本論文は, 坐具デザインの視覚的特徴(構造的, 機能的, 美学的な側面)が内包する社会文化的意味の理解に向けて, 意味性の相関・体系を検討したものである。事例研究の対象としたインドネシア・ジャワ民族における坐具デザインの形態, 構成要素, 装飾の三要素とそれらの象徴的な意味を, 非言語コミュニケーション理論における記号の生成過程と対応させながら, 検討を行なった。その結果, 以下の知見が得られた。(1)坐具デザインの社会文化的意味の表象は, iconic, indexical, symbolicの三つのコードを通じてなされる。(2)これら三つがコードとなって, 人びとの意識のなかに内在する神話やシンボルなどに対する社会的了解が坐具デザインの視覚的要素の意味認識に結びつけられていく。また, ジャワ民族の認識に内在する神話には, 宗教的, コスモロジ的, 環境的, 慣習的の四つの世界観がみられる。(3)システマティックに意味づけられていく記号生成過程の検討を行なうことによって, 坐具デザインの象徴的意味の体系を理解できるとともに, 製品の象徴的機能に関する認識を深めていくことができる。
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