本研究は,「製品の使い方」における錯綜するコミュニケーション体系を,記号論により,明らかにしようとしたものである。(1) 操作部,アウトプット部による事物の体系と,取扱説明書,製品上の操作説明などの言語の体系との関係は,対象言語とメタ言語との関係であり,事物の体系の,記号表現,記号内容をまとめて,メタ言語の記号内容として把握し,新たに記号表現を設定する「入れ子構造」の関係になっている。(2) 事物の体系は,記号表現が客観的な記号内容を意味するデノテーションとして,「使い方」を説明し,その「使い方」を,一つの記号表現とするコノテーションが,わかりやすさ,使いやすさ,信頼性などを,記号内容として表示する。(3) 取扱説明書以外に,製品上あるいはCRT上の説明文,説明語なども,メタ語である。特にエレクトロニクス製品の操作部,表示部などの対応する機能を示すのに,事物の体系の記号では,連合づけが難しく,メタ言語は不可欠なものになっている。
抄録全体を表示