デザイン学研究
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46 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 金 孝卿
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 4 号 p. 1-10
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    日本と韓国における卍字紋と巴紋(太極紋)は, 幾何学的紋様として, 装飾・紋様領域のなかで重要な位置を占めている。特に卍字紋と巴紋(太極紋)は釣り合いのとれたダイナミックな造形として知られている。両国における卍字紋は, 豊かなバリエーションがあり, 図(figure)と地(ground)の相互関連によって形成される構造をもっている。卍字紋の原型は, 四つ巴紋から変遷された十字形であり, 巴紋と太極紋の原型は, 波状や螺旋の変化形とも言える。巴紋・太極紋の形体は, ともに回転性をもち造形的に一見近似にみえる。巴紋は, 勾玉と勾玉の間に新しく生成されたパターンであり, 太極紋は, 勾玉と勾玉が逆対称した紋様として、基本的には異なる形体で形成されている。両国の卍字紋と巴紋(太極紋)は, それぞれ意味や形体が異なるものの, 回転のシンメトリー性をもった数理的造形である点は共通している。
  • 三井 直樹
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 4 号 p. 11-18
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本論文では印象派絵画とフラクタル幾何学との関わりを検証し, 印象派絵画のフラクタル性を明らかにしたい。印象派の画家たちは戸外での自然観察による制作をするようになり, それに伴い, 「筆触分割」と「視覚混合」という新しい手法を使い20世紀美術に革新をもたらした。また, 生き生きとした自然を再現するために日本美術に見られる大胆な構図の切り取り, 俯瞰構図などを積極的に取り入れた。フラクタル幾何学は従来のユークリッド幾何学では定量化することのできない様々な自然の形を扱うことができることが知られている。フラクタル幾何学では自己相似性がその重要な概念となっているが, 自然の形体や色, 自然光が再現された印象派絵画もこのフラクタルの特性を持ち合わせているはずである。本稿ではフラクタル幾何学を, 美的価値をはかる一つの客観的なバロメータとして捉え, 印象派絵画に表現された様々な造形要素を検証し, 具体的な作品の事例を通して新しい解釈を試みる。
  • 岡田 栄造, 寺内 文雄, 久保 光徳, 青木 弘行
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 4 号 p. 19-26
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    特定の語を容易に検索できる電子テキストを利用することでデザイン史研究の史料収集は格段に容易になるが, 同時に多様な記述から有用な情報を得るための分析手法の確立も必要となる。本研究はその手法を確立するための具体的な試みとして, 椅子を事例として文学作品における修飾表現の分析を試みた。市販のCD-ROMに収録された100冊の文学作品を資料とした。まず, 検索システムを利用して「椅子」という語の修飾語を取り出し, それらを「印象・評価」「属性」「関係性」という三つの要素に分類してそれらの関係を示した。次に, 椅子の属性, 特に素材に関して具体的な考察を行なった。その結果, 「籐」という語と「縁側」など住空間の周縁部を指す関係性の修飾語との対応関係が明かになった。さらに詳細な考察を行ない, 昭和戦前期の文学表現において籐椅子が夏の季節感と日本的な空間の表象として機能していたこと, そうした籐椅子のイメージが1950年代の籐家具ブームを契機に失われていったことを示した。
  • 武井 玲子, 伊藤 紀之
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 4 号 p. 27-34
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    生活者に対する環境リスクコミュニケーションのあり方および容器包装のデザイン方法に必要とされる視点の検討を目的に, 生活者を対象として環境リスクおよび詰替容器に対する関心度, 環境保全行動の実行度, さらに環境ラベルや指標などの環境表現に対する要望や受け入れ性について調査した。その結果, 環境表現の要望は高く, それは, ばくぜんとした不確かな表現ではなく, 科学的データに基づいた表現が期待された。さらに, 詰替実態調査と共にライフサイクルアセスメント(LCA)手法による詰替品と本体の環境負荷量を求め, 詰替行動が環境負荷低減になることを確認した。一方, 詰替容器に対する環境表現は, 将来的にはLCAデータに基づくことが期待されるが, LCAの課題や生活者の受け入れ性などから現時点では, 簡単な表現, たとえば, 使用樹脂の種類と量など, で十分と考えられた。環境リスクコミュニケーションは, 意識の高い生活者やオピニオンリーダー, 学校教育やマルチメディアなどの積極的活用, が効果的であり重要であることを明らかにした。
  • 橋本 創造
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 4 号 p. 35-42
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本研究では, ヘルベルト・W・フランケのコンピュータを使う造形に関わる1962年までの業績を明らかにした。フランケは, 1950年代から, 芸術用のアナログ・コンピュータの開発を始めた。やがて開発したコンピュータで, 回路を選んで適切に組み合わせ, 知的に制御をすることで画像を生成して, オシロスコープなどに出力をした。フランケは, その出力結果を写真撮影した。そして1956年以降, 学術誌や専門誌や展覧会などで発表をした。彼は, それ以前にはなかったような造形に成功し, デザインの発展に貢献した。
  • ドゥディ ウィヤンチョコ, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 4 号 p. 43-52
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本論文は, 坐具デザインの視覚的特徴(構造的, 機能的, 美学的な側面)が内包する社会文化的意味の理解に向けて, 意味性の相関・体系を検討したものである。事例研究の対象としたインドネシア・ジャワ民族における坐具デザインの形態, 構成要素, 装飾の三要素とそれらの象徴的な意味を, 非言語コミュニケーション理論における記号の生成過程と対応させながら, 検討を行なった。その結果, 以下の知見が得られた。(1)坐具デザインの社会文化的意味の表象は, iconic, indexical, symbolicの三つのコードを通じてなされる。(2)これら三つがコードとなって, 人びとの意識のなかに内在する神話やシンボルなどに対する社会的了解が坐具デザインの視覚的要素の意味認識に結びつけられていく。また, ジャワ民族の認識に内在する神話には, 宗教的, コスモロジ的, 環境的, 慣習的の四つの世界観がみられる。(3)システマティックに意味づけられていく記号生成過程の検討を行なうことによって, 坐具デザインの象徴的意味の体系を理解できるとともに, 製品の象徴的機能に関する認識を深めていくことができる。
  • ドゥディ ウィヤンチョコ, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    1999 年 46 巻 4 号 p. 53-62
    発行日: 1999/11/30
    公開日: 2017/07/21
    ジャーナル フリー
    本稿は, インドネシアのジャワ民族を調査対象とし, 坐具の表象的機能に関する人びとの評価を調査することによって, 坐具のもつ文化的価値を明らかにしようと試みた事例研究である。現代のジャワ民族の坐りの文化に関するアンケート調査・現地踏査を通して, (a)礼儀正しい/礼儀正しくない, 心地よい/心地よくない, 正式的/略式的など, 日常生活における坐り姿勢の社会的・文化的価値, (b)文化的表象として評価される坐具のイメージ構造を解析した。その結果, 以下の知見が得られた。(1)正式的な場での礼儀正しい座りが必ずしも心地よいものではないのに対し, 略式的な場における礼儀正しくない坐りは多くの場合心地よいと考えられている。(2)現代は, 椅子坐り姿勢における生理的心地よさのような実用的側面における坐具デザインの機能性が尊ばれるのに対し, 共同体的社会に特有な象徴的要素や坐り姿勢などの文化的諸要請に根ざした象徴的側面が軽んじられる傾向にある。(3)文化的産物としての坐具のデザイン的発展は, 技術的機能の改良のみならず, 文化的表象機能の統合によって達成される。
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