デザイン学研究
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51 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 延 明欽, 原田 昭
    原稿種別: 本文
    2005 年 51 巻 6 号 p. 1-8
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    本研究は、日本とヨーロッパの携帯電話のインタフェースを比較し、その差を明らかにすることを目的として、カタログ調査や実物操作調査を主たる方法とした調査研究である。カタログ調査の対象は、日本の大手通信社3社のカタログ6冊からの84機種、ヨーロッパの販売会社Fnac社のカタログ2冊からの41機種とした。実物操作調査は15個の携帯電話機を直接操作し、ワークフローを把握する方式で行った。調査結果、スクリーンについては、日本の携帯電話は解像度が高く、カラー数が多いことがわかった。GUIについては、日本はおよそ「格子型」と「ファイル型」を、ヨーロッパは「一項目表示型」と「格子型」を採択していることがわかった。キーパッドについては、日本がヨーロッパよりキーやその指示文の数が多くアイコン表現が多いのに対して、ヨーロッパは記号表現が多いことがわかった。ワークフローについて日本は、ワークフローを経ずにアクセスできる機能がヨーロッパより多い構造であった。そして、如何なる要因がこのような差を生み出したかについて考察を行い、製品企画や製造力、ユーザの使用文化などと共に、文化的背景が遠因として働いていると判断した。
  • 関場 亜利果
    原稿種別: 本文
    2005 年 51 巻 6 号 p. 9-18
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    アルテ・プログランマータ運動はブルーノ・ムナーリが企画し, オリヴェッティ社の支援により開催された1962年の同名の展覧会に始まったとされる。この運動はテクノロジー・アートが急速に発展した時代に, 科学的視点の芸術分野への応用をいち早く試みたという点でイタリアの現代美術において重要である。しかし主な活動舞台であった欧米においても, 同時代の他の類似した運動と混同され正しい評価が与えられていない。また日本においては断片的な紹介がなされているのみであり, 呼称も統一されておらず, 具体的活動内容については殆ど認識されていない。本研究では, この運動の企画者による文章など一次資料や実際の作品からこの芸術運動の特徴を考察し, 運動コンセプトの定義を試みた。また先行研究における誤解や相互の矛盾点の原因を明らかにし, 本論文が日本における初めてのアルテ・プログランマータを包括的に概観できる資料となるよう努めた。その上でこの運動の今日的意義を考察した。
  • 東 恒人, 島田 恭宏, 岡部 清孝
    原稿種別: 本文
    2005 年 51 巻 6 号 p. 19-26
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    デザイン作業において, イマジネーションだけに頼って模様を考案することが多く, 作業効率が悪い。何らかのヒントが与えられれば, 作業効率が向上する可能性がある。本論文では, ハンカチなどの図案作業に役立てることを目指して, 線図形の自動生成法を提案している。関数と関数の組み合わせ方をそれぞれビット配列で定義しておき, これらのビット配列を組み合わせると, 多くの関数を生成することができる。線図形の形は, 隣接線分間の角度の分布で決まるので, 角度分布を表すための角度関数をこれらのビット配列を組み合わせて表現することにする。本論文では, 任意の形状の線図形を生成するためには, これらのビット配列をランダムに生成すれば良く, また, 目標の線図形の形に類似した線図形を集めるためには, 遺伝的アルゴリズムにおける適応度として, 目標とする線図形および生成された線図形に関するそれぞれの角度分布に関するスペクトルを用いることによって, ビット配列を生成すれば良いことを明らかにしている。
  • 原田 利宣, 尾崎 名美
    原稿種別: 本文
    2005 年 51 巻 6 号 p. 27-34
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    今日, ユーザの自動車に対する価値観は多様であるのに対し, カーナビゲーションシステム(以下, カーナビ)で使用されている情報デザインは画一化される傾向にある.そこで本研究では, 多様なユーザの価値観に合わせた音声や情報の最適化のためのカーナビの情報デザインを構成する要素とユーザが持つ印象との関係の明確化を目的とした.まず, 自動車とITS(Intelligent Transport Systems)に対する意識調査を行い, 調査結果を主成分分析で分析し, カーナビの情報デザインを構成する7要素を抽出した.次に, その要素を用いて実験計画法により8つのサンプルを作成し, 8語の評価用語を用いて評価実験を行った.実験結果をもとにt検定を行った結果, ユーザの意識(価値観)の違いによっては, 評価用語に影響する情報デザイン要素に相違があることが明確になった.さらに, カーナビの情報デザインを構成する重要な要素としてアイコンだけに再度着目し, その造形や色を変えた再評価実験を行った結果, アイコンをデザインする上での貴重な指標が求められた.
  • 阿部 眞理
    原稿種別: 本文
    2005 年 51 巻 6 号 p. 35-44
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    これまでの圧縮木材に関する研究では、家具・建具及び内装用部材へ適用する際に必要となるスギ圧縮材の力学的特性および視覚、触覚といった感覚特性について他の木材と比較し、その位置づけを行った。そのいずれにおいても硬い広葉樹材と同等の特性を保有する結果となったことから、本稿では、家具・建具及び内装用部材へのスギ圧縮材の適用方法を検討した。その結果、スギ圧縮材を無垢で使用するだけでなく、その突き板単板による木質材の製作が可能であることを確認した。そこで、これらによる学校用および家庭用家具、室内用ドア、床材、成形合板による家具及びシロフォンの試作を行った。その結果、スギ圧縮材およびその突き板単板による木質材は、従来の木製品に対する製作技術と同等に扱うことが出来、仕上がりも遜色ない製品の製作が可能であるといった結果を得た。このことから、スギ圧縮材は、高品質の新たな木材料として期待できることが明らかとなった。
  • 寺内 文雄, 久保 光徳, 青木 弘行, 橋本 英治
    原稿種別: 本文
    2005 年 51 巻 6 号 p. 45-52
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    近年の環境問題において、モノを長く使うことに対する意識の低さが、問題解決に向けた障害の一つとなっている。本研究においては、モノの長期使用を念頭に置き、生活者の意識面における問題を解決するための方策として、モノに対して抱く愛着に着目した。そして、モノが有する様々な感性要素と愛着の発生に関わる因果モデルを、構造方程式モデリング手法を用いることにより構築した。また、モノに対する生活者の志向態度を因子分析とクラスター分析手法を用いてに四タイプに分類し、各タイプの因果モデルを検討することにより、その特徴と特質を明らかにした。最後に、これらの検討結果を踏まえて、愛着を誘発するための人工物設計指針6項目 : 完成度の高い造形処理、素材の特性を生かした質感表現、頭に馴染む使い勝手のよい機能、使い込むことによって見いだされる新たな仕組みの導入、愛着感構成要素の実現、本物感を満たすブランド価値の確立、を導いた。
  • 和田 精二, 大谷 毅
    原稿種別: 本文
    2005 年 51 巻 6 号 p. 53-60
    発行日: 2005/03/31
    公開日: 2017/07/19
    ジャーナル フリー
    関連報告(研究1, 研究2)において, 松下電器と三菱電機のデザイン部門が成立するまでの経緯をMOD(Management of Design)[注1]の視点から調査した。本研究においては, 東芝のデザイン部門が成立するまでの経緯を扇風機のデザインを事例として調査した。その結果, 東芝のデザイン部門は, 松下電器や三菱電機と違った経緯で組織が成立したことが理解できた。東芝は, 家電製品に関し日本で最も長い歴史を持っている。その伝統が歴代の経営幹部によって引き継がれるとともに, 当該業界では日本初とも言える社外の公的機関である産業工芸試験所との強い連携, 同所からのデザイン指導, 外国人の嘱託採用などが同社デザイン部門の設立に寄与したことが理解できた。
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