デザイン学研究
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48 巻, 3 号
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  • ズゲーブ ハニ
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 3 号 p. 1-8
    発行日: 2001/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は、日本建築の特性と、その都市環境を分析することにある。そして、現代日本のデザインに作用する要因を抽出するために、筆者は日本の生活と文化の根源に立ち戻る。これらの要因は、過去と現在の間に存在する連続性、サイクルとも言い換えられる、に見出される。自然の再解釈と、支配的な仮設性(一時性)への感性からなる概念、「サイクル」は繰り返し発生し、今日でも新たなスタートが切られようとしている。また、これらの要因は、伝統的儀式と建築、都市景観などを強く結び付けているものの存在ともいえる。それ故、本稿の論議の展開の中で用いた分析の方法は、ミクロからマクロレベルに及び、ミクロにあっては、聖域を示すロープとしての「しめ縄」から、マクロでは都市景観を構成するもの等までが該当する。本稿では、現代における実際の建築例の分析をとおして、これらの概念の再解釈の検証を行っている。
  • 金 起範, 朴 燦一, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 3 号 p. 9-18
    発行日: 2001/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    日本の歴史系博物館における住民参加、諸機関・団体との連携の実態とその影響の把握で次の知見を得た。(1)今日の博物館には、館活動における住民参加機会拡充と諸機関・団体との連携の強化に基づく教育普及活動の活性化が求められる。(2)館活動への住民参加館は約3割と少なく、参加における問題も多くあげられ、住民参加には解決すべき課題が多い。(3)諸機関・団体との積極的な連携を望んでいるものの、現在は基礎的な連携にとどまっており、連携体制も不備である。(4)住民参加館では、教育普及活動に対する意識や館活動実施率が高く、住民の利活用度も高い。(5)連携実施館では、館活動の実施率や充実度が高く、教育普及活動における対応態勢も相対的に整えている。以上から、博物館活動の活性化において、館活動における住民参加と諸機関・団体との連携が有効であることが明らかになったゆえ、今後、一層の「住民参加」「諸機関・団体との連携」の活性化とその活動体制の整備が望まれる。
  • 金 起範, 朴 燦一, 田中 みなみ, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 3 号 p. 19-28
    発行日: 2001/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本稿では、日韓の博物館の地域連携の内容を対象とする主成分分析、クラスター分析、数量化II類などを行った。その結果、次の諸点が明らかになった。(1)主成分分析・クラスター分析からは、四つの地域連携の類型が析出された。また、これらの類型と教育普及活動の実態との関係では、多様な連携活動を行っている「連携積極型」が最も活発な教育普及活動を行っているとの傾向がみられ、多様な地域連携活動が博物館教育普及活動の活性化に有効であるといえる。(2)数量化II類の結果からは、「館活動への住民参加」による連携活動が利用者の積極的な館利活動を導くために有効であるといえる。しかし、調査対象とした日本と韓国の博物館の84%、96%が「連携消極型」「物的連携型」にとどまっている。特に、韓国の博物館の約6割は、ほとんど連携活動を行っていない「連携消極型」に属しており、今後、博物館教育普及活動の活性化に向けた地域連携活動を積極的に推進していくことが重要課題である。
  • 原田 利宣, 中嶋 信幸, 栗原 祐介, 吉本 富士市
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 3 号 p. 29-38
    発行日: 2001/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    我々が行ってきた研究では, 自動車など工業製品における曲線の性質は, ある程度明らかにすることができた。しかし, 貝や植物といった自然造形物における曲線については未知のままである。これが工業製品の曲線とどのように違いがあるのかはまったく明らかにできていない。既存の研究においても, 様々な自然造形物における曲線を大局的に, かつ曲率変化レベルで精度よく分析した研究はほとんどない。そこで, 筆者らは, 自然造形物と工芸品における曲線を広く採取するとともに, それらを分析し, どのような性質であるのかを明らかにすることを目的とした。また, 自動車を中心とした工業製品における曲線の性質と比較し, どのような特徴があるのかを明らかにした。その結果, 自然造形物と工芸品における曲線は, 筆者らが体系化した曲線群の中の「発散型」と「定速型」が大半であった。工業製品における曲線に用いられていた「収束型」はほとんど存在しなかった。
  • 井上 全人, 松岡 由幸
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 3 号 p. 39-48
    発行日: 2001/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    従来の要素還元的手法を用いた設計方法は, 設計自由度が高く, 多様な解の候補を導出する必要性がある設計上流過程へ適用することが一般に難しいといわれている.本研究では, 設計におけるこのような問題点を改善しうる新たな工学的設計方法を構築すべく, その第一段階として, 初期形状を設定せずに多様な形状を生成する基本的な方法を構築した.本方法を構築するにあたり, 自己組織的な形状生成を可能とするセルラ・オートマトンを用いた.このとき, 生物の発生過程における誘導と頂部支配という特性を模倣し, 状態遷移関数への入力情報として用いた.本方法により, 単一要素から, 要素の発生ルールが記述されている一次元配列にしたがって要素発生をくり返し, 自己組織的な形状生成を可能にした.さらに, 形状生成空間を制限して本方法を適用し, 生成された形状の多様性を解析した.その結果, 様々な特徴を持った多様な形状の生成が確認され, 本方法の可能性を示した.
  • 井上 勝雄, 望月 史郎, 二木 盈行, 土屋 雅人
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 3 号 p. 49-58
    発行日: 2001/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は, デザイン開発における造形発想力・伝達力の向上とデザイン評価支援を目指し, 「イメージ」や「かたち」を具現化する言語・表現方法やデザインコンセプト用語を収集し, その体系化を試みた。まず本論文の前半では, デザイン専門雑誌から事例の造形言語を抽出および現場のデザイナー使用の用語をヒヤリング等により収集した。その多くの事例の中から, 造形言語を効率的に検索するために言語学的体系を参考にした新しい分類(6大分類, 12中分類, 56小分類)を策定した。この分類項目に基づく事例データベースを作成した。後半では, 事例データベースで収集された12項目の中分類の内容について具体的な造形言語の考察を行った。そして, 本研究結果の応用展開として, 事例データベースの中から用途に応じた造形言語を検索するソフトツールを開発し, 加えて, 本研究で導いた新しい分類を用いた画像検索システムの試行事例開発も行った。
  • 曽和 具之, 朴 燦一, 田中 みなみ, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 3 号 p. 59-68
    発行日: 2001/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    幕張新都心は、1983年に千葉新産業三角構想の基幹プロジェクトに位置づけられ、さまざまな複合機能を備えた都市として整備が進められている。幕張ベイタウンは、幕張新都心内の住宅地区であり、1995年から入居が始まった。現在、街の人ロは9,000人を超えている。本研究は、幕張ベイタウンに在住する住民を対象にアンケート調査を行い、幕張新都心に対する利用状況とその評価について検討したものである。調査の結果、以下の知見を得た。1)幕張新都心に対する利用状況によって、ベイタウン住民を五つの集団に分けることができた。2)AとBの二つの集団には、回答者の85%が含まれる。AとBの二つの集団を比較すると、住民の基礎データにおける特徴はみられないが、幕張新都心の利用頻度および利用目的には若干の差異がみられる。3)C、D、Eの三つの集団は、住民の基礎データにも、幕張新都心の利用状況にも大きな特徴がみられる。4)各集団は、幕張新都心に対する利用頻度にはっきりとした違いがみられる。
  • 荒生 薫, 時長 逸子
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 3 号 p. 69-76
    発行日: 2001/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    戦後、文部省(現、文部科学省)は教育環境を整えるための3つの基準を提示する。一つ目は、教育用品と呼ばれる児童生徒が個人で所持する物品の品質向上のための基準である。この基準はその後消滅し、一部日本工業規格に採用され現在に至る。二つ目は、教科用図書の充実を図るための教科用図書検定基準である。これは指導要領の変化に伴って、現在もその基準が生きている。三つ目は、学校教材備品の充実をはかるために設けられた教材基準である。この基準は教材費国庫負担金制度廃止の後、標準教材品目として現在に至っているが、これは法的拘束力はない。指導要領の変遷に伴い色彩教育の場では、このような補助教材の存在していることを明示した。
  • 植田 憲, 朴 燦一, 宮崎 清
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 3 号 p. 77-86
    発行日: 2001/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本稿では、北ベトナム・ニンビン省において進められている「ベトナム伝統工芸村」設立計画を取りあげた。フィールド調査、資料解析に基づき、内発的発展論の観点から当該工芸村の設立に向けた指針を抽出した。北ベトナムにおける伝統的工芸の現状と課題を解析した結果、以下の指針が得られた。(1)北ベトナムにおいて振興が期待される12の伝統的工芸品目のうち、ニンビン省の工芸村においては、省内で継承されている4品目の振興を図る。(2)工芸村は、伝統的工芸技術の伝承・発掘・創新の拠点であるとともに、伝統的工芸を核とした地域間および異業種間の連携・交流の拠点としての機能を担う。(3)工芸村の設立・運営においてはエコロジカルな理念を堅持し、かつ、各種地域資源の全体活用を実践する。伝統的工芸品が村を単位として生産されているベトナムにおいては、4品目を一ヶ所に集めて展開される工芸村は、国内における地域連携のモデルでもある。また、その工芸村は、広くアジア諸地域とも連携し、その運営・展開が図られる必要がある。
  • 大田 尚作
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 3 号 p. 87-94
    発行日: 2001/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は、わが国における実物資料としては現時点でもっとも古いとされている16世紀末の木製台鉋1丁と、17世紀初期の木製台鉋4丁についての実測調査をおこない、台座寸法および甲穴形状などの類似点・相違点に着目し考察をおこなったものである。その結果、以下の点を明らかにすることができた。1)台座については最大の台鉋でも台長218mm・台幅44mm・台高が26.5mmの小型であることが明らかになった。2)各部位の最大寸法差については、台長11mm・台幅6mm・台高7.5mmであり、5丁ともにきわめて近似していることが明らかになった。3)2口の甲穴を有する台鉋3丁の実測結果から、三種類の甲穴形状が存在することを明らかにした。この三種の形状から、一種を初期の甲穴と仮定し、この改良型として二種が生まれた可能性があることを示した。4)5丁の内1丁に台尻部上面に四角穴が穿たれた台鉋の存在を明らかにした。その目的について把手用の差込穴である可能性を示すことができた。
  • 井上 全人, 三笠 晋, 松岡 由幸
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 3 号 p. 95-102
    発行日: 2001/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    設計上流過程においては, 設計対象における条件が不明確な場合が多いため, 多様な解を導出する必要がある.筆者らは, 従来のパラメトリックな設計方法では難しかった多様解導出を可能とする新たな工学的設計方法の基礎研究を進めている.その第一段階として, 前報において, 初期形状を設定せずに多様な形状を生成する基本的な方法を提案した.本報では, まず, この基本的な方法に生成された形状を評価する過程を付加することにより, 前報で示した形状生成方法から形状生成システムへの拡張を行い, 人工物設計への応用を試みた.つぎに, 解の探索効率を考慮し, 遺伝的アルゴリズム(GA)を用いた.さらに, 解の多様性を保持するために, GAにおける解のスキーマを破壊した.最後に, 導出された解の多様性と探索効率について解析を行った結果, 効率よく多様解が導出されることが認められ, システムの有効性が示唆された.
  • 石村 真一, 田村 良一
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 3 号 p. 103-112
    発行日: 2001/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本稿は、1911(明治44)年に設立された秋田木工株式会社の設立過程を明らかにすることを目的としたものである。文献史料を中心に調査した結果、次のような結論を得た。1)農商務省の政策により、ドイツ、オーストリア、ハンガリーの曲木家具に関する調査がなされ、その報告を基礎として、我が国の東北地方に生育する広葉樹の利用促進が展開された。2)秋田県林務技師であった飯島直助は、広葉樹利用の方法として曲木業が有望と考え、新聞にその論拠を連載記事として発表した。この記事に触発された沓澤熊之助が飯島の支援を得て秋田曲木製作所を設立し、その後株式会社となって秋田木工株式会社が誕生する。3)オーストリアで曲木業の修業をし、東京曲木工場に勤務していた佐藤徳次郎が秋田曲木製作所の技師として参画し、秋田木工株式会社における生産技術の基礎を築いた。
  • 遠藤 善道, 小鹿 丈夫, 佐藤 弘喜, 原田 昭
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 3 号 p. 113-118
    発行日: 2001/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    伊勢型紙の感性データベースを作るために、「レイヤー」という概念を提案した。このレイヤーは5つから成る。レイヤー1は、コントラストや明暗を表す。レイヤー2は、肌理や密度的な感じを表す。今回は、このレイヤー1、レイヤー2について、コンピュータを利用した、分類方法と検索方法を研究した。画像処理手法である面積統計量、ランレングス行列、フラクタル次元を用いることで、このレイヤー1、レイヤー2を表現することができた。伊勢型紙について、計算で求めた値と、目視観察で求めた値の相関は0.8以上と高いものであった。これらの量は、コンピュータを利用して、機械的に計算できる。このため、多くの型紙を分類するのに役立つ。また、検索実験の結果も満足のいくものであった。
  • 遠藤 善道, 小鹿 丈夫, 佐藤 弘喜, 原田 昭
    原稿種別: 本文
    2001 年 48 巻 3 号 p. 119-124
    発行日: 2001/09/30
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    伊勢型紙の感性データベースを作るために、「レイヤー」という概念を提案した。このレイヤーは5つから成る。レイヤー3は平面格子を表し、レイヤー4は単位構造を表す。今回は、このレイヤー3,レイヤー4について、分類方法と検索方法を研究した。画像処理の手法である自己相関関数処理を行うことで、レイヤー3、4の抽出と検索を簡単に行うことができた。自己相関関数処理した画像の輝点が、平面格子を、輝点で囲まれた部分が単位構造を表す。目視では抽出が難しい平面格子でも簡単に抽出することができた。また、伊勢型紙は手彫りのため単位構造にばらつきが多く、そのままではパターンマッチングによる検索が難しいが、本手法により容易に検索できるようになった。
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