デザイン学研究
Online ISSN : 2186-5221
Print ISSN : 0910-8173
ISSN-L : 0910-8173
58 巻, 6 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • - 協調学習と分析項目リストを取り入れた学習法
    林 海福, 加藤 浩, 戸谷 毅史
    2012 年 58 巻 6 号 p. 6_1-6_10
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/30
    ジャーナル フリー
    本研究では,これまでのデザイン教育における製品分析の協調的学習法[注5](以後従来法と称す)で残された課題を改良し,新たな方法を確立するものである。これまででは,初学者でも多視点からの製品分析を可能にし,その分析の質も高めた。なおかつ,製品分析によって,その製品の意図を理解したうえでの製品改良の方向性も明確にするという効果があった。半面,学習者が分析項目リストにしばられて,自らのアイディアを出す機会を失していたり,事前の学習法に関する説明不足による学習者の曖昧な理解が,グループ学習の障害となっていた。そこで,改良策として,学習者個々に思考の時間を与えてから分析項目リストを参照させ,学習する前に学習方法の説明をすることで学習者の理解を深めた。このように改良した学習法(以後改良法と称す)による模擬授業の実践評価を行った。結果,改良法は従来法よりも製品の分析視点が増え,その分析の質が高まり,製品分析による既存の問題点の発見や,アイディアを出すために役立つ効果のある学習法であることが検証された。
  • - 東大阪市高齢者・重度身体障害者住宅改造費助成事業検証活動より
    山田 隆人, 三橋 俊雄
    2012 年 58 巻 6 号 p. 6_11-6_20
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/30
    ジャーナル フリー
    自治体が実施している住宅改造費助成事業において、問題が多いことや職種間の連携の必要性が報告されており、住宅改造費助成制度への多様な支援が必要である。本研究では、住宅改造費助成制度適正化事業における高齢者世帯の検証活動の事例から、住宅改造の効果の視点より住宅改造計画における問題を明らかにし、制度利用過程での支援機能を検討した。効果ある住宅改造計画を検討するには、住宅改造後の日常生活活動の遂行方法を明確にする必要があり、(1)対象者の生活機能の情報を充分に収集し、(2)介護者を含めた日常生活活動の遂行状況を把握し、(3)介護支援体制や利用しているサービスや介護方法の情報を充分に収集する必要がある。さらに、(4)収集した情報を基に、改善する生活活動の優先順位を整理し、住宅改造方針を検討する必要があった。これら情報収集および生活課題の整理を支援する機能が必要であることが明らかになった。
  • Chang-Franw Lee, Wang-Chin Tsai, Anne E. Adams
    2012 年 58 巻 6 号 p. 6_21-6_30
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/30
    ジャーナル フリー
    The purpose of present study was to conduct an in-depth analysis of older adults usage of and attitudes toward product manuals. The goals were to better understand perspectives that may be generalized across different contexts, and diverse populations of older adults. Seventy older adults (N = 70) in Taiwan were interviewed to discuss their use of and attitudes about product manuals. The structure interviewed data provide a more in-depth view of the concerns of older adults, and personal strategies information about product manual usage. The results indicated that older adults read all or portion of the manual when the products are new to them. Older adults have certain needs on the product manual and present different attitudes from the manual usage experience. Negative attitudes (i.e., dislikes) outnumbered positive attitudes (i.e., likes) among a three product manual inventory. Our research elucidates the reasons behind older adults attitudes, and provides insight into older adults preference within product manuals. The design guidance and implication of the results are discussed.
  • Bomi KIM, Sonya S. KWAK, Myung Suk KIM
    2012 年 58 巻 6 号 p. 6_31-6_40
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/30
    ジャーナル フリー
    The objectives of this study are to investigate usability of anthropomorphic sound feedback for service robot malfunction and to suggest appropriate design guidelines based on the results. Two experiments were carried out: one with a single malfunction and the other with repeated malfunctions. Independent variables were type of feedback (anthropomorphic vs. non-anthropomorphic) and type of malfunctions (catastrophic vs. warning). Usability was evaluated using a questionnaire form, protocol analysis, video analysis, and interviews. Several experimental results were identified including better usability of anthropomorphic feedback over non-anthropomorphic feedback and warning malfunction over catastrophic malfunction, respectively, interaction effect between the types of feedback and malfunction, and the effect of anthropomorphic feedback on people's attitudes toward the feedback.
  • Chien-Kuo TENG, Ming-Chuen CHUANG
    2012 年 58 巻 6 号 p. 6_41-6_50
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/30
    ジャーナル フリー
    This paper proposes a scenario design method with three main stages as: preparation, connection and development, and uses a vacuum cleaner design project with science fictions as stimulating themes to demonstrate the applicability of this method for developing products with emotional attribute of surprising. The procedure implemented in this research includes the following four steps: deciding scenario types, behavioral observation, scenario building, and constructing a creative thinking matrix for form development with emotional arousal. Through the project of vacuum cleaner as case study, the adopted scenario of science fiction was chosen to show how a specific theme can be incorporated in the development of an emotional product.
  • 中川 麻子
    2012 年 58 巻 6 号 p. 6_51-6_60
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/30
    ジャーナル フリー
    「美術染織」とは、明治から大正時代にかけて制作された絵画的な染織作品であり、近代染織を語る上で重要な存在である。本稿では明治時代初期から1893 年(明治26 年)頃を対象にし、国内外の博覧会に出品された染織作品について検討を行った。1876 年(明治9年)フィラデルフィア万博出品の成功を受けて、内国博には多くの絵画的な染織作品が出品された。また業者によって積極的に新しい技術の開発が行われ、1882 年(明治15年) 前後にはますますこの傾向が強まった。1886 年(明治19 年)京都色染織物繍纈共進会の出品分類に現れた「美術色染」「美術織物」の語は、染織分野に初めて「美術」の語が持ち込まれた例であり、はじめて《美術染織》概念が誕生した。1889 年(明治22 年) パリ万博では染織作品が「美術」とは認められなかった。しかし1893 年(明治26 年) シカゴ万博において、平面的かつ大型で、観賞用の性質が強い作品が美術部出品を果たし「美術的織物」と呼ばれ絶賛された。このシカゴ万博を機会に《美術染織》の概念と「平面」、「大型」、「鑑賞用」という作品形式が確立した。
  • 美馬 義亮, 木村 健一, 柳 英克
    2012 年 58 巻 6 号 p. 6_61-6_68
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/30
    ジャーナル フリー
    確率的デザイン手法とは乱数を積極的に用いる表現手法である。筆者らは最近約10 年にわたりこの手法を用いて,視覚的なデザインツールの開発に関わってきた。そこでは,このツールは,インタラクティブなツールとして教育や視覚表現に関する新たな道具としての可能性を示してきた。本論文では,このツールがそのユーザに表現の自由課題を行うにあたって,新しいアイデアを生み出すために有効に作用していることを示すとともに,本ツールが開発されてから明らかになったデザイン学やその近接分野における学術的な報告をもとに,乱数を創造性支援の目的で利用するためには,乱数の振る舞いに関する分節化や,乱数の適用時の粒度の制御,ならびにユーザとの対話の円滑性などを重要な因子がツールの設計に重要である事を指摘する。
  • - 中国における「少物」デザインに関する研究(1)
    朱 寧嘉, 植田 憲, 宮崎 清
    2012 年 58 巻 6 号 p. 6_69-6_78
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/30
    ジャーナル フリー
    本稿は、明時代末期に著された中国の「ものづくり」の技術書である『天工開物』を紐解き、中国において培われてきた伝統的な「ものづくり」の特質を、材料の観点から明らかにするとともに、今日、中国の人びとが目指すべきものづくりの指針を導出することを目的としたものである。考察の結果、以下の知見を得た。(1)同書に記録された「ものづくり」は、植物資源、動物資源、鉱物資源、その他の天然資源、副産物の再利用、材料の再生利用・再利用、材料の複合的な利活用、地形・風水・節気の利活用など、多岐にわたる資源の利活用が示されている。(2)「天人合一」という中国の伝統的自然観に基づいて構築されてきた「ものづくり」には、「活(活用)」「節(節約)」「久(耐久)」「共(共有・共存)」「理(合理的)」の五つのデザイン理念が表出している。(3)上記の五つのデザイン理念は、今日、「節約型社会」を目指す中国にとって必要とされる「少物」デザインの指針である。
  • 猪股 健太郎
    2012 年 58 巻 6 号 p. 6_79-6_84
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/30
    ジャーナル フリー
    写真から喚起される時間印象が,境界拡張の生起に及ぼす影響を検討した。実験1では,写真から喚起される時間印象を調査するために,30枚の写真について 20個の形容語による評定が行われた。この結果,無時間・持続・変化の3種類の時間印象が写真によって喚起されることが示唆された。実験2では,実験1の結果に基づいて統制された刺激を 15枚用いて,3つの時間印象を喚起させる写真における境界拡張の程度を評定課題により測定した。その結果,時間印象が境界拡張関連することが示され,無時間の時間印象を喚起させる写真では,持続・変化の時間印象を喚起させる写真よりも境界拡張の程度が少ないという関係性が示唆された。これは,時間的な拡がりの豊富さと大きな空間的拡がりが相関すると解釈された。これらの結果から,写真の喚起する空間的拡がりと時間的拡がりの関係性の一端が実験的に明らかにされた。
  • Cheng Chuko, Yi-Ling Wu
    2012 年 58 巻 6 号 p. 6_85-6_94
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/30
    ジャーナル フリー
    Having been ruled by different nations in the history gives Taiwan a multicultural structure. Taiwan also shares the same problem with other nations - cultural inheritance comes to a cease. People in Taiwan have been aware of the influence of local community and expect the help from the constitution of policy to promote either help the sustainable development of local community and culture. Yet design field is considered "a solution" and is applied to the community development. It doesn't turn out well like expected and begins to generate some discussible phenomena and problems. For design to work more coordinately for the local community development, this study is to discuss the relationship between design and local community based on the collection and analysis of relevant literature review. Two conclusions have drawn in this study: (1) Entering local communities, design gets too commercial. Improper sales behavior shadows it with cheap culture and causes in a consequence against the original ones (culture reservation, local identification, and resurgence of industry). (2) The most important thing during the process of community empowerment is that the local residents' spontaneous contribution to their living environment and designing which's base on what their region possesses.
  • 湯山 博子, 道見 遥奈, 原 寛道, 佐藤 公信, 清水 忠男
    2012 年 58 巻 6 号 p. 6_95-6_100
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/30
    ジャーナル フリー
    本研究は,通常の園芸活動が困難な高齢者のグループによる園芸活動を支援する園芸用設備のデザイン要件を抽出することを目的とした。そのために作業台とプランターを用いて,高齢者4名を対象とした園芸活動を実施し,その様子をビデオカメラで記録した。上記映像に基づき,実験設備により参加者および援助者の身体面への支援,また交流支援がなされているかを視点として,製品デザインの考え方を理解している者 4名により行動観察を行った。これにより参加者や援助者の身体的な負担を増加/軽減させる要因を抽出することができた。同時に実験設備が,参加者間の交流を支援する役割を果たすことや,援助者が参加者と交流しづらい状況を生じたことも確認できた。最後に改善のための具体案を示すとともに,園芸活動を支援する園芸用設備の具体的なデザイン要件を示した。
  • 吉田 美穗子
    2012 年 58 巻 6 号 p. 6_101-6_106
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/05/30
    ジャーナル フリー
    写真から喚起される時間印象が,境界拡張の生起に及ぼす影響を検討した。実験1では,写真から喚起される時間印象を調査するために,30枚の写真について 20個の形容語による評定が行われた。この結果,無時間・持続・変化の3種類の時間印象が写真によって喚起されることが示唆された。実験2では,実験1の結果に基づいて統制された刺激を 15枚用いて,3つの時間印象を喚起させる写真における境界拡張の程度を評定課題により測定した。その結果,時間印象が境界拡張関連することが示され,無時間の時間印象を喚起させる写真では,持続・変化の時間印象を喚起させる写真よりも境界拡張の程度が少ないという関係性が示唆された。これは,時間的な拡がりの豊富さと大きな空間的拡がりが相関すると解釈された。これらの結果から,写真の喚起する空間的拡がりと時間的拡がりの関係性の一端が実験的に明らかにされた。
feedback
Top