塩類集積被害が, 将来, もしくは下流域へ移転することの効果を明確化するため, カザフスタンのイリ川事流域について, 5つの異なる灌漑・排水方式の代替案を設定し, シミュレーションにより各代替案の純便益の定量化と比較を行う. シミュレーションは, 粗農業収益評価モジュール, 外部不経済評価モジュール, 将来純便益評価モジュールからなり, 灌漑水量, 社会的時間選好率, 評価期間を主な操作変数とし, 各代替案により生じる将来便益の純現在価値 (NPV) を目的変数とする. 時間的移転については, 社会的時間選考率, 評価期間により純便益の変化する様を定量的に示し, 空間的移転に関しては, 総じて下流域への移転が望ましくないことを得ている.
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