昨今の公共投資においては, 資源配分の政策判断基準となり得る有効かつ簡便な指標の提示が求められている. 一方, 財政学に端を発するADD指標は理論的に優れ, その近似値は複雑な均衡計算を回避し得る簡便さを有する. しかし, ADD近似値の計測精度およびその実証的有効性は完全に明らかではない.
本研究では, まず, 第1に, 二地域一般均衡モデルを構築し, 人口移動を考慮した場合のADD指標およびADD近似値の導出を行う. 第2に, 実証分析として, 我が国の交通関連社会資本に関する投資政策の社会厚生損失をADD指標およびADD近似値を用いて計測する. さらに, 第3に, パラメータの感度分析を行うことによりADD近似値の有効範囲とその限界を定量的に明らかにする.
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