土木学会論文集
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2002 巻, 722 号
選択された号の論文の32件中1~32を表示しています
  • 田中 洋行, 北誥 昌樹, 土田 孝
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 1-12
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    東京国際 (羽田) 空港沖合展開事業は, 羽田沖に建設された土砂処分場に空港の施設を移転するものである. 当地区は東京湾の航路浚渫で発生した土砂で埋め立てられた超軟弱地盤である. 滑走路などの空港施設では許容される沈下量は非常に厳しいため, 大規模な地盤改良を実施した. 地盤工法の選定は地盤条件と施設の種類によって行われた. また, 空港は他の土木構造物と異なり, 広範囲な二次元的な広がりを持つ滑走路やエプロンなどの施設を有する. これらの構造物の設計は, 地盤定数のばらつきを確率論によって考慮したシミュレーションによって行った.
  • 宇野 晴彦, 田坂 嘉章, 石田 毅, 水田 義明, 工藤 奎吾
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 13-24
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本論文は, 地下深部に建設された揚水発電所における地下空洞掘削時の各種計測挙動を分析し, まず, 空洞掘削に伴う周辺岩盤のゆるみ領域を塑性領域と非塑性領域に区分して定義した. そして, 各種岩盤挙動計測結果からゆるみ領域および塑性領域を評価する方法を提案し, 実際の大規模地下空洞掘削時の着目測線における各種岩盤挙動計測結果の分析により, 塑性領域の評価方法の妥当性について論じた. さらに, 空洞掘削時の周辺岩盤の実挙動および提案した評価手法によるゆるみ領域に基づき, 岩盤の材料特性を変化させた解析結果の比較検討により岩盤挙動を表現し得る岩盤の力学特性について論じた.
  • 永嶋 洋政, 棚橋 由彦, 平井 貴雄, 西村 淳, 安原 一哉
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 25-36
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    近年, 補強材としてジオグリッド以上の高剛性・高強度を有する織布を不織布で挟んだ構造の排水・引張り補強両機能を有するジオコンポジットが開発された. しかし, ジオコンポジットを用いた補強盛土工法に対する研究は緒についたばかりで, 未解明な部分が多い. 粘性土盛土を構築する場合, 排水材の他に引張り補強材を併用する場合が多い. しかしながら, 排水・引張り補強両機能の効果について, それぞれを明確に評価することが困難なため, 盛上の安定性に寄与する排水機能については設計上十分考慮されていないのが現伏である. 本研究は, ジオコンポジットのもつ排水・引張り補強両機能を考慮した補強盛土の新たな設計法の提案に資するため, 補強盛土模型実験を行ったものである.
  • 宇佐見 貞彦, 今泉 繁良, 葛巻 賢二
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 37-48
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    廃棄物の最終処分場に遮水材として敷設されている遮水シートは, 基盤の不等沈下に伴って変形し, 引張ひずみが生じる. 本論文では, 上載圧, 下部保護砂層の厚さ及び遮水シートの種類を変えた落とし戸模型実験を行い, これらが沈下形状と遮水シートに発生するひずみ分布に与える影響について把握し, 修正 Trough モデルで仮定された下部保護砂層のせん断破壊面の傾斜角を確認した. 次に, アーチ効果により沈下部直上の遮水シートに作用する土圧の低減現象が生じていることを確認した. そして, このアーチ効果と遮水シートの応力-ひずみ曲線の非線形性も勘案した非線形修正弾性モデルを提案し, 遮水シートに生じる軸ひずみを計算してその精度を検証した. さらに, このモデルに基づき最終処分場に敷設する遮水シートの許容局所沈下量を提案した.
  • 佐藤 豊, 小西 真治, 杉本 光隆, Aphichat SRAMOON
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 49-58
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    これまで, 二次元の平面ひずみFEM解析によってシールドトンネルの通過による周辺地盤の変位挙動を評価する場合には, トンネル掘削の影響として, 掘削面に応力境界を導入して地盤の変位を求めるのが一般的であった. 本研究では, 硬質地盤におけるシールドトンネルの近接施工問題に対して, シールド掘進中に生ずる掘削面の変位を基にした地盤変位予測手法を提案するとともに, 同手法による二次元, 三次元FEM解析結果と現場計測データとを比較することにより, その妥当性を検討した. この結果, 提案する手法は曲線部における非対称な地盤変位挙動をシミュレートできること, 既存の解析手法より提案する解析手法の方が実際の地盤変位挙動をより高い精度でシミュレートできることが明らかとなった.
  • 矢野 隆夫, 青木 一男, 大西 有三, 大津 宏康, 西山 哲, 水田 潤一
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 59-73
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    岩盤の力学的挙動は, 断層・破砕帯・亀裂等の不連続面のすべり破壊に支配されることが知られている. そして, その不連続面の強度特性を推定する方法として, Barton, Patton の研究に代表されるように, 不連続面自体の凹凸という幾何学的特性の影響に着目した岩盤不連続面の強度推定式が提案されてきた. しかし, これらの提案式の多くは, 定量的に幾何学的特性を反映したものではないという問題点を内蔵している. このような観点から, 本研究では様々な凹凸を有する供試体を対象とした垂直応力一定一面せん断試験結果での強度特性を, その面の粗さを表すために導入した統計的なパラメータと関連付けることにより, 表面形状を考慮したせん断強度式を提案するものである.
  • 西形 達明, 西田 一彦, 西川 隆晴, 蚊野 照久
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 75-83
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    廃棄物最終処分場におけるジオメンブレンライナーのクリープ特性は, 重要な力学的特性の1つである. 本研究では厚さの異なる3種類の高密度ポリエチレン (HDPE) 製のジオメンブレンシートを試料として, 処分場基礎地盤の局部的な沈下にともなうクリープ特性について検討を加えた. また, これらのクリープ特性に対して, 土のクリープ式を適用することによって, 長期間にわたるクリープ変形の定式化を行うことを試みた. さらに, 実験より得られたクリープ特性の適用方法として, クリープの影響を考慮したジオメンブレンの引張り強度の低減率を提示1することにする.
  • 吉本 憲正, 兵動 正幸, 藤井 照久, 山本 陽一, 伊東 周作
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 85-96
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    2000年鳥取県西部地震では埋立地において液状化被害が多数みられた. 特に美保湾側の埋立地でみられた噴砂のほとんどが細粒土であったことが, 今回の地震による液状化被害を特徴付けた. 本研究では, 液状化地点より噴砂を採取すると共に, 細粒土が液状化を起こした竹内工業団地と昭和町岸壁付近において, ボーリング調査および不撹乱試料の採取を行った. これらの採取試料を用いて, 噴砂と不撹乱試料の物理特性および液状化強度を比較することにより地中の液状化層を同定した. さらに, 現行の示方書により液状化強度の検討を行い, 現行の細粒分の取り扱いに対する問題点を指摘するとともに, 細粒分の混入する土に対する液状化の評価に塑性指数や粘土分含有率の導入の必要性があることを強調した.
  • 木村 亮, 牧野 洋志, 大川 賢紀, 亀井 宏之, 張 鋒
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 97-107
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    ジャケット式鋼管杭基礎は, 従来基礎のフーチングをジャケット構造に置き換え, 基礎と上部構造の一体化により, 杭基礎の負担を軽減できる合理的な構造形式である. さらに, 斜杭を適切に配置することにより, 水平抵抗力と剛性を効率良く増強できる. 本論文では, 斜杭を有する群杭の水平支持性能および終局挙動を把握するため, 遠心載荷装置を用いた群杭の水平載荷試験および正負交番水平載荷試験を行い, その力学挙動を詳細に調査した. また, 3次元弾塑性有限要素解析コードGPILE-3Dにより, 斜杭の角度や杭間隔が群杭の支持力特性に与える影響を解析的に評価した.
  • 佐藤 忠信, 文 龍, 渦岡 良介
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 109-119
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    砂地盤の液状化・流動現象は砂の固体・液体間の相変化過程を含んだ現象と考えることができる. すなわち, 液状化が発生する前段階までは固体的な挙動を, 完全液状化以降は流体的な挙動を示すようになり, 流動現象が発生する. また, 過剰間隙水圧の消散やダイレイタンシー現象によって砂地盤の流動化現象が終息し, 再び固体的な挙動を示すようになる. 本研究ではこのような砂地盤の液状化・流動過程における相変化現象を解析するために, 新しく提案した流弾塑性モデルを用いて, 強制傾斜土槽を用いた振動台実験を対象とし, モデルの有効性を検討した. 特に液状化した後の流動過程の流動速度と水平変位に着目し, 解析を行った結果, 流弾塑性モデルの解析結果が弾塑性モデルの解析結果より, 実験結果をよく表現した.
  • 北誥 昌樹, 中村 健
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 121-127
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    深度方向に強度が増加する地盤の鉛直支持力を実験と特性曲線法による数値解析より検討した. 遠心模型実験は基礎幅, 根入れ深さを種々に変化させた条件で行った. 実験の結果, 極限支持力は根入れ基礎幅比とともに直線的に増加すること, 極限支持力発現後の鉛直荷重と基礎底面の深さとの関係は載荷前の根入れ深さと関係なく1本の線上にのることが確認された. 一方, 数値解析で得た基礎底面での支持力係数は基礎幅B, 地盤のせん断強度CDfとその深度方向増加率kによる指標kB/CDfが大きいほど大きく, 根入れの影響は根入れ分の自重応力に相当することが分かった. 支持力の計算値と実験値は近い値を示し, 基礎底面での反力分布も実験と計算がほぼ一致することが確認された.
  • 沼田 淳紀, 森 伸一郎
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 129-147
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    液状化によって生じた噴砂は, その発生原理から液状化した土層の情報を多く保持し, しかも, 採取が容易であるので数多くの試料の分析が可能であり, 採取方法などに注意すれば, 液状化しやすい粒度組成を推定するための大きな手掛かりになると考えられる. このような理由から, 噴砂を数多く収集しその粒度組成について分析を行った. 対象とした噴砂は, 近年発生した13地震の液状化地点より採取されたもので, 合計823試料である. 本論文では, 噴砂の採取地点と粒度組成を示し, 海岸埋立地に代表される若齢な地盤と沖積地盤に代表される地盤で採取された噴砂の違い, 噴砂の粒度組成の特徴および範囲とその工学的意味を明らかにし, 液状化し得る粒度組成の細粒側の下限値を見出した.
  • 土門 剛, 今田 徹, 西村 和夫
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 149-167
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    低強度地山トンネルでのベアリングプレートを有するロックボルト挙動の概念を提示し, この概念の正当性を軸対称トンネル模型載荷実験によって実証した. この実験から, ロックボルト打設パターンによって内空変位抑制効果が異なることも明らかにし, その理由をボルトによる支保内圧効果にあるとの観点から論じた. 実験で得られたボルトの力学挙動を踏まえ, 地山-ボルト間相互作用およびベアリングプレートの影響を加味したボルトの力学モデルを考案し, これに基づいて低強度地山トンネルの簡便モデルを提案した. このモデルにより, トンネル施工上許される壁面変位率を設定した場合の最適なロックボルト長および打設間隔を定めることができる.
  • 中村 晋, 吉田 望
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 169-187
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    時間領域での非線形地震応答解析より得られた応力-ひずみ関係のフーリエ変換により定常不規則過程下での周波数領域における応力-ひずみ関係を求めた. 次に, 周波数領域でのひずみより換算された時間領域に相当するひずみに基づく周波数領域でのせん断剛性と減衰定数のひずみ依存性をモデル化した. 最後に, このモデルを用いた周波数領域での非線形解析手法を提案した. 提案手法と従来の周波数領域での二つの解析法を時間領域での解析結果と比較したところ, 基盤波入力に対する順解析, 地表面入力に対する逆増幅解析のいずれでも提案手法は時間領域の非線形解析と同程度の推定精度があり, 他の二つの手法より優れていることが明らかとなった.
  • 山本 哲朗, 鈴木 素之, 原田 博, 植野 泰史, 小山 泰正
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 189-205
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    三郡変成岩はその内部に潜在する片理や節理が弱面となって斜面崩壊を誘発する問題土である. 本文では, 山口県内における三郡変成岩風化土のうち, 泥質片岩, 塩基性片岩, 蛇紋岩などの化学・物理的性質と締固め・CBR特性を検討した. その結果, 泥質片岩風化土の化学・物理定数は広範に変化し, 塩基性片岩, 蛇紋岩風化土は細粒分・粘土分を多く含有することが分かった. 泥質片岩風化土の締固め特性は塩基性片岩, 蛇紋岩の風化土に比較して良好であり, 岩種によらず, これら風化土の最大乾燥密度とSiO2含有率, Fe2O3含有率, 細粒分含有率, 強熱減量との間に良好な相関が認められた. 三郡変成岩風化土の多くは修正CBR値が約7.5%以下であり, 盛土材に転用するためのセメント安定処理による土質改良を検討した.
  • 風間 基樹, 岡田 直仁, 中村 晋
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 207-217
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    強震動を受け強非線形化した地盤の地震時挙動を解析するため, 高速ウェーブレット変換を用いた時間-周波数領域の非定常地震応答解析手法を提案した. 提案手法は地震動が入力されてから非定常に変化する地盤のせん断剛性と減衰定数を, その時点までに地盤が受けた累積損失エネルギーと最大ひずみレベルに基づいて規定する方法を示している. この方法の特長は, 地盤の時々刻々の剛性低下が陽な形で計算結果として出力されることであり, 一種の非線形解析となっている. また, 提案手法を用いて神戸ポートアイランドで観測された強震記録を対象とし, 液状化による剛性低下を伴う地盤の強震時挙動解析に対する適用性を検討した.
  • 田中 政典, 田中 洋行, 三島 理
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 219-229
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    自然堆積した飽和粘性土の残留有効応力 (σr) を測定した. この結果, 同一の方法によって試料を採取したのにもかかわらず, 測定されたσrは地盤によって大きく異なることがわかった. この原因を明らかにするため室内で再構成した試料を用いて, 圧密時間や過圧密比を変化させ, σrに対する影響を調べた. また, 豊浦砂や珪藻土を混ぜた混合土を作製し, 粒度組成や塑性指数とσrとの関係を示した. この結果, 圧密係数が大きな土ほどσrが一定となる時間が短いこと, 圧密時間が長くなるのにしたがってσrが増加すること, 過圧密比の増加によってもσrは大きくなることなどがわかった.
  • 中空円筒試料を用いて
    新 孝一
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 231-243
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    地盤・岩盤には無視できないほど異方性のあることが少なくない. そこで地下構造物の合理的設計やHLW地下処分施設設計のための高度な調査のために, 実用的に異方性を測定するための方法を開発した. この方法では, 大型の中空円筒試料を一つ用いて載荷試験を行なうことにより, 原位置試験に近い寸法で, 地盤の直交異方性を3次元で評価する. この方法の開発のために, 新たに中空円筒の弾性解の簡易なものを構築し, また異方性パラメータ数の合理的な削減方法を理論と既往データの両面から考案して, 逆解析により異方性を求めるようにした. また, その逆解析が安定であることを示した.
  • 三軸試験によるシミュレーション
    三田地 利之, 高橋 秀彰, 香西 篤
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 245-252
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    軟弱地盤の圧密工法として普及しつつある真空圧密工法は, 盛土荷重載荷工法と比較して, すべり破壊の危険性が少ないことや比較的小規模な設備で大きな圧密効果が期待できるなどの利点を有している. しかし, そのメカニズムについては必ずしも明確でない点が多く, 強度増加および変形の事前予測手法は確立していないのが現状である. そこで本研究では, 真空圧密工法における地盤の応力状態を三軸試験装置内で再現し, 緩速盛土工法を想定した試験との比較を行うことにより, その強度-変形挙動を検討し, 本工法による強度増加は“過圧密効果”に基づくことを示すとともに, 真空解除後の応力状態の変化を把握することの重要性など, 設計・施工にあたっての留意点を指摘している.
  • 掘削条件が及ぼす影響と適用性の検討
    三枝 弘幸, 谷 和夫, 金子 進, 我妻 達弥
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 253-264
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    岩石や岩盤の強度特性を評価する一般的な手法は, 現場で行う原位置岩盤せん断試験とサンプリングした試料を用いて室内で行う岩石せん断試験である. しかし, これらのせん断試験は高コストで時間や労力がかかるため, 地盤調査の初期段階における概略把握には不適切である. 一方, ボーリングの際に掘削変数を計測する技術が注目を集めている. この計測ボーリングの技術を利用して, 原位置で簡便に岩石や岩盤の強度特性を推定する“振動給圧式ボーリング (ID-CCT) によるサウンディング手法”が実用的な調査手法として提案されている. 本研究では, このID-CCTサウンディングに着目し, 掘削条件が結果に及ぼす影響と多様な地盤種別に対する適用性について模型実験を行って検討した.
  • 中村 努, 三田地 利之
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 265-273
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    引抜き試験と土中クリープ試験を行い, 両試験結果ともクリープ載荷荷重に達するまではほぼ一致した引抜きカー引抜き量関係を示し, クリープによるジオグリッドの変位およびひずみ増加は引抜き口付近に集中して生じることを確認した. また, 土中クリープ変形挙動の推定方法を示し, 土中クリープ試験結果との比較検討結果に基づいて, ジオグリッドの敷設長を必要以上に長くしても補強盛土の変形を軽減することはできず, むしろ土とジオグリッド間の摩擦が十分に発揮されるような施工を行うことの重要性を指摘している. 同時に盛土全体の変形を含めた設計法を行うためには, 土中クリープ変形挙動を考慮することが重要になることを指摘している.
  • 木村 誠, 谷 和夫, 岡田 哲実
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 275-287
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    岩石の単段階載荷の三軸圧縮試験 (Single-step loading triaxial compression test: 以下SL-TCT) では, せん断強度定数を得るために複数の供試体が必要である. これに対して, 多段階載荷の三軸圧縮試験 (Multiple-step loading triaxial compression test: 以下ML-TCT) は, 1本の供試体で複数の拘束圧に対するせん断強さが得られるので時間的にも経済的にも有利である. しかし, 軸圧縮 (せん断) を繰り返すことによって供試体に損傷が蓄積して発揮されるせん断強さが低下するメカニズムが明らかではないため, SL-TCTの代替方法としての地位が確立されてはいない. そこで, ML-TCTをシミュレーションすることが可能な多段階載荷損傷モデル (Multiple-step loading damage model) を作成し, ML-TCTにおいて軸圧縮 (せん断) を行う拘束圧の設定数と順序について検討した.
  • 石井 建樹, 金子 賢治, 岸野 佑次
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 289-302
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    砂に代表される地盤材料の変形特性として, 従来の塑性論における仮定に反する増分非線形性の存在が指摘されるようになっている. このような地盤材料の変形特性はその離散的で複雑な内部構造に支配される. 本研究では, 地盤材料の簡易モデルである粒状体の塑性変形のメカニズムを調べるために, 粒状体の内部構造と塑性変形挙動との関連性について検討する. まず, 3次元粒状要素法に基づく数値シミュレーションにより粒状体の塑性変形挙動を把握する. 次に, 粒状要素法の剛性行列に基づく固有変形解析を行い, 塑性変形に関する変形モードについて検討する. さらに, 粒状体の内部構造を定量的に評価し得る構造テンソルであるファブリックテンソルと塑性変形挙動との関連性を調べ, 塑性変形のメカニズムについて微視力学的な見地から考察を行う.
  • 山崎 浩之, 森川 嘉之, 小池 二三勝
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 303-314
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    締固め砂杭工法 (サンドコンパクションパイル工法) は, 密度増加による代表的な液状化対策工法である. 同工法の設計, すなわち圧入率あるいは置換率 (以下本論文では圧入率とする) とよばれる砂杭面積の原地盤に対する占有率の設定は, 原地盤N値, 細粒分含有率, 改良目標N値を用いる設計法で行われることが多い. 本論文では, 圧入後の増分N値に及ぼす細粒分含有率の影響に関する考察を行っている. そして, 既に提案した改良後N値の予測手法に考察結果を反映させ, 提案手法の改良・精度向上を行っている. さらに, 改良された予測手法を用いて, 砂杭圧入速度, 砂杭圧入間隔の締固め効率におよぼす影響について考察を行い, 砂杭圧入速度が締固め効率に影響をおよぼし, 圧入速度が遅い方が締固め効率は良くなることを示している.
  • 石田 稔, 三宅 篤, 伊藤 哲雄, 大谷 政敬, 太田 秀樹
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 315-330
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    落石・岩石崩壊が頻発する本尊岩地区において, 崩壊メカニズムとの関連から地区全体の岩盤斜面の安全性評価を試みた. 同時に岩盤斜面の目視観察から個別に危険箇所の抽出を試みた. 抽出した箇所は地区全体の安全性評価の結果と符合するものであり, 抽出結果は妥当であると考えられる. 抽出した危険箇所についてはさらに精査を行い個別の対策工を検討した. これら一連の検討の結果, 本地区の岩盤の劣化状況と考えうる崩落規模からして抜本対策は困難であり, 長期的には別線小レートで地区全体を回避する以外にない, と判断した. したがって, 個別危険箇所における防災施設の設置と斜面全域の監視体制の確立を当面の対策として, 別線ルート開通まで現道を維持していく必要があると考えられる.
  • 残留した圧縮空気の挙動計測
    池川 洋二郎, 中川 加明一郎
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 331-344
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    トンネルが水没した時, 岩盤面が露出するトンネル中に約6気圧の圧縮空気が残留した. この時の圧縮空気の挙動と, 周辺岩盤の間隙水圧の計測結果より, 圧縮空気の圧力が周辺岩盤の間隙水圧より小さい条件, つまり人工水封条件のもとで残留したことが分かった. また, 10ヶ月間と6ヶ月間の圧縮空気の残留には再現性が示された. 以下, 計測と結果の概要を示す.
  • 石田 毅, 西川 直志, 北村 晴夫, 田仲 正弘, 古屋 憲二
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 345-355
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    山口市鳴滝の花崗岩採石場跡地で約3,300m3の岩盤崩落が発生し, 崩落岩石が斜面下部の県道を閉塞した. 復旧工事の安全のため, 崩落後の斜面に残された不安定岩塊の挙動を, レーザー変位計とAEの測定で監視した. 不安定岩塊が発破で除去されるまでの20日間に最大で約50mmの累積変位が測定されたが変位の急激な増大は見られず, AEの発生頻度も高くなかったため, 測定時の岩塊は2次クリープの比較的安定した状態にあったと推測された. 50mmという大きな変位が生じても崩落が生じなかったことから, 精度的に期待のレベルより劣る測定手法であっても連続的な変位測定を行うことにより岩盤崩落の監視が可能であること, またAEの測定を併用することで崩落の危険性をより的確に予測できることがわかった.
  • 福島 伸二, 北島 明, 谷 茂, 石黒 和男
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 357-373
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    ため池のような小規模ダムは築造年代が古く老朽化して, 漏水や堤体破損等に対する早急な改修を必要とされているものが多い. 特に市街化が進んだ地域では適切な遮水用築堤土を近傍から入手しにくくなっており, 漏水対策工事の実施が難しくなっている. この状況の解決のためには, 既設堤体土に貯水池内に堆積した底泥土を混合した粒度調整土による築堤土の現地調達法が考えられる. ここでは底泥土混合により粒度調整して堤体土の遮水用築堤土への適用性を調べた結果を報告する.
  • 橋本 耕作, 建山 和由, 中村 良夫
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 375-380
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    人工法面に対し安定性の向上を目的として緑化が行われるケースが増えている. 植物の根系が法面の安定に及ぼす影響のうち, ここでは, 根系が地盤中から水分を吸収することによって地盤内のサクションの増加に寄与する効果について調べるため, テンシオメーターを用いた原位置計測を行った. この結果, 降雨後における地盤内のサクションの回復に根系の吸水活動が大きな役割を果たすことが明らかになり, また, この効果の季節や時間帯, さらには樹木の種類による差異等に関しても新たな知見を得た.
  • 中村 真, 楠見 晴重, 奥田 善之
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 381-386
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    岩石の弾性的特性を把握する手法として弾性波速度の測定が挙げられ, 近年ではS波による評価も多く実施されている. 本研究では, 岩石供試体の比抵抗に加えてP, S波速度を同時に測定できるシステムの開発を試みた. 弾性波の震源は高周波のインパルスを一方の端面で与え, 他方の端面に受信器を設置し, 伝播した波形を受信した. また, このインパルスは, 繰り返し岩石供試体の一方向に与え, 弾性波は記録した波から速度差とエネルギーの大きさによって, P, S波の初動を読み取った. 同時に岩石供試体の比抵抗はGS式によって測定した. その得られた弾性波速度および比抵抗値と従来の測定法で得られた値を比較した. その結果, 両手法による測定値はよく一致しており, 本測定装置の有効性が認められた.
  • 山下 聡, 堀 智仁, 鈴木 輝之
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 387-392
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    異方応力状態でのせん断波の伝播速度に及ぼす伝播方向と供試体の堆積方向の影響を明らかにするために, 水平方向に堆積した試料から供試体の軸方向が鉛直および水平方向となる堆積方向の異なる三軸供試体を作製し, 異方応力状態でベンダーエレメントを用いてせん断波速度を直交する3方向から求め比較した. その結果, せん断波速度は堆積面に平行な応力よりも垂直な応力により依存する. また, 異方応力状態でも鉛直および水平方向に伝播または振動する二つのせん断波速度はほぼ等しいことが明らかにされた.
  • 前川 晴義, 村上 幸利
    2002 年 2002 巻 722 号 p. 393-395
    発行日: 2002/12/21
    公開日: 2010/08/24
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