土木学会論文集
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1998 巻, 594 号
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  • 加藤 智博, 徐 開欽, 千葉 信男, 樫内 孝信, 細見 正明, 須藤 隆一
    1998 年 1998 巻 594 号 p. 1-10
    発行日: 1998/05/22
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    本研究では, 浚渫したへドロ上へのヨシ原の創出手法を確立するために, ヨシ種子の発芽特性及び「種子苗植栽手法」による凌深へドロ上での生育特性を把握し, ヨシ原創出の可能性について検討した. その結果, 発芽実験では, 発芽前に浸水状態で5℃5日間保存する「前低温処理」により塩分阻害を克服し得ること, 汽水産種子は淡水産種子より塩分耐性が高いことが確認された. 種子苗の生育実験では浚渫へドロ上に約80~90%の苗が植栽後定着し, 植栽場に砂を用いた系では, 土壌中の塩分濃度が1.3~2.0%でも自生しているヨシと生育, 生活環が植栽2年目で同程度となった. これらの結果より, 種子への工夫及び苗からの環境条件への馴化を行うことで, 種子苗植栽手法は浚渫へドロ上にもヨシ原の創出が可能であることが示唆された.
  • 井上 隆信, 海老瀬 潜一, 今井 章雄
    1998 年 1998 巻 594 号 p. 11-20
    発行日: 1998/05/22
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    農耕地河川の涸沼川における藻類の流出特性をChl-aを指標として, 2年半の毎週調査と季節ごとの詳密調査をもとに明らかにした. 流量安定時のChl-a濃度は, 水温が高いほど, 前回降雨からの経過日数が長いほど高くなった. 降雨に伴う流量増大時には, 先行晴天日数が長いほど濃度が高くなる傾向が見られた. 種々の推定法を用いてChl-a年間流出負荷量の算定を行った結果, 懸濁態の炭素・窒素・リンの流出負荷量に対して藻類の占める比率は, それぞれ13%・23%・7.8%になり, 藻類としての流出負荷量は無視できない結果となった. 藻類の増殖時には溶存態の窒素・リンを摂取しているので, 溶存態の窒素・リンの流出負荷はそれぞれ3.6%・31%減少していることになり, このことからも藻類の流出負荷量が重要であることが明らかになった.
  • 古市 光昭, 奥津 一夫, 田中 俊行, 棚井 憲治
    1998 年 1998 巻 594 号 p. 21-33
    発行日: 1998/05/22
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    高レベル放射性廃棄物処分場の建設はサイト決定後, サイト特性調査・設計・建設・操業・埋戻し (シーリング) のステップで進められる. シーリングの要素技術としては, 埋戻し材, プラグ, グラウトが挙げられ, シーリングコンセプトの構築に当たってはこれらを合理的に組み合わせることが重要である. 本論文ではシーリングにおける要素技術の性能を放射性核種の移行の観点から評価した. その結果, 放射性核種の移行速度を大きくする岩盤緩み域, 割れ目等に対し, プラグ及びグラウトが有効であることを示し, シーリングコンセプトの骨子を提案した.
  • 長藤 哲夫, 今村 聰, 日下部 治, 平田 健正
    1998 年 1998 巻 594 号 p. 35-44
    発行日: 1998/05/22
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    土壌ガス吸引法は揮発性有機塩素化合物で汚染された土壌を浄化する有効な技術である. この方法は土中に空気流れを発生させ, ガス状で揮発性化合物を回収するシステムである. そのため, 汚染地盤全体を均一に浄化するには, 適切な抽出井の配置と, 吸引設備を設計する必要がある. しかし, 土壌ガス吸引法の設計はわが国での浄化実績が少ない. そこで, 筆者らは浄化実績から浄化に影響する地盤特性を抽出し, 分析を行った. その結果, 浄化設計の主要項目である透気半径と透過度は土質別に分類でき定量的把握もできた. また, 浄化効果は熱力学平衡モデルによる浄化効率予想と初期汚染濃度に対する浄化達成率を確認できた. これにより, 土壌ガス吸引法の効率的な設計が可能になった.
  • 細井 由彦, 城戸 由能, 三木 理弘, 角田 政毅
    1998 年 1998 巻 594 号 p. 45-55
    発行日: 1998/05/22
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    ヨシによる栄養塩の吸収及びその刈り取り除去による水質浄化を念頭において, ヨシ原の管理方法を考えるために, 刈り取りを含めたヨシの成長過程に関する現地観測を行った.
    現地ヨシ原において, 春に芽吹いてから枯死するまでの間の, 背丈, 重量, 栄養塩含有量の変化や, 種々の時期の刈り取り後の再成長過程について観測を行った. 地上部の現存量は夏季まで増加しその後減少すること, 栄養塩は春に最大でその後とくにリンにおいて急激な現象が見られることの他, 草丈の分布や成長速度等に関する詳細な結果が得られた. これらをもとに最適な刈り取り時期や, その費用に関する検討が行われた.
  • 井伊 博行, 平田 健正, 松尾 宏, 田瀬 則雄, 西川 雅高
    1998 年 1998 巻 594 号 p. 57-63
    発行日: 1998/05/22
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    茶畑からの湧水には肥料からの硝酸イオン, 硫酸イオンなどの酸性物質と共にアルミニウムイオン, リンなどが多量に含まれている. 湧水が池に入ると, 光合成, 脱窒, 硫酸還元によって, 中和され, 場合によっては, アルカリ性にもなる. 池内での短期間のpHの大きな変化には, 窒素, リンによる池の富栄養化に伴って起こる光合成が大きく貢献していた. 年間通じての硝酸イオンの池内での消失には, 脱窒が関与していたと考えられる. 池の水が中和されることで, 湧水に含まれていたアルミニウムイオンは水酸化物として沈殿し, 硫酸還元によって硫酸イオンも池から除去されたと考えられる. リンは生物 (有機物) として池内に貯蔵された. 池内で, 有害なアルミニウムイオンや硝酸イオンの濃度が下がるため, 池の存在は重要と考えられる.
  • 山本 裕史, 滝上 英孝, 清水 芳久, 松井 三郎
    1998 年 1998 巻 594 号 p. 65-72
    発行日: 1998/05/22
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    都市下水の終末処理場の活性汚泥処理槽前後の水試料についてXAD-2を用いた濃縮をおこない, その後フミン酸添加および無添加の条件で枯草菌 Rec-assay に適用した. その結果, フミン酸添加は流入水にはDNA損傷性緩和効果がみられなかったが, 流出水はフミン酸添加濃度が高くなるにつれDNA損傷性がわずかに緩和された. 次に, 3種のDNA損傷性物質に対しフミン酸添加および無添加におけるXAD-2による回収率についても比較検討したが, 有意な差はみられなかった. さらに, その3物質をフミン酸添加および無添加の条件で枯草菌 Rec-assay に適用したところ, 疎水性の高い Pyrene や Benzo(a)pyrene のDNA損傷性は大きく緩和されたが, アミノ基を有する比較的親水性の高い 1-Aminopyrene には緩和効果は小さかった.
  • ラヒム イリシャット, 柿本 大典, 今井 剛, 浮田 正夫
    1998 年 1998 巻 594 号 p. 73-83
    発行日: 1998/05/22
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    森林植生の特性が森林流出水に及ぼす影響を調べるため, 人為的影響の少ない水道水源の水質分析を行った. その結果から森林流出水の水質は概して良好であり, 広葉樹林面積率・針葉樹林面積率と流出水のTOC, COD濃度との間には相関が得られ, 森林植生による森林流出水質への影響が認められた. また, 河川上流域の植生・土地利用状況が水源涵養機能および水質に及ぼす影響を明らかにするため, 河川上流域の植生・土地利用形態と渇水年・豊水年の水文・水質データの解析を行った. その結果から広葉樹林の保水機能が発達し, 面積率の高い方が低水流出率が大きい傾向があり, 針葉樹林の方が水の蒸発散量が大きく, 渇水年では気温による年平均流出率への影響が大きいことがわかった.
  • 雑用水利用施設に対するアンケート調査を基にして
    杉本 留三, 荒巻 俊也, 松尾 友矩
    1998 年 1998 巻 594 号 p. 85-93
    発行日: 1998/05/22
    公開日: 2010/08/24
    ジャーナル フリー
    東京都における雑用水利用の現状について雑用水利用施設の管理者と利用者にアンケート調査を行った. 管理者へのアンケートでは建物属性, 施設特性, 管理体制, 水質, 過去の事故, コスト, 意識について質問し, 利用者へのアンケートでは雑用水に対する印象, 雑用水利用の意義について質問した. その結果, (1) 原水として便所排水を用いている場合は事故や苦情の件数などが増えていること, (2) 膜処理を用いている施設は生物処理主体の施設よりもコストが高く, また厨房排水を原水とすると問題が多いこと, (3) 利用者については雑用水を利用していることを知っていた人は知らなかった人よりも印象がよかったこと, (4) 管理者, 利用者ともに水の再利用は導入していくべきであると思っていること, などの課題が得られた.
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