本研究では, 輸送力増強などの供給者側の施策や, フレックスタイム制の普及; 生産年齢人口減少などの社会環境の変化が, 通勤鉄道の混雑緩和にどの程度寄与するのかを定量的に把握するために,「鉄道需要の時刻集中特性予測モデル」を構築した. このモデルは, 混雑による外部効果や勤務制度に関わる変数を明示的に取り込んでいるという特長をもっている. 構築されたモデルを首都圏の鉄道ネットワークに適用した結果, 高い現状再現性が得られ, モデルの適用可能性の高さが示された. また, シナリオ分析を行った結果, 需要動向を最も楽観的に想定し, かつ1998年現在事業中の路線が全て完成したとしても, 運輸政策審議会の掲げる「ピーク時の平均混雑率150%」という目標を達成するのは困難であり, 一定程度の新規整備が必要であろうことが示唆された.
抄録全体を表示