土木学会論文集
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1999 巻, 625 号
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  • 片田 敏孝, 及川 康, 田中 隆司
    1999 年 1999 巻 625 号 p. 1-13
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    災害時においては, 被災地住民に避難や救急救命に関わる情報をいち早く伝え, 人的被害の最小化を図ることが重要である. 本研究では, 災害時の住民への情報伝達を円滑に行うための情報伝達環境整備のあり方を検討するため, 災害情報伝達シミュレーションの基本モデルを開発した. このモデルは, 住民個人の情報伝達行動を基本単位に構成された住民間情報伝達モデルであり, 災害時における住民の情報伝達行動特性が調査結果に基づき組み込まれている. また, この住民間情報伝達モデルは, それと連動して機能する災害情報システムや住民の自主防災組織による情報伝達などの機能追加が念頭におかれており, それらの基本システムとして, 応用の可能性は大きい. 本モデルは, 地域への適用により挙動の妥当性を確認している.
  • 土井 健司, 青木 崇
    1999 年 1999 巻 625 号 p. 15-27
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    多様な機能が求められる結節鉄道駅に対する利用者ニーズを, 個人間で比較可能な尺度によって定量化し抽出するための方法論を開発している. 項目反応理論の適用により, 各種のニーズの背後にある利用者の潜在的特性を抽出した結果, 不満や要望の懐きやすさには個人の属性や利用駅の構造的特徴が影響を及ぼすことが明らかにされた. さらに, 潜在心理特性への依存度により改善要望の特徴づけを行い, 通路, 階段の拡張や乗り換え移動距離の軽減等に対する要望は, 利用者の潜在心理特性に依存せず不特定多数が強い要望をもつこと, 一方, 案内のわかりやすさや情報提供への改善要望には個人の特性が強く作用することを明らかにした. また, 定量化された要望度の相互関連性の分析に基づき, 案内・情報提供の改善への対応策が複合的な効果を有することを示唆した.
  • 内山 久雄
    1999 年 1999 巻 625 号 p. 29-37
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本論文は高速道路上での夜間工事時の飽和交通量以下での交通流の時でさえ工事規制による渋滞が発生しているという問題意識に立脚し, 車線規制部手前での自動車が実際にどのように合流しているか, すなわち個々の車両の合流挙動特性を分析し, この合流挙動をモデル化することを目的としている. 本論文の特徴は合流挙動を合流意思を決定するプロセスとしての合流準備挙動と実際に車線変更を開始し合流が完了するプロセスとしての合流調整挙動とに分け, 前者に関して走行軌跡データ取得システムから得られる車両の走行特性を表現する各種の指標を説明変数とする非集計タイプのモデルを適用することにより合流意思決定が時間の経過とともにどのように確率的に変化していくかを明示しようとしている点にある.
  • 堀江 篤
    1999 年 1999 巻 625 号 p. 39-52
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    地下鉄道における熱収支の主な構成要素は, 従来, 列車発熱等の内部発熱, 換気による熱の移動, 壁体の吸放熱作用が考えられてきた. しかしトンネル区間と明かり区間との接続あるいは地下水位の高い区間と低い区間がある場合等のように各駅およびトンネルが熱的に対称でない路線では, 列車車体の金属材料が蓄熱運搬する熱量が各駅間の熱収支に影響を及ぼすことが考えられる.
    そこで壁体および地中の熱流を周波数応答によりモデル化し, 車体交換熱量を含めて温度と熱流をフーリエ級数に分解して全路線の熱バランス式を立て, これを解いてから合成して温度を求める熱収支理論を提案した. 提案理論に基く数値計算により実測値と対比するとともに地下鉄道モデルの試算も行った.
  • 本橋 稔, 永井 護
    1999 年 1999 巻 625 号 p. 53-64
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    近年, 観光地の交通問題に対する関心が高まり, 地域の特性に合わせて種々の対策が試みられるようになった. それに伴い, 観光交通の需要分析に関する研究が盛んになりつつある. 本研究は, 観光地における交通行動調査の方法に関する研究であり, 観光交通の特性を考慮しながら, 対象地域全体の交通流動を把握するための調査方法を検討している.
    まず, 既往研究のレビューを通し, 観光交通需要予測の問題点をプロセスに沿って整理し, 観光行動調査の体系化の必要性とその論点を整理している. 次に, 観光地の交通行動調査の具備すべき要件を明らかにし, 調査, 集計方法を提示している. さらに, この方法を奥日光地域へ適用し, 有効性と実施上の留意点を明らかにしている.
  • 上田 孝行, 堤 盛人
    1999 年 1999 巻 625 号 p. 65-78
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究は土木計画学の分野において80年代後半から開発・適用が試みられてきた5個の土地利用モデルを取り上げ, その共通の理論的基盤を統合フレームとなるモデルとして示す. その上で, 各モデルが統合フレームのモデルにおける関数型を特定化することで導出されることを示し, 各モデルの特徴について比較を行っている. それにより, 各モデルのサブモデルを組み合わせることによって新たな土地モデルが統合フレームの枠組みの中で構成できることを明らかにしている.
  • 青木 俊明, 稲村 肇, 増田 聡, 高橋 伸輔
    1999 年 1999 巻 625 号 p. 79-88
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究では小地区レベルにおける家族類型別世帯主年齢別世帯数の推計方法を提案するとともに推計したデータを用いて旧仙台市の都市構造変化を分析している. 仙台市の行政区を対象として家族類型別世帯主年齢別世帯数を推計し, それを用いて推計精度の検討を行った. その結果, 良好な結果を得るとともに本手法の有効性を確認した. これにより, 小地区単位での詳細属性別世帯数に関して, 一定の精度を保ちつつ高い汎用性を持つ推計が可能となった. また, 国勢統計区を推計単位としてライフステージ別世帯数を推計し, それを用いて旧仙台市の居住特性変化を地区レベルで分析した. その結果, 旧仙台市では中心部は高齢化傾向にあり, 郊外に向かうに従い若年層が増加していることが分かった.
  • 清水 英範, 布施 孝志, 森地 茂
    1999 年 1999 巻 625 号 p. 89-98
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    江戸時代の絵図に代表される古地図は, その図が作成された当時の土地利用や交通路の状況を空間的に把握するための数少ない貴重な資料である. 都市史や土木史の研究で古地図を分析対象とする際には, 現代図と比較対照する必要が生じるが, 古地図の幾何的精度は一般に著しく低く, その作業は容易なことではない. 本研究は, 地理情報システムの利用環境を想定し, 古地図の幾何的歪みを可能な限り自動的に補正し現代図と重ね合わせる手法を開発することを目的としている. 論文では, まず古地図の幾何補正に必要な要件を整理し, その要件を満たす手法としてTINモデルとアフィン変換を組み合わせた幾何補正手法を提案する. また, いくつかの実際の応用を通して古地図の幾何補正ならびに提案する手法の意義を例示する.
  • 藤井 聡, 北村 隆一, 熊田 善亮
    1999 年 1999 巻 625 号 p. 99-112
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究では, 交通行動はその他の種々の行動とは独立ではないという認識のもと, 交通行動を伴う活動は自由時間と所得を投入して自己生産されるサービスの一種であると考え, ランダム効用理論に基づいて消費行動全般をモデル化することで個人の交通需要を算定する行動モデルを構築した. そして, 個人の交通行動と時間利用, 出費のデータに基づいて非線形 Tobit モデルを適用してモデル内の未知パラメータの推定計算を行った. 推定の結果, 所得の多い男性ほど非日常活動により多くの時間と所得を投入する傾向にあること, 観光施設が多く, 自宅から近い地域ほど訪れる可能性が高いこと等が統計的に示された. 最後に, 推定されたモデルから交通頻度, 支出, 自由消費に関する需要関数を誘導し, それに基づいたモンテカルロシミュレーション法によるシナリオ分析を行った.
  • 多々納 裕一, 小林 潔司, 馬場 淳一
    1999 年 1999 巻 625 号 p. 113-124
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究では, レクリエーション便益を計測するために滞在時間分布を考慮した旅行費用法を提案する. そのために, 個人の滞在時間決定行動を内包化したようなレクリエーション・サイトの訪問の有無を示す離散・連続型選択モデルを提案するとともに, 訪問客調査に基づいたモデルの推計方法を提案する. さらに, 提案した旅行費用法を石狩川の河川敷の訪問行動に適用し, 家計のレクリエーション便益を実証的に計測する.
  • 野村 哲郎, 外井 哲志, 清田 勝
    1999 年 1999 巻 625 号 p. 125-133
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究は, 道路網における案内標識の最適配置に関して, ネットワーク上における迷走の最小化をはかることを目的とし, その数理モデルの提案およびアルゴリズムの開発を行ったものである.
    目的地の案内方法としては地名または路線番号方式および併用型とし, その設置箇所は交差点流入部に限定している. 運転者の迷走度の表現として到達迷走度を導入している. 最適化の考え方としては, すべてのODの到達迷走度の和を最小化する立場を提案している. 最適化の数理モデルでは, 運転者の迷走度に関する指標を目的関数とし, 標識設置リンク数および案内1方向あたりの表示数を制約条件として, 解法には動的計画法を適用し, 計算例により地名, 路線および併用型案内の性質を示している.
  • 杉本 博之, 田村 亨, 有村 幹治, 斎藤 和夫
    1999 年 1999 巻 625 号 p. 135-148
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    被災時の柔軟な組織的復旧の実現は, 迅速なネットワーク機能の回復の面において, 重要な課題の1つである. しかし, 組織的な復旧戦略の決定は, 復旧班の協力組み合わせと被災リンクの復旧順番の同時決定問題となり, その最適な組み合わせを求めることが困難となる. 本研究は, 準最適解探索手法である遺伝的アルゴリズム (Cenetic Algorithms) を用いて, 復旧班の協力体制を考慮した復旧スケジューリングモデルを構築し, 実際に構築したモデルを用いて国道レベルでの復旧問題を解くことを目的とする. 本研究では, 最適解の探索を効率的に行うためにGAの処理上の工夫を加えて組織的な復旧スケジュールの構築を可能とした. また実際にケーススタディとして南西北海道の道路ネットワークを対象として協力復旧スケジュールの最適化計算を行った.
  • 谷口 栄一, 山田 忠史, 細川 貴志
    1999 年 1999 巻 625 号 p. 149-159
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究においては, 都市内集配トラックの最適配車配送計画および動的交通シミュレーションを統合したモデルを開発した. このモデルは, 都市内集配トラックの最適配送ルートおよび出発時刻を決定する運輸企業の行動を記述し, そのような行動によって, 道路ネットワークの交通状況にどのような影響を与えるかを推定することができる. このモデルを仮想道路ネットワークに適用した結果, 高度な配車配送計画あるいは輸送の共同化を導入することにより, 輸送に関わる総費用を減少させるとともに, 乗用車も含めた総走行時間を削減できることが明らかになった. したがって, このような方策は, 交通混雑の緩和や交通環境の改善にも貢献すると考えられる.
  • 木下 瑞夫, 田雜 隆昌, 牧村 和彦, 浅野 光行
    1999 年 1999 巻 625 号 p. 161-170
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究は, 活性化が喫緊の課題となっている都心地区における歩行者回遊行動を把握するための新たな調査手法を提案し, その有用性を明らかにするものである. まず, 5種類の調査手法について, データ収集の信頼性や実態調査の難易等の観点から総合的に比較検討して, 現地配布・郵送回収による都心地区交通結節点を起終点とする歩行経路地図上記入方式が最も適していることを明らかにした. つづいて, この実態調査手法を用いて歩行者回遊行動調査を地方中核都市で実施し当該都市のパーソントリップ調査と比較した結果, 回遊トリップ数, 回遊距離, 回遊経路などの把握状況において手法の有用性を確認した. また, 来街手段別歩行回遊状況, 商業施設間の回游実態, モールや地下道利用実態など, 都心の歩行空間整備計画の指汁となるデータが効率的に収集できることが確認できた.
  • 北村 隆一, 山本 俊行, 神尾 亮
    1999 年 1999 巻 625 号 p. 171-180
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究では世帯の交通エネルギー消費量, 通勤交通機関, 自動車保有台数, 通勤距離を内生変数とする構造方程式モデルを1990年京阪神パーソン・トリップ調査結果を用いて推定し, 世帯の交通エネルギー消費性向に考察を加えると同時に, このモデルを土地利用政策のエネルギー消費削減効果の分析に適用している. モデルの推定結果は, より高密度で職住近接型の土地利用を推進することにより世帯の交通エネルギー消費を削減することが可能であることを示唆している. しかしながら, 既に高密度・混在型の土地利用が展開し自動車利用率が比較的低い京阪神都市圏で世帯交通エネルギー消費の大幅な削減を図るとすれば, 都市圏外延部に居住し長距離通勤を行う世帯を対象とする土地利用政策が必要となることを本研究の結果は示唆している.
  • 谷本 圭志, 岡田 憲夫
    1999 年 1999 巻 625 号 p. 181-191
    発行日: 1999/07/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    多目的ダム事業では, 複数の主体にどのように共同費用を割り振るかという費用割り振り問題が生じる. 共同費用を割り振る方法には, 各主体について公平で公正な割り振り解を与えることが求められる. 本研究では, 多目的ダム事業に環境に関するマネジメント主体という新たな主体が参加することを想定し, その場合には提携の形成に関する外部性が生じ得ることに着目する. そこで, 提携の形成に関する外部性を考慮しうるよう従来の公正配分解を拡張, 定式化することを本研究の目的とする. その際, 提携の形成の外部性を考慮しうるゲームとして,「分割関数形のゲーム」を用いて検討する.
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