土木学会論文集
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1998 巻, 603 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
  • 武田 洋, 草深 守人, 吉田 保, 田中 弘, 黒川 信子
    1998 年1998 巻603 号 p. 1-10
    発行日: 1998/09/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    従来のシールドトンネルの掘削解析は, 推進移動するシールド機やセグメントと地盤の幾何学的接触条件を力学的に自然な形で解析理論として取り込むことが出来なかった. 本論文では, 摂動型ラグランジュ汎関数を基本として, 局所化混合スキームを導入することにより, 広く用いられている変位型有限要素アルゴリズムの範疇で一般的な接触問題を取り扱う方法を示した. このことにより, 従来の解析手法に比べて, シールドトンネルの施工過程を忠実に表現した掘削解析が可能となる.
    また, 具体的な解析例から, 特にシールド機と周辺地盤の摩擦によって発生する地盤の変形や負荷土圧に関する解析結果が現場計測値をよく表現していることを示した.
  • 田村 武, 足立 紀尚, 梅田 昌彦, 岡部 哲也
    1998 年1998 巻603 号 p. 11-20
    発行日: 1998/09/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究は, 簡単な力学モデルを用いて吹き付けコンクリートのもつ力学的効果を地山との相互作用の観点から考察したものである. すなわち, 吹き付けコンクリートを剛体棒―回転ばね系に, 地山を反力バネにそれぞれ置き換えてモデル化し, 吹き付け厚さ, 被り高さ, 側圧係数, トンネル形状等を変化させながら吹き付けコンクリートの変形を数値解析し, 発生する応力がコンクリートの許容範囲に収まるような設計可能範囲を調べたものである. その結果, 吹き付けコンクリートが安定な支保として機能を発揮するには十分な地山からの反力が不可欠であることがわかった.
  • 善 功企, 山崎 浩之, 前田 健一
    1998 年1998 巻603 号 p. 21-34
    発行日: 1998/09/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本論文は, サクション (静水圧以下の圧力) を利用した中空円筒形のケーソン基礎の海底地盤中への沈設に関する事例解析について述べたものである. 研究の目的は, 沈設に必要なサクションの予測手法を提案することにある. 本論文では, まず, 基礎の沈設に関する理論的検討を行い, 沈設に関するサクションの理論式を誘導した. 理論式に基づき砂地盤と粘土地盤における沈設事例を解析し, 実測結果との比較検討を行った. あわせて, 支持力係数, 土圧係数, 摩擦係数, 付着応力係数などの影響要因が, サクションの決定に及ぼす影響ついて感度分析を行い理論式の妥当性について考察した. その結果, 本論文で誘導したサクション基礎の沈設に関する理論式は, 適切に入力定数を設定すれば実用的に適用可能であることが明らかとなった.
  • 宇野 尚雄, 神谷 浩二, 田中 宏路
    1998 年1998 巻603 号 p. 35-44
    発行日: 1998/09/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    土の間隙構造を表現する重要な要因である間隙径分布の計測手法として, 筆者らが提案した「空気圧入法」は, 複雑な間隙構造を毛管の集合体とみなす毛管モデルの仮定に基づいている. 本論文では, この圧入法による間隙径分布と水分特性曲線から推定する「水分法」によるものを対比した. その結果, 水分法による間隙径分布に較べて, 圧入法によるものは粒度に関係なく分布範囲が狭く均等な分布型となること, 平均間隙径は9割程度の大きさとなることが判明した. そして, 手法の原理的相違性の観点から両手法による間隙径分布について考察し, 関係付けを試みるとともに, 圧入法における空気通過最小圧は, 水分特性曲線から得られる空気侵入値の6割程度の大きさであることを認めた.
  • 脇田 英治
    1998 年1998 巻603 号 p. 45-52
    発行日: 1998/09/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    杭種毎に沈下特性を標準的に設定できれば, 杭基礎の設計上のメリットは大きい. 特に近年, 既設基礎を再利用して構造物を建て替える工事が増加傾向にあり, その多くが異種杭混用基礎となるので, 設計時には杭種毎の沈下特性の把握が重要であると考えられる. このような意図に基づいて, 過去に実施された多くの載荷試験データを用いて, 杭の荷重-沈下関係の曲線近似を行い, 杭の沈下特性を表す最適な曲線式を求めた. そして, その曲線式のパラメータと杭種および仕様との関係を重回帰分析により解析し, 杭種・仕様に対して一義的に沈下特性を標準的に設定できる推定式にまとめた.
  • 中川 光雄, 蒋 宇静, 江崎 哲郎
    1998 年1998 巻603 号 p. 53-66
    発行日: 1998/09/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    地下空洞の力学的安定性を数値解析を用いて適切に評価し設計へ導入するには, 信頼性のある不連続面挙動モデルを組み込んだ個別要素法の適用が有効であると考える. 本論文は, 既往の代表的な不連続面の力学的挙動モデルを分類し, 定式上の問題点などを考察することにより定式化が妥当性や信頼性を有する条件を示す. 次に, これに基づいた新たな挙動モデルを提案し, 室内せん断試験の結果や既往のモデル (Barton らのモデル) を用いた計算結果と比較することにより, その妥当性や信頼性を検証する. また, 空洞掘削シミュレーションヘ適用した例を示す.
  • 末政 直晃, 片田 敏行, 橋本 理, 中村 和之
    1998 年1998 巻603 号 p. 67-76
    発行日: 1998/09/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究では, 杭周辺地盤の応力や変形状態を円筒押し拡げ理論 (CEM) や Strain Path Method (SPM) より得られる理論解で近似することにより, 杭の水平地盤反力-変位関係の定式化を行った. これらの非線形バネモデルは地盤の強度や剛性から求め得ることや杭の前面と背面のバネをそれぞれ独立に求めることによって, 杭背面に生じる隙間を表現できることが特徴である. モデルの妥当性を検証するために, 模型粘土地盤中に埋設した杭を変位させる水平載荷実験を行った. その結果, ここで提案したモデルは, ほぼ実験結果と一致することを確かめた.
  • 松尾 稔, 木村 稔, 近藤 寛通, 堤 博恭
    1998 年1998 巻603 号 p. 77-88
    発行日: 1998/09/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    大量に搬出される建設発生土, 泥土, 浚渫土などの建設副産物や石炭灰, 脱硫石膏などの電力副産物は品質などの制約で十分に利用されずに埋立・処分され, 資源・環境面で大きな社会問題になっている.
    このうち, 石炭灰は昔から自硬性のあることが知られている. 本研究では, 石炭灰及び石膏を低品質な土砂の土質改良材として利用することを目的に, 改良要因とその効果の度合い, 最適な配合を把握した. その解析手法として統計手法 (実験計画法と重回帰分析法) を適用し, 少ない実験回数で不良土の初期含水比W0, 生石灰添加率L, 石炭灰添加率F, 交互作用L×F, 石膏添加率Gが不良土改良の重要要因であることを確認するとともに, その添加量の範囲を絞り込んだ.
  • 領家 邦泰, 青木 智幸, 田村 壽夫, 福井 勝則, 大久保 誠介, 松本 一騎, 宮本 義広
    1998 年1998 巻603 号 p. 89-100
    発行日: 1998/09/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究では高取山 (北行) トンネルに使用した硬岩用自由断面掘削機 (MM130R) の掘削中の掘削体積比エネルギーの分布を求め, 岩盤物性と比較・検討を行った. まず本掘削機における掘削体積比エネルギーの求め方について述べた. 次に, 岩盤調査 (弾性波速度, シュミットハンマー, 岩盤観察) 結果と掘削体積比エネルギーの分布を比較した結果, 良好な対応を示し, 岩盤物性の良い指標となることを示した. さらに, 掘削体積比エネルギーのトンネル進行に伴う分布を調べた結果, 掘削体積比エネルギーが小さい部分の分布は卓越する亀裂の方向とほぼ一致し, 岩盤の構造を表現できることを示した. また, 掘削体積比エネルギーと岩盤強度の比は1/3程度であり, TBMの場合と同程度であることがわかった.
  • 西村 伸一, 清水 英良, 藤井 弘章, 島田 清
    1998 年1998 巻603 号 p. 101-111
    発行日: 1998/09/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は, 地盤定数の空間変動と地震発生の統計的性質を考慮した砂質地盤の液状化確率の計算手法を発展させようとするものである. 簡易法では, 動的せん断強度比がN値, 平均粒径, 細粒分含有率などのパラメータによって決定されるが, これらの土質定数は空間的に大きく変動する. また, 地震の発生は本質的に確率現象である. 提案法では, このことを重点的に考慮し, 土質定数の空間分布統計モデルと歴史地震の発生確率モデルが導入されている. また, 液状化に対する最適なSCP地盤改良を決定するための信頼性設計理論を示している.
  • 石崎 仁
    1998 年1998 巻603 号 p. 113-127
    発行日: 1998/09/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    金属塑性力学で, 分岐現象やせん断帯解析によく用いられる‘とがり点降伏曲面理論’, 具体的に Budiansky の変形理論式を再検討し, 非共軸項の持つ意味を明らかにする. 次いで, Mohr-Coulomb 規準に従う弾塑性流れ理論式に非共軸項を付加し, 圧縮性材料の変形理論式を誘導する. さらに, 有限要素法による局所変形解析をするために, 体積変形に対する柔軟性を維持しながらも, せん断変形に対しては鋭敏な特殊有限要素を提案する. 上記構成式と特殊要素を用いて種々のシミュレーションを行い, 連続体解析でも内部摩擦角およびダイレタンシー角とせん断帯の形成角度の関係を表現できることを示す.
  • 小峯 秀雄, 後藤 和生
    1998 年1998 巻603 号 p. 129-138
    発行日: 1998/09/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    薬液注入工法は注入後の改良範囲や改良効果の確認が難しいという問題点を有している. この問題点を解決するため, 著者らは比抵抗トモグラフィを利用した改良範囲評価方法を既に提案した. 本研究では, 現場において試験的に薬液注入を実施し, 比抵抗トモグラフィを利用した改良範囲評価方法の適用を試み, その有用性について調査した. その結果, 提案した方法により判定した改良範囲は, ボーリング調査により目視で改良が確認された範囲とほぼ一致していた. また, 比抵抗の値から改良範囲が認められない場合, ボーリング調査でも改良部は確認されなかった. これらの結果から, 比抵抗トモグラフィを利用した改良範囲評価方法が実際の現場で有用であることが確かめられた.
  • 塚田 幸広, 市村 靖光
    1998 年1998 巻603 号 p. 139-146
    発行日: 1998/09/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    従来, 場所打ち杭の品質管理においては, コンクリート打設後に地中の形状を直接測定することができなかったため, 代替措置として掘削了時の掘削孔の深さを検尺テープで測定していた. しかしながら, 地下水の影響等によりコンクリート打設後に設計通りの杭形状とはならない場合も考えられる. このため, 杭施工後に杭頭に打撃を与え, そのときの杭頭の速度応答から杭長や形状を推定するインティグリティ試験の適用性を調査する目的で, 全国規模で現場試験を実施した. その結果, (1) 概ね3%程度の誤差で杭長を推定できること, (2) 中間層が存在する場合には杭長の推定が困難な場合があること等がわかった. また, 簡便な載荷試験法である急速載荷試験も併せて実施し, 比較的短い杭では十分に実用性があることを確認した.
  • 坪井 正行, 宮地 秀樹, 野本 哲也, 今泉 繁良
    1998 年1998 巻603 号 p. 147-155
    発行日: 1998/09/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    最終処分場の斜面では遮水を目的として遮水シートが用いられ, その天端は抜け出しが生じないように強固に固定されなければならない. 固定工に作用する各種力の中で, 気温降下に伴い遮水シート内に発生する熱応力の占める割合は大きいと言われているが, その評価式は未だ存在しない. そこで, 端部の固定条件を変化させた室内実験及びフィールド実験を実施することにより, 遮水シートの温度と発生する熱応力の関係を検証した. その結果, 遮水シートの種類によって熱応力の大きさが著しく異なることが明らかになった. また, 遮水シートの端部が完全に拘束されたときの実験値は, 弾性熱応力評価式と一致することを示し, 端部拘束力が覆土圧に依存する摩擦力に起因するとき, 熱応力は完全拘束時の値より幾分小さくなることを示し, これを計算するための評価式を提案した.
  • 瀬戸 政宏, 勝山 邦久, Venkata S. Vutukuri, Dilip K. Nag
    1998 年1998 巻603 号 p. 157-166
    発行日: 1998/09/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    岩石強度に及ぼす化学薬剤の効果を破壊形態別に明らかにするために, 砂岩と花崗岩について圧裂引張試験と多段階三軸圧縮試験を3種類の化学薬剤雰囲大中で行った. その結果, 岩石の引張強度は化学薬剤の濃度変化に対して有意に変化し, ζ電位がゼロを示す濃度において最低強度が出現することを明らかにした. 一方, 圧縮強度については化学薬剤, その濃度による有意な差は認められなかった. また, AE計測, 表面硬度測定及びダブルトーション試験結果から, ζ電位がゼロを示す濃度においては純水条件に比較して塑性的な挙動が低下するために岩石表面が硬化してき裂が初生しにくくなるが, 一旦き裂が開口すると急速にき裂が成長するために最低引張強度がζ電位ゼロ濃度で出現すると結論した.
  • 辻 清, 半沢 秀郎, Dam Thi Kim Loan
    1998 年1998 巻603 号 p. 167-177
    発行日: 1998/09/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    世界を代表する海成粘土である有明 (九州), Bothkennar (英国), Champlain (カナダ) および Drammen (ノルウェー) 粘土について, 三笠式一面せん断試験機を用いて実施した一連の一面せん断試験結果について報告する. まず, 正規圧密および原位置応力状態でのせん断強度について報告する. 次いで, 原位置応力状態でのせん断強度と有効土被り圧の関係が2つのパターンに分類されることを示すと共に, せん断剛性率や内部摩擦角についても報告する. 最後に, 一軸圧縮試験, 現場ベーン試験およびコーン貫入試験より得られたせん断強度と一面せん断強度の相関関係について検討を加えた.
  • 水野 直也, 仲村 治朗, 渡辺 浩平, 斎藤 一郎, 西尾 伸也
    1998 年1998 巻603 号 p. 179-190
    発行日: 1998/09/21
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    新第三紀常滑層地盤は固結シルトと砂の互層からなっているため, 掘削時の地盤の安定性と止水のため掘削に先立ち地中連続壁により山留を行なった. 掘削に伴う地中連続壁および周辺地盤の変形挙動を評価するため, 新第三紀常滑層地盤の変形特性を原位置および室内試験により把握した. 本研究では, 変形特性を評価する上で考慮すべき要因として, ひずみ依存性, 拘束圧依存性, 異方性, 乱れの影響の4つを取り上げこれらについて検討を行った. この結果, 固結シルトと砂の両層ともひずみ依存性, 拘束圧依存性は見られたが, 異方性, 乱れの影響はほとんど見られなかった.
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