土木学会論文集
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2001 巻, 691 号
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  • 宝 馨, 端野 典平, 中尾 忠彦
    2001 年 2001 巻 691 号 p. 1-11
    発行日: 2001/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究では, レーダー雨量を用いてDAD (Depth-Area-Duration) 解析を行い, 可能最大降雨 (PMP) を推定する方法を提案する. まず, 那珂川流域を覆う2つのレーダー雨量計で得られた雨量データを, 45個の地上雨量計を用いて補正する. レーダー雨量計により, 地上雨量計が捕らえられなかった局所的豪雨を検知し得ることが示された. 空間的に分布した雨量データを用いてDA関係を求める新しい方法として, 面積固定法と雨量固定法を考え, 両者によって得られるDAD式の違いを検討している. DAD式 (最適な包絡線) を客観的に求める非線形最適化アルゴリズムを開発し, 日本全国及び那珂川流域の最大豪雨記録に適用した.
  • 大石 哲, 舛田 直樹, 池淵 周一
    2001 年 2001 巻 691 号 p. 13-23
    発行日: 2001/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    洪水制御において迅速かつ確実な意思決定を行なうためには, 短時間降雨予測手法や洪水制御支援手法による支援情報が不可欠である. 一方, 定量的な短時間降雨予測では, 計算時間と情報量が膨大なため, 対流現象を中心とするメソスケールで生起する豪雨の実時間予測を行なうことは困難である. そこで, 情報工学的推論手法を用いて洪水制御を必要とするような強降雨の分布・停滞を定性的に予測する手法を開発し, 実時間洪水制御支援に必要とされる6時間程度先までの予測を行なうとともに, 予測の完全自動化を実現して, 実際の河川管理現場への適用に供する実用的なシステムの開発を行なう. さらに, 本手法の実流域への適用例を示す.
  • 中山 恵介, 伊藤 哲, 藤田 睦博, 斎藤 大作
    2001 年 2001 巻 691 号 p. 25-41
    発行日: 2001/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    近年の計算機の発達により物理過程の考慮された河川流出解析が可能になりつつある. 河川流域における水分の移動過程は河道流とともに土中における浸透流や地下水など, 複雑な形で構成されており, それぞれの流れは別々の水理学的挙動をもつ. 山地流域を対象とした本研究では, 浸透部に不飽和浸透流, 表面部に河道流および斜面流を用い, 全流域を長方形グリッドで覆うことで差分法による空間的な計算を行う流出モデルを構築した. また長期解析, 通年の解析を可能にするため熱収支方程式を用いた融雪水量推定モデルを構築した. 流出再現計算を夏期および融雪期に関しそれぞれ行い, いずれも長期間の計算にもかかわらず良い再現性が得られた.
  • 市川 温, 村上 将道, 立川 康人, 椎葉 充晴
    2001 年 2001 巻 691 号 p. 43-52
    発行日: 2001/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    雨水が集まりながら流下していく過程だけではなく, 逆に雨水が広がりながら流下していく過程も表現することのできる新たな地形数理表現形式を基礎として, 流域流出系シミュレーションシステムを開発する. はじめに, シミュレーションシステムの基礎となる地形数理表現形式の概要を説明する. つぎに, 本シミュレーションシステムの詳細について述べる. とくに, 斜面の長さや勾配, 接続関係, 流出計算順序など, 流出計算で必要となる情報を数値地形モデルから算出するプロセスと, 表面流・中間流統合型 kinematic wave モデルを用いて山腹斜面からの流出量を計算するプロセスについて詳しく説明する. 最後に, 本シミュレーションシステムを実際の流域に適用した結果を示す.
  • 大西 外明, 江原 昌彦, 森 竜馬, 瀬間 浩二
    2001 年 2001 巻 691 号 p. 53-62
    発行日: 2001/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    液化天然ガスLNG等を貯蔵する岩盤内水封式地下タンクの気密性保持のために要する地下永圧を評価する際に問題となる岩盤亀裂と気泡のスケールが大密性保持条件に及ぼす影響や気泡に働く抗力等については, 充分に解明されていないのが現状と考えられる. 本研究では, 岩盤亀裂を平行スリットよりモデル化した上で, 間隔δが100μm~900μmのスリット内の水流と気泡の挙動を実験と解析によって検討した. その結果, 気泡の浮上速度vaと抗力をスリット間隙と気泡のスケールの関数として表す実験式を導いた. また, 気密性保持に要する条件は, 亀裂内水流のレイノルズ数Reが5<Re<100の領域では気泡と亀裂のスケールに依存するが, Re<1のときには, これらのスケールに無関係となることを示した.
  • 禰津 家久, 牛島 省, 山上 路生
    2001 年 2001 巻 691 号 p. 63-72
    発行日: 2001/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    水深変化を有する非定常開水路乱流を対象に低レイノルズ数型k-εモデルとVOF法を用いて数値計算を行った. その結果, 従来実験で指摘されている非定常開水路乱流の特性, すなわち主流速分布の自由表面近傍での wake や無次元乱れ強度およびレイノルズ応力分布の普遍特性を再現することができた.
    さらに, 非定常開水路流では底面近傍でエネルギー発生率と散逸率の大小関係が定常時に比べて逆転することや乱れのピークが主流速のピークと水深のピーク時刻の間に出現することが本計算によって予測された.
  • 牛島 省, 禰津 家久, 山上 路生, 坂根 由季子
    2001 年 2001 巻 691 号 p. 73-83
    発行日: 2001/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    離散化された変数の局所的な分布を5次スプライン関数により4階微分まで連続な関数として表現し, 基礎方程式中の移流項をその微分量から計算する計算手法 (QSI法) を提案した. このQSI法を1次元および2次元の移流問題に適用し, QSI法の有効性を確認した. さらに, 実際の流体計算へ適用するため, collocated 格子上における安定な計算手法にQSI法を導入した. 2次元キャビティ流れの解析を行った結果, 5次風上差分に見られる staggered 格子から collocated 格子への移行に伴う精度の低下がQSI法には見られず, QSI法では逆に精度が向上するという傾向が確認された. これより, QSI法は staggered 格子上において5次風上差分より高精度であるだけでなく, 特に collocated 格子において同手法より有効性が高いことが示された.
  • 関根 正人
    2001 年 2001 巻 691 号 p. 85-92
    発行日: 2001/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    砂漣や砂堆として知られている河床上に形成される微地形の形成機構について, その従来研究を振り返ると, その多くが安定・不安定解析に代表されるような保存則に基づく解析であり, 個々の土砂粒子の移動特性を陽に反映させた解析はほとんどなされていない. 本研究では, これまで著者らが開発してきた土砂運動の解析モデル (いわゆる Saltation Model) を基礎として, これに流れ場の予測モデルを加えることで, 新たな数値シミュレーションモデルを構築している. これは, 個々の土砂粒子が河床から離脱すれば浸食が, その粒子が新たな位置に停止すればその位置に堆積が, それぞれ一粒径分だけ生じる, という河床変動の基礎的過程を忠実に反映したものであり, この集積として河床上微地形が形成・発達していく過程を数値模擬しようとするものである. 本研究はこのような試みの第一歩となるものであり, これにより河床上の微小な凹凸が砂堆規模の河床波へと発達していく過程を再現することができ, こうした河床波形成のメカニズムに関する有益な知見が得られたと考える.
  • 内田 龍彦, 福岡 捷二, 福島 琢二, 田中 正敏
    2001 年 2001 巻 691 号 p. 93-103
    発行日: 2001/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    自然界において水没大型粗度を有する流れは数多く見られる. このような流れの理解, 特に大型粗度を有する構造物の設計のためには, これらの流れおよび流水抵抗を十分理解し, これらを精度よく見積もることが可能な数値解析モデルが必要である. 本研究では, 水没粗度に作用する抗力を直接計測し, その評価法を明らかにしている. そして, 一般曲線座標系における二次元浅水流方程式を用い水没粗度群のある流れ場の計算法を提案し, 実験値と比較している. 二次元解析の応用として, 粗度群最下流にある粗度要素が破壊されやすい機構を明らかにし, 構造物下流に設置される粗度群最下流部の被害軽減対策を検討している. 最後に, このモデルが水没・非水没粗度のある流れや水没・非水没家屋のある氾濫流に対しても適用可能であることを示している.
  • 前野 詩朗, Waldemar MAGDA
    2001 年 2001 巻 691 号 p. 105-120
    発行日: 2001/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究は, 変動水圧場における海底埋設パイプラインの動的挙動を実験的かつ理論的に明らかにするものである. 変動水圧場において海底埋設パイプラインに作用する変動流体力およびパイプラインの浮上特性を変動水圧特性や地盤特性を考慮した実験により明らかにした. また, パイプラインの浮上限界を予測するためにパイプラインの静的浮上抵抗力を実験的に求めるとともに, パイプラインの浮上過程や浮上時のパイプライン周辺砂層の状況を明らかにした. これらの結果を用いて, パイプラインの浮上ポテンシャルを検討した結果, パイプラインの浮上の有無を予測することが可能であることが示された.
  • 梶村 徹, 佐藤 愼司, 中村 匡伸, 磯部 雅彦, 藤田 龍
    2001 年 2001 巻 691 号 p. 121-132
    発行日: 2001/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    近年海岸侵食が進んでいる福島県いわき市の勿来海岸と同海岸に流入する鮫川で構成される流砂系において, 流砂系の土砂動態と長期的な海浜変形機構を解明することを目的として現地調査を実施した. 流砂系の土砂量変化を解析した結果, 海岸侵食量とダム堆砂量が同程度であり, さらに河口付近での土砂採取が河口周辺の汀線後退に影響していることが示された. さらに海岸堆積物の鉱物組成分析から, 漂砂系内および隣接流砂系における土砂移動実態が推定された.
  • 後藤 仁志, 原田 英治, 酒井 哲郎
    2001 年 2001 巻 691 号 p. 133-142
    発行日: 2001/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    海浜変形過程では底質粒度の役割が極めて重要であるが, 従来の漂砂の力学モデルでは均一粒径を主対象としており, 粒度分布を有した混合砂から成る移動床現象については必ずしも十分な検討が成されているとは言い難い. シートフロー漂砂では砂粒子が近接した状況で流送されるので, 砂粒子間相互作用が重要となる. 本稿では, 先ず, 混合粒径シートフロー漂砂の鉛直分級過程について, 振動流装置を使用した水理実験を実施する. さらに, 砂粒子レベルの物理機構を考察するため, 粒子間相互作用の記述が可能な粒状体モデル (個別要素法) を用いた数値シミュレーションを実施して, 実験結果と比較しつつ, 混合粒径漂砂の鉛直分級過程の内部機構を検討する.
  • 川西 澄, 水野 博史, 高杉 由夫, 内田 卓志
    2001 年 2001 巻 691 号 p. 143-151
    発行日: 2001/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    周波数1.5MHzの超音波ドップラー分布計 (ADP) を用いて, 広島湾北部域における音響散乱体と流速の変動特性を観測した. 水平流速の変動は半日周潮に支配されているにもかかわらず, ADPの後方散乱エネルギー (ABSE) には1日周期の変動が明瞭にみられる. 表層のABSEが夜間に増加することから, ABSEの日周期変動は動物プランクトンによって引き起こされていると考えられる. 底層のABSEは, 懸濁粒子重量濃度と高い相関を示すとともに, その時間変動は, 散乱光式濁度計で測定された濁度の変動と良く一致している. 底層では, ABSEの最大は大潮の満潮時に起こり, さらに, ABSEのトレンドは潮差と同じ2週間周期の変動を示す. このトレンドは絶対流速と残差流により良好に説明される.
  • 河村 明, 江口 聡一郎, 神野 健二
    2001 年 2001 巻 691 号 p. 153-158
    発行日: 2001/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    これまで, エルニーニョ・ラニーニャ現象の指標となる南方振動指数 (SOI) と日本のような中緯度における水文気象要素との相関関係は明瞭とはなっていない. 本論文では, 渇水リスクの高い福岡市における110年間の月降水量データを正規変換の後規準化し, それに対応するSOIとの相関関係を解析している. その結果, 全時系列を対象とした場合の相関はほとんどゼロであるが, SOIデータをその大きさによりカテゴリーに分類し, そのカテゴリー別に相関関数を解析すると, 強いエルニーニョ・強いラニーニャのカテゴリーにおいて, ある特定の遅れ時間に対し, 有意性の高い相関を検出できることが分かった. そして, これらの現象に関連した福岡市月降水量の傾向が見出された.
  • 後藤 仁志, 原田 英治, 酒井 哲郎
    2001 年 2001 巻 691 号 p. 159-164
    発行日: 2001/11/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    移動床では砂粒子が接触・相互作用を繰り返しながら流送されるから, 砂粒子レベルの微視的視点から流砂力学を構築するには, 砂粒子間相互作用の記述が極めて重要である. 砂粒子間相互作用のモデルとしては, 現時点では個別要素法が唯一の選択肢であるが, その適用にあたってはモデル定数の適切かつ合理的な選択が課題である. 本稿では, 計算時間間隔を与えて, 計算結果の安定性と収束性に優れたモデル定数群を逆算する簡便な決定法を示し, 計算された流砂量と既往の実験結果との一致の観点から, モデル定数を最適化する.
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