6図,第9図).伊川谷面は,
14C年代より約1万年前の河成面である.
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