設計は,抽象的に設計対象物が記述される空間から,より具体的に記述される空間への写像プロセスととらえることができる。従来,そのメカニズムを理解するために多くの研究がなされてきているが,その大部分は,既知の空間における設計解の生成メカニズムに関するものである。しかしながら,設計者が設計においてまず行わなければならないのは,設計解を生成するための空間を形成することである。本研究の目的は,設計空間の形成される根拠を解明することにある。本論文では,設計空間の静的な構造と設計過程との関連性を分析することに主たる観点をおき,具体的には,写像元の設計空間と写像先の設計空間の間における距離の保存の程度が,設計解探索の効率に関係のあることを明らかにする。そして,設計空間は,この距離の保存則が成立するように形成されるとよい,という仮説を提案する。この仮説を用いて,工学設計における機能分解のプロセスを対象に,機構設計のための部品探索シミュレーションを行い,本仮説の妥当性について検証する。
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