土木学会論文集
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2003 巻, 728 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 大津 宏康
    2003 年 2003 巻 728 号 p. 1-16
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本論文では, 建設市場の縮小等の建設業を取り巻く昨今の厳しい社会環境の下で, 建設分野が新たな方向に進む上での, リスク工学という新しい考え方の適用性とその展望について述べるものである. ここで取り上げるリスク工学とは, 昨今注目されつつある金融工学の根幹をなす理論であり, リスクを定量的な指標として取り上げ, その評価・対応について議論するものである. 具体的には, 本論文では建設市場の縮小に対する方策として, 海外建設プロジェクトの受注拡大, PFIに代表される民間資本導入による公共事業の推進, 構造物の維持・補修に関する市場の拡大という3つの方策を対象とし, これらの方策を推進することに関連するリスク要因を明示するとともに, その対応策についても言及する.
  • 林 健太郎, 善 功企, 山崎 浩之
    2003 年 2003 巻 728 号 p. 17-25
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本報告では, 波浪による吸い出しをうけた既設ケーソン岸壁背後地盤に対して, 液状化対策と吸い出し被災の防止を目的として, 溶液型薬液注入工法を適用した場合の施工性や改良効果について検討している. 検討項目としては, 液状化対策と吸出し防止対策に必要な改良強度の設定, 残留水位の変動に対する施工性の検討, 防砂シートの孔に対する対策, しらすに対する均一な施工性の検討を取り上げた. 室内実験と現地での施工実験の結果, これらの目的に対して十分な施工性および改良効果があることが明らかになった.
  • 高橋 浩, 谷井 敬春, 岩井 勝彦, 桑原 秀樹, 進士 正人, 中川 浩二
    2003 年 2003 巻 728 号 p. 27-39
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    膨張性地山など大変形の発生が予測される地山でのトンネル建設において先進導坑を採用する場合, 導坑の支保効果として拡幅掘削時の切羽安定効果やいわゆるいなし効果などが期待されることが多い. 筆者らは高速道路トンネルの建設において, 導坑の有無, 拡幅切羽からの先進距離, 導坑形状や支保剛性などを変更した5通りの施工ケースを試行した. この施工を実スケールの実験的研究と位置付け, 施工ケース毎に計測データなどを比較・検討した結果, 既往の研究では必ずしも明確にされていない導坑の支保効果として, 拡幅掘削時の (1) 切羽安定効果, (2) 変位抑制効果を確認した. また, 導坑によるいなし効果とは変位抑制が主な効果で, 作用土圧軽減効果は少ないことなどを確認した.
  • 足立 幸郎, 藤井 康男, 伊藤 政人, 佐藤 峰生, 松井 保
    2003 年 2003 巻 728 号 p. 41-50
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    開削道路トンネルのような幅広掘削時における盤ぶくれ現象の照査において, 一般に設計で考慮されていない遮水壁の壁面摩擦力等による抵抗力の有効性を確認するため, 遠心力模型実験および数値解析を行った. 遠心力模型実験の結果, 盤ぶくれが生じる掘削深度は, 底面地盤の自重に摩擦力等の抵抗力を加えた力と揚圧力がバランスするという剛体における力の釣合いから算定される盤ぶくれ深度にほぼ等しくなった. また, この現象は弾塑性FEM解析において精度よく再現できることがわかった. これらの結果をもとに, 開削トンネルにおける遮水壁と底面地盤の摩擦抵抗力と不透水層地盤のせん断抵抗力を考慮した盤ぶくれ照査式を検証した.
  • 八谷 好高, 野上 富治, 横井 聰之, 赤嶺 文繁, 中野 則夫
    2003 年 2003 巻 728 号 p. 51-65
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    プレキャストプレストレストコンクリート (PPC) 版を相互に接合するための新形式目地である, 圧縮ジョイントを開発し, これを用いたPPC版舗装を空港へ適用したプロジェクトについて報告する. 本報告では, まず, 空港エプロン舗装に用いられている従来型接合装置によるPPC版舗装の実態調査を行って, 破損原因を明らかにしている. 次に, 小規模舗装を用いた載荷試験とその結果の解析から荷重伝達機構について明らかにしてそのモデル化を図り, 実大規模の試験施工ならびに繰返し載荷試験により検証している. そして, 圧縮ジョイントを実用に供するための構造設計法について詳細に検討し, この方法によるPPC版舗装を空港へ適用したプロジェクトについてまとめている.
  • 鈴村 恵太, 中村 俊一, Roger Q. HAIGHT
    2003 年 2003 巻 728 号 p. 67-77
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    米国 Bear Mountain 吊橋において77年間供用されたハンガーロープを撤去し, その引張強度および腐食状況を調査した. 撤去ハンガーの引張試験を実施したが, 建設時に得られていた引張強度とほぼ同一値を示した. 引張試験後, ハンガーロープを解体し, 腐食状況を目視および光学顕微鏡で調査した. 外側ストランドの内層亜鉛めっき鋼線に鉄錆が発生していた. 一方, 中心ストランドでは亜鉛めっきの腐食が認められたものの鉄錆の発生は認められなかった. 腐食のメカニズムは, 外面塗膜のひび割れ部から侵入した水分がロープ内部に滞留し, 腐食しやすい環境を形成し, 濡れによって腐食が進行したと推定された. 本吊橋は低気温・低湿度の田園地帯に位置し, 腐食性の低い環境にあったため腐食は軽微であったと考えられた.
  • 松下 博通, 原田 哲夫, 添田 政司, 龍 良平, 吉竹 豊尚
    2003 年 2003 巻 728 号 p. 79-92
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    新北九州空港連絡橋の海中橋脚を対象として第1種防食法による耐久性設計およびマスコンクリートとしての温度ひび割れ制御の検討を実施した. アルカリ骨材反応性試験で無害と判定される粗骨材であっても高アルカリ環境下では異常膨張を示すこと, これに対して高炉スラグ微粉末を置換率50%で使用すればアルカリ骨材反応が抑制されることを確認した. 高炉スラグ微粉末高添加の低発熱セメントによるコンクリートの発熱量の低減と保温型枠による放熱量の制御とを併せて実施することで, ひび割れ指数を感潮帯では1.0以上, 海中・海上大気中では0.7以上としひび割れ幅を0.1~0.3mmに抑制できた. また, ひび割れ幅・間隔には配力鉄筋比および構造体温度と外気温との温度差の影響が大きいことを明らかとした.
  • 米山 治男, 白石 悟
    2003 年 2003 巻 728 号 p. 93-106
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    防波堤ケーソンの据付作業の省力化, 作業員の安全性の確保等に寄与することを目的として, 現状では作業員が直接手動で実施しているウインチ操作作業をコンピュータを用いて自動化することにより, 防波堤ケーソンの据付作業を自動的に行う自動設置システムを開発した. 本システムは, ケーソンの位置制御用に引船を使用する引船方式, 周辺海底地盤に設置されたアンカーにワイヤを展張させたアンカーワイヤ方式の2方式でケーソンの据付作業を行うことが可能である. 本研究では, ケーソン据付作業の安定性および最終的なケーソン設置精度に着目して, これら2方式による自動設置システムの制御アルゴリズムの妥当性および有効性を水理模型実験により比較検証した.
  • 木村 定雄, 岡村 直利, 宇野 洋志城, 清水 幸範, 小泉 淳
    2003 年 2003 巻 728 号 p. 107-119
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    近年, シールドトンネルの工事ではその工事費を縮減することを目的として, トンネル用途に応じて二次覆工を省略する傾向がある. しかしながら, その工事実績の歴史も浅く, 二次覆工を省略した際の覆工の長期的な性能の低下など, 二次覆工の機能を明確にした上で, それに代替えする方策が完全になされているとは言い難い. このため, これまで二次覆工が担ってきた機能は, 一次覆工であるセグメントを主体にそれを補う必要がある. 一方, セグメントの耐久性能に関する直接的な資料がほとんど見あたらないのも実状である. 本研究は二次覆工を省略する際に用いられている鉄筋コンクリート製セグメントのコンクリートの耐久性能および耐火性能を実験によって把握したものである. 実験の結果から, セグメントの製造に用いるコンクリートは耐久性能および耐火性能がともに高いことがわかった.
  • 小西 日出幸, 宮本 文穂, 広兼 道幸
    2003 年 2003 巻 728 号 p. 121-140
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究は, 鋼橋の計画時の架設工法選定および現場架設時の安全管理において利用できる, 実用的なエキスパートシステムの開発を行ったものである. 架設工法選定システムは, 鋼プレートガーダー橋の一般的な架設工法を対象に与えられた架設条件から確信度を用いた推論を行い, 適合する架設工法を推論結果として提示するシステムである. 一方, 安全管理システムは, 現場で実際に行う架設工法を対象に, 架設中の重大事故につながる要因のチェックを行うことにより, 危険予知の推論結果と危険箇所の提示を行うシステムである. この二つのシステムの構築手法と実用性について述べる. また, 最後に, 二つのシステムの情報共有部分に着目した総合型システムへの発展性についても述べる.
  • 西崎 丈能, 岡井 大八, 近松 竜一, 奥立 稔, 鎌田 文男
    2003 年 2003 巻 728 号 p. 141-156
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    従来の金属二重殻構造のLNG地上式貯槽とPC製の防液堤を一体化したPCLNG貯槽は, これまでに8基の実績があり, 地上式LNG貯槽の標準型式として定着しつつある. 現在, 大阪ガス姫路製造所に建設中のPCLNG貯槽では, これまでの経験, 計測実績などに基づいて設計および施工の合理化研究を進め, 自昇式足場・型枠工法と高強度自己充填コンクリートを組み合わせた急速化・省力化施工, 情報技術を活用した品質管理など, 新技術を積極的に採用している. ここではこれらの合理化研究の概要, 実構造物に適用した結果について述べる.
  • 白土 正美, 古市 耕輔, 滝本 邦彦, 原 廣, 向野 勝彦, 吉田 健太郎
    2003 年 2003 巻 728 号 p. 157-174
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    近年, シールドトンネル分野では, 施工の合理化, 二次覆工の省略の観点から「継手の自動締結」,「完全内面平滑」のニーズが高まっている. さらに, 放水路等では, 内水圧によりシールドセグメント本体及び継手部に作用する引張力に対して確実な耐力を有することが要求されている. 今回, 著者らは, 上記要求性能を満たした新型合成 (DRC) セグメントを開発し, 実際に首都圏外郭放水路第4工区トンネル新設工事へ適用した.
    本論文では, 新型合成セグメントの適用に当たって実施した各種性能確認試験結果と現場施工時計測結果から得られた本セグメントの設計手法及び構造特性について述べる.
  • 加賀 宗彦, 森 麟
    2003 年 2003 巻 728 号 p. 175-187
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    これまで注入式止水材を用いたシールドセグメント継手面の止水のメカニズムを明らかにするため限界止水圧実験を行ってきた. その結果, この限界止水圧は押出し抵抗によって発揮することを見いだした. しかしながら, セグメント継手面に目違いが生じた場合の限界止水圧に関してはまだ検討されていなかった. 本論文はセグメント間に目違いが生じた場合の限界止水圧についての研究を行った. 結果として, 目違いが生じた場合の止水能力はセグメントの組立て条件によって変わることがわかった. また, 今回は目詰めシール材の設置方法によって止水能力を向上させることも見いだした. これらの結果は新しい止水方法の開発に利用できると考えられる.
  • 請川 誠, 土田 克美, 吉武 勇, 中川 浩二
    2003 年 2003 巻 728 号 p. 189-197
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究は, 矩形要素を組合せた超大断面シールドトンネル工法に用いる鋼殻部材の接続方法について実験的な評価を試みたものである. 特に, シールド施工の誤差をある程度許容できる構造とするため, 接続部をRC構造とし, その際における荷重-変位関係や, 接続部鉄筋と鋼殻部材との力の伝達等の諸特性について検討を試みた. さらに, 本論ではコンクリートを介した鋼殻と鉄筋のラップによる接続方法に対し, 鋼殻あるいは鉄筋の引張降伏強度に基づく接続部の定着設計方法を示した. また, 接続部が所要の曲げ耐力を有すること, 及び各応力材が許容応力度法で求めたひずみ値と概ね一致することを実験により確認した.
  • 青木 宏一, 岩井 勝彦, 嵯峨 正信, 進士 正人, 中川 浩二
    2003 年 2003 巻 728 号 p. 199-204
    発行日: 2003/03/20
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    II期線トンネルの施工における重要な留意点は, 隣接する既設のI期線トンネルに影響を最小限に抑えつつ合理的な施工を行うことである. 多くの事例では数値解析により影響予測は行われているが, 手間とコストの面でトンネル全線にわたり連続的に評価することは難しい. 本研究では, I・II期線トンネル施工による塑性領域の大きさを理論解により簡便に推定し, 両者の塑性領域の接近度を指標とした影響予測手法を提案する. 過去の事例に本手法を採用した結果, 問題箇所の発生をうまく予測することができた. また, II期線設計段階において, I期線トンネルへの影響を配慮したII期線トンネルの支保設計・施工法の検証や管理基準値の設定を行う際の目安にもなりうることがわかった.
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