デザイン学研究
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67 巻 , 3 号
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  • 佐々 知栄子, 宮澤 以鋼
    2021 年 67 巻 3 号 p. 3_1-3_8
    発行日: 2021/01/31
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

     プロダクトデザインの開発においては,適切な機能や外観を得るためにその指針となるデザインコンセプトを如何に形成するかの方法論が求められているが,これに対するデザインの要求側と実施側に認識上の差異が存在する。本稿では,デザインコンセプトについて考察し,認知科学の見地から内包と外延の意味において意味論的に定義可能なことを示し,さらにデザインコンセプトは集合の要素による直和表現に帰着させ,最終的に選言標準形に基づく表記を得る。この選言標準形をポジショニングマップに表示させ,集合の性質を利用してデザインの要求側と実施側両者の間を結びつける実現手法を提案する。提案手法を検証するために,3Dプリンターで試作したコップを商品市場と想定し,これを限定的な範囲で小規模の調査によりポジショニングマップを作成し,コップの商品市場に機能や外観を得るための新たなデザインコンセプトの形成が可能であることを示した。

  • ―不便益性を持つ事物のデザイン方法の探求として
    前川 正実
    2021 年 67 巻 3 号 p. 3_9-3_18
    発行日: 2021/01/31
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

     本稿における研究の目的は,不便な事物が使用される理由,そこから得られる益の性質,そして不便益性のある事物のデザイン検討に求められる要件のいくつかを明らかにすることである。その手段として,不便益性を持つ「素数ものさし」が使用される様子の観察,ヒアリング,内面観察等を通して,使用過程のユーザーの思考と行動を把握し分析と考察を行った。その結果,以下を示すことができた。不便益は企画者やデザイナーが事物に組み込んだ副目的の達成過程で生じる。副目的の設定は不便益性のある事物の企画とデザイン検討における要点である。事物が不便であるのに使用されるのは,ユーザーの思考や行動を引き起こす要素が組み込まれているためである。不便益は由来と性質により三種類に分類できることが示唆された。その一つ目は,安心感,楽しさ,充実感等の根源的満足である。二つ目は,思考や行動を方向付けて実行する態度等を獲得し強化する益である。三つめは,当該不便の克服に必要な知識や具体的なスキルを獲得し強化する益である。

  • ─東日本大震災の災害公営住宅におけるリビングラボ実践にもとづく分析
    赤坂 文弥, 中谷 桃子, 井原 雅行, 本江 正茂
    2021 年 67 巻 3 号 p. 3_19-3_28
    発行日: 2021/01/31
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

     近年,生活者を長期的に巻き込みながら,サービスや製品を共創するリビングラボ(LL)が注目を集めている.LL は,生活者との長期的な共創活動を前提としたデザイン方法論であり,生活者との共創を効果的に進めるための知(共創ノウハウ)を明らかにすることが重要である.そこで本研究では,LL における共創ノウハウを明らかにすることを目的とする.そのために本研究では,「やって・みて・わかる」というデザイン実践にもとづく研究アプローチを適用した.具体的には,本研究ではまず,東北地方の災害公営住宅におけるコミュニティ形成・活性化を対象としたLL を実践した.その後,その実践過程を振り返ることで,LL における共創ノウハウを分析・整理した.その結果,LL における生活者との共創を効果的に進めるために「達成すべきこと」と,それを達成するための「具体的な行動(ノウハウ)」を構造化したモデルを構築した.本モデルは,LL 実践者が実施すべき具体的な行動を提示するため,LL プロセスの企画や運営において有効に利用可能であることが期待される.

  • ─日立製作所におけるデザイン言語開発を事例とした考察
    池田 稔, 大澤 隆男, 熊谷 健太, 古谷 純
    2021 年 67 巻 3 号 p. 3_29-3_38
    発行日: 2021/01/31
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

     本稿は,日立製作所が2005年から2007年に実施した,多様な製品群を対象としたデザイン言語開発の枠組みについて述べるものである。そのプロセスや成果について具体的な実施例を示しながら報告することで,その有用性と展開の可能性について考察するものである。ここで扱うデザイン言語とは、製品の色彩や造形の表現を対象とする。
     デザイン言語開発の枠組みは,大きく3つの活動から成っている。一つ目は、複数のデザイン言語開発を、一貫した考え方に基づいて行うためのデザインフィロソフィーの設定である。二つ目は、ユーザーの視点に基づいた製品カテゴリーの再分類である。三つ目は、前述2つの活動を踏まえた、具体的なデザイン言語の開発である。これらの活動をまとめ、デザイン言語開発の枠組みとした。本報告では、この枠組みについて詳しく述べるとともに、実際にそれを活用して行った生活家電製品とATMのデザイン開発の事例を紹介する。

  • ─日本製の商標・ラベル・パッケージに描かれた装飾フレームに関する考察
    工藤 遥
    2021 年 67 巻 3 号 p. 3_39-3_48
    発行日: 2021/01/31
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,主となる図柄などの情報を引き立てる目的をもって,その周囲を縁取る形で施される装飾を「フレーム(Frame)」と呼称する。日本において平面作品にフレームが使用され始めたのは,西洋諸国との貿易が開始された明治時代である。本研究では,明治時代の日本の商標・ラベル・パッケージを収集した後,フレームの造形要素と表現のみに注目し,モチーフに応じて分類を行い,①植物,②動物,③道具,④幾何学に区分した。さらに,明治時代のデザイン運動の流れと商品についての関係に加え,商品別のフレームデザインの分類と傾向を分析した。その結果,明治日本においては植物をモチーフとしたフレームが最も多く制作されたこと,商品の販路の国内外別によって好まれた表現に違いがあることが確認できた。フレームデザインの中には身近な日本の植物や和柄,日本独自の家紋が取り入れられている例も多く,日本人が外来の概念であったフレームを吸収し,独自に発展させていたことを明らかにした。

  • 横井 聖宏, 中島 瑞季
    2021 年 67 巻 3 号 p. 3_49-3_56
    発行日: 2021/01/31
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

     本研究では,無彩色の平面で表現された写真,絵画などの作品の印象や季節感を演出する要素として,作品を照らす展示照明の活用可能性を検討するため,照明の色温度と照射位置を要因として取り上げて,これらがモノクロ写真作品の印象と季節感に与える影響を評価実験によって確かめた.実験では,20枚のモノクロ写真作品を1枚ずつ無作為な順番で壁に展示した状態で実験参加者に呈示し,5枚ごとに作品を照らす展示照明の色温度と照射位置の組み合わせを変更したうえで,それぞれの作品に対して7段階SD 法による印象評価と5段階評定尺度法による季節感評価を求めた.その結果,展示照明の色温度や照射位置によって,作品の印象や季節感に有意な差が認められた.また,照射位置は季節感に直接的な影響を与え,色温度は明るさ感の印象を変化させることで間接的に季節感に影響を与えるという有意な因果関係が認められた.ただし,これらの影響は小さく,作品に対する評価や解釈をまったく異なる方向に変化させるようなものではないと考えられる.

  • 岩藤 百香, 松本 正富, 青木 陸祐
    2021 年 67 巻 3 号 p. 3_57-3_64
    発行日: 2021/01/31
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

     本研究は,治験のインフォームド・コンセント用説明文書が患者に与える印象に着目し,文書の改善に有用なビジュアルデザインの要件を抽出することを目的とした.先に,比較対象として一般的に用いられる様式の文書(一般モデル)と,同じ内容で言語による情報の質や量を保持しつつ,効率よい情報伝達の指針「ミニマム・エッセンシャルズ(可視性・注視性・記憶性・的確性・造形性・時代性)」に即したデザイン操作を行った文書(デザインモデル)を作成した.両モデルに対する印象評価の比較では,デザインモデルの満足度は高く,明るさ・暖かさ・にぎやかさなど精神を高揚させる印象尺度の評価に効果が認められた.また,新たに文書の印象を構成する「楽観性・親近性・明朗性」などの情動的な心因因子が把握され,患者の心を慰撫するビジュアルデザイン要素による心理的支援を行うことの有効性が認められた.

  • 小林 桂, 長田 一馬, 星野 准一
    2021 年 67 巻 3 号 p. 3_65-3_74
    発行日: 2021/01/31
    公開日: 2021/02/20
    ジャーナル フリー

     近年のグローバル化に伴い,異なる文化を持つ人が,互いの文化的違いや価値を受け入れ,新たな関係性を創造することを目指す多文化共生が重要となりつつある。文化を理解するためには,知識の習得だけでなく,価値観を感じることが重要である。本研究では身近な文化は親しみやすく,理解しやすいと考え,風呂敷を題材とした。風呂敷の包み方に加え,行動に含まれる価値観を伝えるために風呂敷で物を包む行動を画像認識技術と映像プロジェクションにより拡張し,包む工程によって金魚の映像が変化するシステムを制作した。金魚が反応することで,利用者の興味を惹きつけると共に包む行動を意識させる。アンケートから利用者は興味を持ちながら文化体験でき,行動や物の価値観を感じることが確認できた。

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