本研究は, 前論文に引き続き, 周辺視の色覚メカニズムの問題を扱った。本研究では, 前論文で構築したモデルと矛盾のない周辺視におけるred-green(r-g)およびyellow-blue(y-b)の反対色過程のモデルについて考察した。本モデルでは, 反対色過程の分光感度は, それぞれ三種の錐体分光感度の一次式で表せると仮定した。また, 本モデルでも, 前論文と同様, 三種の錐体は黄斑色素の影響を受けるが, 正味の分光感度特性は網膜位置にかかわらず不変であるという仮定を設定した。その結果, 前論文で明らかになったS錐体の黄斑色素濃度の変化に対する反応補正機構は, y-b反対色過程の反応にも直接的に影響を及ぼすことが明らかになった。つまり, 本モデルにおいて得られた周辺視での最適なy-b反対色過程のb反応は, 中心窩と周辺部位の黄斑色素濃度差の変化を補正するように, 周辺部位で正味の感度が低下する特性を示したのである。したがって, 前論文のモデルと本モデルによって, 中心視と周辺視の色覚について, その三色説的過程および反対色説的過程のいずれをも矛盾のない統一的な概念で説明することのできる色覚モデルを構築するという目的が果たされた。
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