本稿では,地下空間における歩行者のためのサインシステム構築の方法に関する研究の第一報として,福岡市天神地区地下街のサインをケーススタディに,以下の調査分析を行った。1)地下街のサインの種類を区分し,区間別種類の基数の比較。2)サインを設置場所別,種類別,機能別,情報内容別で区分し,その基数の比較。3)高さによるサインの種類を区分し,設置場所別の比較。4)設置場所別サインのパターン化。その結果,現在天神地下街の歩行者のサインは,一定な規則で設置されている一定型と設置場所によって密度の差が大きい密集型の分布特性に分けることができた。また,設置場所におけるサインの分布差異による情報の不均衡,サインの種類の不足による情報入手のしにくさ,などに起因する情報と情報間の連続性の不足が主な問題となり,地下街のサインの配置における空間活用に対する課題と情報の連続性が分断されているという2つの課題が明らかになった。この課題解決には,歩行者が移動する際の情報の把握を容易にする方法として,地下空間と歩行者との間における双方向コミュニケーションをうながすためのあらたな配置の必要性を示唆することができた。
抄録全体を表示