デザイン学研究
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49 巻, 3 号
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  • 張 英裕, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 3 号 p. 1-10
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本論文は、台湾における寺廟建築の装飾技術「剪粘」を支えた職人集団の出自と組織構成の解析を中心として、その実像を明らかにしたものである。歴史的資料の解析、ならびに、「剪粘」職人へのインタビューを通し、次の諸点を明らかとしてた。(1)台湾における「剪粘」職人の起源は、17世紀後半に中国大陸東南海岸一帯から渡台した漢人たちが、寺廟建設のために招請した中国大陸の建築職人である。(2)建築職人は、大別して「大木」「小木」「土水」「石作」「漆絵」「陶塑」から構成されていたが、「剪粘」は、「泥塑」「交趾陶」とともに、「陶塑」に帰属していた。(3)「剪粘」の職人集団は「師匠」「出師」「未出師」からなり、技術伝承は「異姓拝師」「家族伝授」による「師徒制」に依拠していた。(4)個々の「剪粘」職人集団には請負仕事における空間的テリトリーがあり、たいていの場合、テリトリーの遵守が規範とされていた。(5)1970年代からの台湾の工業化の伸展とともに、「専用陶片」や既製の装飾部材が出現し、伝統的な寺廟の装飾技術としての「剪粘」は衰退の一途を辿っている。
  • 井上 拓也, 原田 利宣, 榎本 雄介, 森 典彦
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 3 号 p. 11-18
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    商品企画者やデザイナーには,製品の形態要素とイメージとの関係を知識として得たいという要望がある.また,近年,ある結果(例えばイメージ)を成立させるための最も少ないカテゴリー(形態要素)の組み合わせを得ることができるラフ集合(Pawlak,1982)が注目されている.そこで,本研究では自動車のフロントマスクデザインをケーススタディとし,ラフ集合を用いて形態要素とイメージとの関係を明らかにし,デザインコンセプト立案への応用を試みることを目的とした.以下の3つに関して研究を行った.(1)ラフ集合による縮約と数量化理論第II類との推論結果比較を行った.(2)縮約併合アルゴリズムによるデザインシミュレーションを行った.(3)多人数における縮約併合アルゴリズムの開発を行った.その結果,ラフ集合によって得られる縮約やそれら縮約の併合により,デザインコンセプトへ用いることができる知識の獲得が可能であることが考察された.
  • 武井 玲子, 伊藤 紀之
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 3 号 p. 19-26
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    今後多種多様な家庭用化学品の市販が予想されるが,これらの使用による人体や環境リスクが存在する。一方,生活者は自己責任による自立した生き方が求められており,自らがリスクを低減する必要がある。そのためには,生活者視点に基づくリスクコミュニケーションの果たす役割が大きい。そこで,効果的なリスクコミュニケーションをデザインすることを目的に,1)長年に亘って継続している台所用洗剤の手荒れ問題に対するリスクコミュニケーションの事例研究,2)情報化社会が進展する中で生活者が求める商品の使い方や環境に関する情報内容や入手媒体について生活者調査を行った。その結果,(1)市販前の生活者の使用実態調査に基づいて企画デザインされるリスクメッセージが重要であること,(2)入手媒体としてインターネットへの期待が大きいが,従来型媒体も含め複数媒体の有効活用および質・量共に充実した情報内容が期待されていることが明らかとなった。
  • 武井 玲子, 伊藤 紀之
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 3 号 p. 27-34
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    生活者が日常的に使用する化学物質を配合した家庭用化学品に対しては,リスク評価システムの体系化研究やリスク評価研究が不十分であり,時として人体被害が報告されている。そこで,家庭用化学品の人体への健康被害を未然に防止することおよび新生活提案型家庭用化学品を企画デザインする際に活用されることを目的として,生活者視点に基づいた家庭用化学品の人体リスク評価システムの開発を行った。具体的には,(1)生活者の使用実態調査から暴露量を把握し評価する市販前のリスク評価,(2)市販後,実際の使用場面で発生した生活者からの苦情情報などを取り込んだ市販後のリスク評価,(3)リスク評価結果に基づいてリスクを低減化するための製造業者から生活者に実施するリスクコミュニケーションの検討を含めたリスクマネジメント,の3つのプロセスからなる総合的な人体リスク評価システムの提案である。
  • 赤松 明, 久下 靖征, 岩田 良子, 森 昌子
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 3 号 p. 35-40
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    労働作業現場における安全標識は,労働災害防止対策の重要な役割を担っており,さまざまな現場で使用されている。しかし,図とフレームと地の色彩の配色については定められてはいない。そこで,安全標識の配色が,認識評価に及ぼす影響を検討した。その結果,安全標識の持つ意味が,禁止,注意,指示と異なっても配色を黒・黒・黄(図・フレーム・地)とすれば識別評価の高い配色となることが明らかになった。また,適切評価と配色との関係は,安全標識の持つ意味が,危険,注意,指示によって異なり,危険標識には黒・赤・白,注意標識には黒・黒・黄,指示標識には黒・黒・黄および黒・緑・白の配色にすれば適切評価が高められることが示唆された。
  • 石川 重遠
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 3 号 p. 41-50
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本稿では、イギリスの印刷ビラと見出し書体について15世紀後半から19世紀後半までの変遷を考察した。その結果、以下の結論が得られた。1)産業革命以前、印刷ビラの大半は公告ビラであり、それらの見出し書体には、主にオールド・スタイル・ローマン体が用いられていた。2)産業革命期には、広告用印刷ビラの需要が増大した。19世紀初頭に、大型で超特太、モダンで目立つ見出し専用書体が創出された。これらの書体は、好評を博し、イギリスは、見出し活字書体の分野で世界をリードすることになった。3)初期のビラ用見出し書体は、タイプフェイス・デザイナー達に大きな影響を与え、彼等は、新たな見出し書体を多数デザインした。その結果、イギリスでは、独自のタイポグラフィの世界が発展した。そして19世紀中期にイギリスの印刷ビラは、最盛期を迎えることとなった。
  • 富松 潔, 横尾 誠
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 3 号 p. 51-60
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    アイゲイズデバイスは、ユーザがコンピュータ操作をする際に手を使わないインタフェースを提供でき、障害者の為のバリアフリーデザインを促進する。本研究はインタフェースデザインの為の予備的な実験と考察を行うもので、以下の実験により操作する際のユーザビリティー特性を求めた。実験1:マウス操作とアイゲイズ操作の入力比較 実験2:数字キーの配列の違いによるアイゲイズ入力特性 実験3:注視点の移動方向の違いによるアイゲイズ入力特性 その結果、以下のような議論が展開できた。1)アイゲイズインタフェースでは選択に関る負担とクリック操作に関る負担が両方とも増加する。2)画面上にGUIをレイアウトする際の配列方法は入力の速さには影響を与えない。3)ボタンを円形に並べたものと比べて、同一直線上に並べたものに誤操作が多い。4)ユーザインタフェースの誘目性の観点に、ボタンと背景の色差や明度差、クロスカーソルの応用などを加える必要がある。
  • 原田 利宣, 石田 智子, 吉本 富士市
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 3 号 p. 61-68
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    自動車インテリア評価に関する既存研究例には,写真や2次元CG,実車を用いて評価したものが多い。写真や2次元CGは室内空間という臨場感に欠け,実車は精度が高くリアルだが,意図した形態要素を含んでいるとは限らない。そこで,本研究では立体感,スケール感を再現できるVRシステムを用いてより精度の高いデザイン評価を行うことにより,インスツルメントパネルを構成する形態要素と印象との関係を明確化することを目的とした。まず,既存車39車種のインパネを計測し,プロポーション,面構造,曲線(面)の3つの視点から分析を行った。それによりインパネ形状に影響を与える形態要素を抽出し,それらを用いて実験計画法によるVRモデルの作成を行った。次に,作成したVRモデルを10語の評価用語を用いて評価実験し,主効果を求め,分散分析,t検定を用いてどの形態要素がどのような印象に影響するのか調査した。その結果,各評価用語に対し影響すると考えられる形態要素が抽出された。
  • 松岡 由幸, 森田 敦
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 3 号 p. 69-76
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    現在,ユーザの安楽姿勢確保を目的とした鉄道車両用シート機構の設計が数多く行われている.しかしながら,それらのシート機構に関して,安楽姿勢確保に対する設計上の優先度は明確化されていないのが現状である.また,鉄道車両は公共物であるため,ユーザの個人差が大きく,従来の平均的な場を想定した設計では評価が低くなる問題が見うけられる. そこで,本研究では,ロバスト性を踏まえ,安楽姿勢確保に対して有効なシート機構を選定し,さらにそのシート機構の最適化を行うことを目的とする.まず,ファジィAHPを用いてシート機構の安楽姿勢確保に対する優先度解析を行った.これにより,中折れ機構とシートスウィング機構が高い優先度を示し,有効なシート機構として選定された.次に,選定されたシート機構に対し,過去に提案された多様場対応型ロバスト設計方法を用いて最適化を行った.その結果,中折れ機構の搭載によりシートスウィング機構に必要なクッションアングルが増大することを確認し,多様場に対してロバストな最適解を求めた.
  • 工藤 芳彰, 宮内 哲
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 3 号 p. 77-84
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本稿は『ステューディオ』誌創刊者チャールズ・ホーム(1848-1923)の経歴を文献調査と実地調査をもとに検証した。ダービーの商家に生まれたホームは、20〜30代をブラッドフォードの梳毛製品や東洋の工芸品を扱う貿易商として過ごした。一方、40代以降は自ら設立した出版社の代表として、またジャパン・ソサイエティの主要メンバーとして過ごした。この1890年頃を境とする変化は、ホームが商売をとおして東洋諸国、なかでも日本の美術・工芸品に触れたことにはじまる。彼は同じく日本に関心をよせるC・ドレッサーやA・L・リバティら、当時のデザイン動向に多大な影響を与えたデザイナー、知識人と親しく交流した。このことによってホームはアーツアンドクラフツ運動に共感し、ホワイトの協力を得て雑誌創刊にいたった。ホームの編集・出版活動が日本研究や、アーツアンドクラフツ運動の理想の一つとされた中世の生活を実践した、アプトングレイでの住生活と平行しておこなわれ、それぞれがリンクしていたことは注目すべきである。
  • 西濱 豊和, 萩原 祐志
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 3 号 p. 85-92
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は,電車内へ持ち込むための自転車のデザイン開発を実施したものである。その過程において,電車と自転車に関係する立場の人々に評価と意見を求め,その結果をデザインに反映させた。電車に自転車を持ち込むことに関する規定を定めている立場からの評価は鉄道会社に依頼した。製品を販売する立場からの評価は自転車の販売店に依頼した。自転車の技術に関する立場からの評価は自転車の開発に関わっているエンジニアに依頼した。こうして得られた評価や意見を踏まえ,調査用の模型を実物の大きさで制作した。この模型を使って,実際に電車に持ち込むための妥当性に関する調査を実施した。調査方法は既存製品の一例と提案したデザインとを比較するものとした。その結果,鉄道会社への持ち込み許可,技術,ユーザ評価に関して,提案したデザインの妥当な部分が示された。
  • 松岡 由幸, 藤井 健史
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 3 号 p. 93-102
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    筆者らは,過去の研究において,多様な形状を生成する方法を提案した.その際,自然界において多様性を有する生物の形態形成に着目し,形態多様性を生起させると考えられる誘導および頂部支配をセルラ・オートマトンにおける状態遷移関数への入力ベクトルに応用した.本報においては,過去に提案した形状生成方法の有効性についての検証を行った. まず,ISMを用いて,形態多様性を生起させる生物の発生特性を特定した結果,誘導および頂部支配が形態多様性を生起させる発生特性であることが確認された.つぎに,状態遷移関数への入力にランダムなベクトルを用いて形状生成方法を実行し,誘導および頂部支配の各々の有無による生成形状の多様性と形状生成の効率性との関係について比較を行った.その結果,誘導と頂部支配を組み合わせることにより,ランダムなベクトルを用いた場合と比較して,効率性を保持しながら高い多様性を有する形状が生成されることが示された.以上より,誘導および頂部支配を応用した本方法の有効性が確認できた.
  • 桐谷 佳惠, 陳 郁佳
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 3 号 p. 103-110
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    視覚シンボルは、非言語コミュニケーションでの重要な道具の一つである。本研究では、広告における視覚シンボル認知に対するデザイン経験の影響を確認する。用いた視覚刺激は、台湾の既存広告から言語情報をすべて取り除いた絵、被験者は、台湾人と日本人それぞれのデザイン学専攻生と他専攻生である。実験1では、台湾人被験者が、各刺激に相応しい広告のキャッチフレーズを選んだ。その結果、1)デザイン学専攻生は比較的抽象的な言語表現も視覚刺激と対応させるが、他専攻生はそうではない、2)視覚刺激が手とハートでは、手の方がキャッチフレーズとして直接的言語表現を必要とした。実験2では、日本人被験者が、各刺激に相応しい広告対象を考え出した。その結果、デザイン学専攻生の方が、1つの視覚刺激から多様な言語表現をした。つまり、デザイン経験の有無は広告における視覚シンボル認知の仕方に影響し、デザイン経験のない者は、視覚シンボルと言語情報の直接的な結びつきを好むことが示された。さらに本研究では、視覚シンボルの直接的伝達と間接的伝達の問題も提起された。
  • 鵜飼 達彦, 長尾 徹, 永田 喬, 釜池 光夫
    原稿種別: 本文
    2002 年 49 巻 3 号 p. 111-120
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    鉄道路線図は、公共性の高さにも関わらず、公的な基準がなく、路線図デザインの先行研究も少ない。本論は鉄道路線図デザインの基本となる路線網の普遍的な位相図化における路線結節部の駅シンボル表記方法の確立を目的とした。本論におけるシンボル単体の図形記憶実験と路線図上での記憶実験から路線図の記憶に関して駅表記方法の影響はないことが判明した。また結節駅に求められる要素を含んだ6種の表記方法の検索実験の結果にも差がみられなかったことから、路線図の記憶・検索性は位相図としての形状が適切であれば良いことが確認された。つまり、駅に必要な情報が含まれていればデザイナーの裁量で形状を決定しても差し支えないと言うことである。次に「親しみやすい」「美しい」を評価項目として結節駅に求められる情報を含んだサンプルに対し一対比較を行い、真円表記で路線の位置関係が示されている形式が最適な表記法であることが判明した。
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