デザイン学研究
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49 巻, 5 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 菅 靖子, 山崎 晶子, 山崎 敬一
    原稿種別: 本文
    2003 年 49 巻 5 号 p. 1-10
    発行日: 2003/01/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本稿は,ミュージアム研究の展示空間における観客の相互行為に焦点を当てた鑑賞の「質」的分析を行うことにより,観客同士がつくりだす共有空間の形成の重要性および鑑賞行為における観客の相互関係を明らかにしたものである。特に,本研究では,これまで着目されていなかった共有空間に参与する「傍観者(bystander)」の役割に注目して,鑑賞行為を分析した。傍観者(bystander)と実践者との基本的な関係について,個別的なケースからより基本的な構造を分析し解明した結果,ミュージアムの展示において,傍観者(bystander)の動きは,共有空間の形成に参与するだけではなく,鑑賞行為全般を導くものである。なぜなら,傍観者(bystander)は実践者に対して,発話と共に指さしなどの非言語的なコミュニケーションを行い,情報・知識の伝達を行いやすい身体配置を取る,ということが明らかになった。
  • 榎本 雄介, 原田 利宣, 井上 拓也, 森 典彦
    原稿種別: 本文
    2003 年 49 巻 5 号 p. 11-20
    発行日: 2003/01/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    ある結果を成立させるための最も少ないカテゴリーの組み合わせが得られるラフ集合(Pawlak,1982)がデザイン企画研究に応用され始めてきた。以前,我々は,より企画への応用性を高めるために,多人数間の共通の縮約を算出するアルゴリズム(多人数併合縮約システム)を提案した。そこで,本研究では,本システムを用いてユーザーのオーディオ製品の選好に影響を与える縮約(要求仕様)を算出し,明確にすることを目的とする。また,その結果から,9社のオーディオメーカーにおけるラインアップ考察も併せて行った。まず,被験者41名に意識調査を実施し,4つのクラスターに分類した。次に,各クラスターにおける選好,非選好に影響を与える縮約(要求仕様)を算出し,各クラスターの価値観を特微づける要求仕様を明確にすることができた。さらに,各クラスターにおける要求仕様を満足する製品が各メーカーのラインアップにどのように適合するのか考察した。その結果, 各メーカーの製品ラインアップの特徴を明らかにすることができた。
  • 尹 明淑, 植田 憲, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2003 年 49 巻 5 号 p. 21-30
    発行日: 2003/01/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    韓国の平坦部渓谷面の民家における伝統的な苞の使用特性を把握するため、当該地域の民家における苞の使用について観察・分析し、次の諸点が析出された。(1)地域内での自作:購入された苞があるものの、藁を素材とする苞は自作された。(2)環境に対応した素材活用:入手・工作の容易な藁を素材とする多様な苞が稲作経営と対応して制作された。(3)生活に対応した形態:収穫から貯蔵までの階梯に対応した苞づくりがなされた。(4)生活空間構成に対応した使用秩序:苞の機能と収納空間との間に一定の秩序が形成されていた。(5)家々の経済力の象徴:苞の所有量と大きさ・容量が家々の所有耕地面積を反映していた。(6)信仰観念に結びついた使用規範:稲作の平安を祈念する信仰用具として苞が活用された。(7)人間関係の調整と共同体的社会の維持:苞の賃借によって家々の絆が維持された。(8)資源循環型利活用サイクル:最終的に土に返される苞の文化は不断の資源循環型物質文化をなしていた。
  • 松岡 由幸, 川田 顕, 庭前 裕樹
    原稿種別: 本文
    2003 年 49 巻 5 号 p. 31-40
    発行日: 2003/01/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    近年,多様場を考慮した設計理論の必要性が高まっている.筆者らは過去,多様場に対応するロバスト設計方法を提案した.しかしながら,この方法では以下の二つの数理的課題があり,新たな理論が必要であった.一つは,数量化理論を用いた質的因子の取り扱いの際に,水準間が不等間隔になり,最適なロバスト解の導出が難しい点である.これは,Chebyshevの直交多項式用いて離散的な制御因子の水準を連続量で表現する過程を導入することで可能にした.他方は,従来のロバスト性の評価測度に内包する特性値と標準偏差の関係が常に一定であるため,設計者が重要度を制御できない点である.これは,特性値と標準偏差の関係を二目的最適化問題として取り扱う最適設計解の導出課程を導入することで対応した.以上により,多様場に対応する新たなロバスト設計理論の構築を行った.
  • 和気 早苗, 岡田 世志彦, 旭 俊之
    原稿種別: 本文
    2003 年 49 巻 5 号 p. 41-50
    発行日: 2003/01/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    我々の生活の中では,様々な報知音が利用されている。報知音とは,何らかの情報やメッセージをユーザに伝達することを目的とするが,現実には様々な報知音が氾濫している状態であり,情報伝達という報知音の目的が達成できていない場合も多く見受けられる。本論文では,複数の報知音を系統的に設計する手法である"報知音多次元設計手法"を提案する。本手法では,まず伝達すべき情報を複数の観点から分類整理し,その分類軸に対して音の高さや音色といった音響パラメータを割り当てることで,システマティックに報知音を制作する。本論文では,この報知音多次元設計手法の効果を評価実験を通して確認した上で,視覚障害者用のWindowsアクセスツール"CV/SR(Counter Vision/Screen Reader)"の報知音設計に適用したので,その設計事例を報告する。
  • Rothbuchar Bemhard, 植田 憲, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2003 年 49 巻 5 号 p. 51-60
    発行日: 2003/01/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    今日、すべての工業国は、環境汚染というきわめて大きな問題に悩まされている。工業製品は、その大きな要因のひとつに挙げられる。工業製品の開発には、つねに、工業デザイナーが加わっており、デザイナーには、ひとりひとりがその責任を認識し、積極的にその解決へ向けた取り組みをすることか求められている。つまり、工業デザイナーは、製品の企画・開発に際して、その製品による環境汚染の程度を可能な限り減少させるように意識する必要があるといえる。本稿は、製品の企画・開発に際し、環境汚染をもたらす要素を減少させる可能性を明らかにするための論理的背景を考察することを目的としている。具体的には、記号論に基づき、製品の知覚と製品の物質的構成が相対的関係をもたないことを明らかとするとともに、デザイン活動を行う際にデザイナーが有するべき概念として、「Cultural Customization (文化的適合)」を導出する。
  • 松崎 元, 上原 勝, 上野 義雪, 井村 五郎
    原稿種別: 本文
    2003 年 49 巻 5 号 p. 61-68
    発行日: 2003/01/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    筆者らは既報において、つまみの回転操作開始時における指の使用状況を明らかにした。本報では、その結果の有効性を確認するため、既に得られた指の使用本数および接触位置のデータから、直径と溝の数および位置が異なる12個のつまみサンプルを作成し、回転操作実験を行った。被験者は40名(男性22名、女性18名)で、操作性・視覚的イメージの16項目について、SD尺度上で評価させた。操作性については、指の接触位置に合わせて作成した断面形状の6種類の方が、他の6種類よりも総合的に良い評価を受け、データの有効性を示す結果となった。次に、視覚的イメージに対する評価を因子分析した結果、「力量性」「活動性」「美的整然性」の3因子に分けることができた。これらを軸として、各12サンプルの散布図を作成したところ、第3因子「美的整然性」の評価が高いサンプルが、必ずしも操作性の良いつまみではなく、視覚的な「美しさ」と操作性の関係性は見られなかった。
  • 白谷 貞夫, 澤谷 政治, 原 正樹
    原稿種別: 本文
    2003 年 49 巻 5 号 p. 69-78
    発行日: 2003/01/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    コンピュータ機器分野における1980年代は、今日のオフィス情報処理環境形成の上で、数々の革新的開発と実用化がなされた。同時に、それらはコンピュータ機器・システムのデザイン開発にも大きな影響を与え、それ以降のデザイン方法論の基本を形成した時代であったと言っても過言ではない。本研究では、まず、70年代後半から80年代初頭にかけてのコンピュータの設置環境と使われ方、およびそこでの機器・システムの機能とデザインの変革についてエンドユーザーコンピューティングの視点から考察を行った。次に、筆者らが81年度の企業内デザイン研究として実施した、80年代後半から90年代前半をターゲットとする新たなオフィス情報処理環境と、そこでの機器のあリ方に関する概念モデルの構築について考察した。これらにより、1980年代初頭においてオフィス情報処理環境と機器・システムのデザイン開発における、新たな方法論としてのインタラクション・デザインの概念が形成されたことを示した。
  • 熊丸 健一, 粂田 起男, 高梨 令, 森 典彦
    原稿種別: 本文
    2003 年 49 巻 5 号 p. 79-86
    発行日: 2003/01/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    筆者らの従来の研究では、特徴としての属性の集合が、的確に特徴把握が行われている場合は縮約と同一であるとの仮定をもとに行われてきた。本研究では、特徴は縮約と同一であるという仮定を厳密なサンプルを用いて検証することを第一の目的とする。結果として、全ての被験者が縮約と極めて近似した特徴把握をしていることが分かった。このことから、特徴把握はそれが的確に行われた場合は縮約と同一であると推察される。第二の目的として、異なる観点から選好された複数の商品の縮約を併合し、それを含む新商品がどれほど選好されるかを調べることで、縮約を併合することの有効性を検証した。結果として、同一被験者の選好商品間での併合は選好された。しかし、異なる被験者の選好商品間での併合や、縮約以外の属性の選び方によっては非選好になることが分かった。
  • 藤本 英子
    原稿種別: 本文
    2003 年 49 巻 5 号 p. 87-92
    発行日: 2003/01/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    公共交通機関の車体を大きく広告として使う動きが広がっている。これに対応して、都市景観上の問題から、各自治体では広告条例の見直し等の急激な動きがみられる。今回は大阪市営交通と京都市営交通における、ラッピングバスを中心とした調査から現状分析を行い、問題点と今後の方向性を明らかにした。都市景観の中で公共交通機関のデザインは、2つの重要な役割を担う。1つは本来必要な機能を備える事であり、もう1つは地域のアイデンティティとしての役割を発揮する事である。車体を単に収入のための広告媒体として提供したり、都市景観との調和だけを問題にして広告に反対するのではなく、都市景観におけるそのデザインの重要性を、明確に把握する必要性がある。まず本来機能を優先し、その上で広告媒体としての価値評価を行い、自己メディアとしての価値を認識した上で市民の意志を反映する、都市マネージメントの一貫としてとらえる事が重要である。
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